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『ひとさらい』笹井宏之

からだにはいのちがひとつ入ってて水と食事を求めたりする

にぎりしめる手の、ほそい手の、ああひとがすべて子どもであった日の手の

胃のなかでくだもの死んでしまったら、人ってときに墓なんですね

けさのあさイチに出演していた川上未映子さんが紹介していた歌集、笹井宏之さんの「ひとさらい」。私もとても好きな本なので嬉しかった。私の好きな歌は上記のみっつです。
短い言葉のつらなりはそれはそれは小さなもので、だけれども、その小さな単位でこちらの頭が大きく揺さぶられることがある。心がはるか遠くに行ってしまったような気持ちになることがある。とんと忘れていた心象風景が目の前に迫ってくる感覚にめまいがすることがある。
手触りが伝わってくる言葉を紡ぐことができる人というのは自分の身体の表情に鋭敏だ。並ぶのは普遍的な言葉なのにね。なぜ初対面のような気持ちになるんだろう。

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