見出し画像

ディーリヤ


無残にも摘み取られ はかない命を漂わす花
そのやわらかな残り香のように 甘いもの
かつては我らが悩みを癒し いまや誰もが歌わない
その歌のように 快いもの
それは お前の思い出
安らかな眠りが お前を訪れた
お休み 愛しい人よ いまやそれが最も幸福なのだから

ロングフェローの訳詩である。ディーリアは女性の名前で、ロングフェローの娘エディスの友人の娘が亡くなったことを悼んだものである。この詩はその友人へと伝わったであろう。その友人はどんなにか心慰められたであろう。私の訳詩は拙いものであるが。

…私は詩の社会的機能について考える。人が亡くなった時、結婚や出産をした時、社会に旅立つ時、あるいは恋に破れた時、その人の側に寄り添ってくれるのが詩である。これが詩の社会的機能である。世間の荒波や人生の喜怒哀楽を、時に高め時に宥める役割を有するのである。詩人がどんなに孤独であって、どんなに自分のためだけに書いたとしても、それがひとたび何らかの形で社会に現れるや、それが真の意味で善き詩であるならば、それは世間の情感を浄化し、人類の精神を進化させるのである。

…ひるがえって、私である。私はそのような詩を書いているのだろうか。この哀れなる醜態を晒してすでに半世紀を超える。我と我が身を恥じるのみである。

…口語自由詩であっても、やはりリズムは大事である。リズムは韻であり、五七調や七五調である。隅から隅までリズムで縛るのではなく、数合わせをするのでもない(そんなことをしたら口語自由詩の自己否定であろう)。それでも詩が歌でもある以上、リズムはその内部から赫然と輝くのである。


Delia

Sweet as the tender fragrance that survives,
When martyred flowers breathe out their little lives,
Sweet as a song that once consoled our pain,
But never will be sung to us again,
Is thy remembrance. Now the hour of rest
Hath come to thee. Sleep, darling; it is best.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?