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『知的複眼思考法』苅谷剛彦

たいへんな読書家であり、もはやあらゆる分野を網羅する在野研究者と言っても過言ではない...と私がひたすらに尊敬している読書猿さんという方がブログでおすすめしていた本。難しそうだなあと思いながら読み進めていったけれど、浅学な私でも理解できる平易な言葉で書かれており読みやすいです。

本のタイトルにもなっている「知的複眼思考法」とは、「ものごとを一面的にとらえるのではなく、その複雑さを複数の視点から把握することを主眼にし、そうした視点に立って、『常識的』なものの見かたにとどまらない、いい換えれば、思考停止に陥らないで、考えることの継続・連鎖を生み出すような、思考の運動を呼び起こす」思考法のこと。

全体は4つの章から構成されており、第1章では批判的に本を読むことで物事を鵜呑みにせず客観的に捉える見方について、第2章では第1章で自分なりに考えた批判を受けて代案(自分ならどうするか)を出す=書いて整理する方法について、第3章では前章をふまえた上で日常に感じる<素朴な疑問>を<問いを立てる>こととして昇華させるためにはどのように思考をはたらかせてゆけばよいか、第4章では立てた問いをずらしてゆくことで複数の視点から物事の二面性や多面性を捉える方法について説かれている。

私たちはともすれば容易にステレオタイプな言説に流されてしまいがちで、それは複雑な事象を単純化して説明するにはとても役立つが、「あああれね」と知った気になりそこで深く考えることをこれまた簡単にやめてしまう。本来問題にすべき事実から目を逸らし不感症的に日常を過ごしてしまうことに繋がるそれは、脳のリソースを無駄なことに使いたくない忙しい現代人にとっては仕方のないことなのかもしれない。
本書の最後にこのようにある。「自分の視点を持つとは、自分がどのような立場から問題をとらえているのか、その立場を自覚することでもあるのです。」置かれた立場を理解し、自分を取り巻く環境にいまいちど思いを致すことが、「多様性」を謳う現代社会に於いて非常に重要な態度なのだと思う。

初版は1996年に刊行され、2002年に文庫化、そして現在45刷まで増版・重版されているとのこと。本書の中で扱われている時事問題は古いが、考え方は現代でも普遍的に役立つものであると感じた。もっと若いときに読んでおきたかったな〜も〜早く教えてよ〜しかし長文過ぎて気持ち悪いな。ここまで読んでる人は物好きですね。今日の晩ご飯はもやしでした。

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