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『テスオワ・昼タベール』春の大感謝祭 Vol.2

はじめに


 この記事は、私が2022に夏に発表したフリーゲーム『テスオワ・昼タベール』の制作ノートです。
 記事はvol.1 vol.2の2本あります。vol.2は6,274文字です。

 vol.1はおもに制作備忘録。↓

vol.1へのリンク画像

 vol.2は設定資料っぽいのが中心ですよ。

 記事のヘッダ画像は開発初期のスクショです。
 立ち絵もボタンも仮素材の奴でした。

 それでは今日もクリエイターごっこ、はじめるよ~!
 GO!!

⑥コスチューム

 今作はお着替え要素がありますが、人目を気にせずダサダサ服を楽しむアンチファッションな着せ替え要素があります。

 ゲーム中必ず入手する服アイテム「でろんでろんの部屋着」が、テスオワ精神を象徴してるんです!

 誰にも邪魔されない、さしあたり心配事もない。
 もっとも開放的で無責任な時、部屋着でリラックスして過ごそうっと。

 ……その、精神性~ッ!

部屋着アイテム『知らないイベントのTシャツ』


おなじく部屋着アイテム『手のほどこしようがないルームパンツ』

 部屋着シャツ&パンツの図鑑は最初期の制作ですが、かなり力を入れて作りました。『ファッションベンダーしまうま』のロゴはソレっぽくできたと思う。アイテム入手時に「ヒヒーン」という効果音も入ります。
 本作の7割は「だからなんだ」でできています。

 ゲーム中で「主人公はあまりファッショナブルなタイプではない」と言及されています。

 これも

「お着替え要素があるけどセンスを競うゲームではないよ。
 昼食べてゴロゴロしようよ」

というダラダラのお誘いメッセージです。
 部屋着エンドは私的にもっとも天国エンド!

 それはそうと、女児テイストのオシャレ感も大事にしたいところでした。

 …かわいいと思う服をはじめて通販で買ってみた。
 服に似合うアクセサリーやバッグや靴という発想は、まだない…

 そんな幼いオシャレ感覚を再現したくて主人公を中学生にしました。

 ゲームのために
「服 かわいい 女子中学生」
「服 かわいい 女子高生」
の両方で検索して気づいたことですが。

 中学生ファッションは「カワイイものを自分にトッピングすればカワイイ」という発想。
 対して高校生になるとグッと「自分の容姿に似合って、自分を魅力的にひきたてるもの」という発想になっています。

 おこづかいは少なく行動半径も狭くて、洋服の購入機会や選択肢も少ない中学生。
 お母さんが買ってきたスーパーの服に飴玉を乗せたようなちぐはぐさが、今となってはとても愛しいもののように思えます。

 総じてハイテンションでナンセンスなゲームですが、こそこそっと少女の日をなつかしく愛でる気持ちを配置しました。
 感想を拝見すると、この点についてけっこう言及していただいて作者としては恐縮の至りです。
 とにかくなんでも楽しんでくれたら幸いですよ!

 さて。
 お召し替え要素については主人公の他、ののちゃん・ハヤト君にも私服バージョンがあります。

 ののちゃんの銭湯Tシャツ+ホットパンツは部屋着です。
 実家が商売している+三世代同居の彼女は、昼間に「でろんでろんの部屋着」はありえません。
 ののちゃんもオシャレリーダータイプではありませんが、祖父母の友人や両親の仕事の関係者などのアポ無し訪問がありうる家庭なので昼に寝間着みたいな服は着ないのです。

 ハヤト君は間違いなく母親がニッ〇ン通販か「ファッションベンダーしまうま」で買ってきた服をそのままONです。

 この世代の平均的少年は少女より子供っぽいですが、彼はとりわけ無邪気なタイプ。
 オサレはまだまだ遠ーーい世界の話です。
 
(フリーマップのどこかで「DRAGON AGE」と書いたカッケーTシャツで歩いてます。カッケー!! 裁縫箱もDRAGON!!!)

 立ち絵を始めて描いてみて、コスチュームはキャラクターを雄弁に説明する大事な要素だなーと強く感じました。

 でも服って描くの難しいですね。とにかく絵は大変。
 富豪になって外注したいその2でした…。

⑦マカタについて


 マカタのモデルになった町は、自転車盗難日本一として、テレビでたまに面白おかしく取り上げられる街です。
 メディアで見かけるのは「盗賊都市」「酒のみ街」みたいな要素ばかり。

 おおむねそのとおりです。

 この街にそこそこ長く滞在したことがあり、経験をシナリオに落とし込んだら苦労なく魔境が完成しました。

~このへんただのノンフィクション~

・子供たちの学校のすぐそばの公園はいつも缶チューハイ空き缶がゴロゴロ
・公園清掃の人は週数回掃除している。でもすぐにストゼロゴロゴロ
公園在住の方が多数。地元の子供が当該公園を「こ〇き公園」と呼んでいたのを聞いた。街キッズ、ワードにキレがありすぎる…。
・ちなみに公園の横の広場という意味で「コジ横」という造語もあった。
ex.「15時にコジ横集合ね」
・親しい人が3年で3度自転車を盗まれた。鍵を付けっ放しだったのはそのうち1回だけです。
盗難多発のシーズンは「盗難の方法・盗難自転車のその後」について都市伝説が発生する。
(『窃盗団が夜中に軽トラに積み込んで盗み、海外に売りさばく』というエピソードを聞いたことがあります。真偽のほどは知りません)
・モンスターカスタマーにすぐエンカウントする。安い飲食店に行くと、平日昼でも2パーセントくらいの確率で遭う。
・飲食店入り口に信楽焼きのタヌキを置くとすぐ、口やカサや手にタバコの吸い殻が詰め込まれる。タヌキさんかわいそう…。
学校の廊下に「自転車は鍵をかけて盗難に気を付けよう」という啓発ポスターがある。
・かつて花壇のある駅前広場があったが、花壇に酒の缶置いてストリートファイトする酔っ払いだらけ。
 ツバや吐しゃ物も絶えず「花のある広場」感はゼロだった。
・富裕層の居住地として高名な田園調布となぜか同じ自治体である。
・温泉は出る。温泉に入れる銭湯が多い。温泉と銭湯は良い。

 いくつかは「そのエピソード、まんまゲームで見たやつだ」と思われるでしょう。はい。そうです。
 私の想像力の敗北です。無念です。

 平凡な賞罰無し女性として生き、夜はあまり出歩かない私でさえマカタ(仮)滞在時にはこんなイベントに容易に遭遇しました。

 それがマカタ(仮)。

 案外、住みやすいらしいですよ。(すごい雑フォロー)

⑧キャラクターについて

主人公


 魔境に生まれるも、優しい人々の中ですくすく育った女の子。両親・兄と自分の四人家族。
 『どこの盗賊都市にもいる普通の子』と言うコンセプトです。

 デフォルト名「天野はなな」は、可愛らしく気の抜けた響きで女児アニメ主人公っぽくしました。

初期デザイン。「もっと気の抜けた表情の子だな」と描きなおしました。

 ベタで特徴あるルックスにして、作画崩壊しても「これは主人公だな」とわかるようにしています。
 ピンク髪のボブスタイルでデカいアホ毛があればこの子だよ!

 楽天的で愛らしい少女ですが、マカタ民なので戦力が整えばバトルも辞しません。
 意外と状況対応力があるタイプでピンチにも

(今、私にできる事は…)

 と色んなアイディアを出します。

ピンチの主人公。敵は運動会のテントほどの大きさだ!
(のちに「運動会のテントほどの肩幅だ」にサイズアップした)

 制作目線で話をすると。

 近年は失敗・敗走を繰り返すタイプのゲームは敬遠されがちなので
ハズレ選択肢の類はできるだけナシにしました。
 イベントクリアのキーアイテムを持っていなくてやりすごす展開でも
「工夫してその場を切り抜けた」
という印象の書き方にしています。

再び主人公のキャラ話に戻ります。

 親友・ののちゃんの前ではハイクオリティなモノマネを披露していますが
みんなの前でギャグを披露する人気者タイプではなく、仲良い子の間で
「実はけっこうひょうきんな子」と思われているタイプです。

 担任の先生にとっては、彼女やののちゃんは「明るく素直な普通の子」という印象です。

 当初シリーとの会話で毒舌コメントをしたり、強い罵倒(ばとう)語を書いてみましたが、全部カットしました。

 彼女の使うもっとも強い罵倒語が

「もーう、このヘンテコスマホ!」です。

 決してバカともクソとも言いません。
(「バカバカ!うえーん!」みたいな台詞は言うかもしれない)
 過激なワードを抑えて女児テイストを守ろうとしています。

シリー


スマホの鳴き声スマホホホ (思いついた時嬉しかった)

 主人公のスマホ。自律して会話する。ゲームシステムのナビもつとめる本作のマスコット。
 えらそうな態度を取ろうとするが、主人公大好き・人間大好きで人なつっこさが隠せない。

 制作初期はよくある尊大キャラとして設定し、常識人の主人公にシリーがマカタ的対応を迫るプロットを考えました。
 スパッとボツにして良かったです。

 主人公:マカタルールを心得ていて、自分の思うように行動する役
 シリー:マカタルール初心者で常識ツッコミ担当、マカタ初体験のプレイヤーの困惑に寄り添う役

 と発想を転換してから、シナリオはとてもスムーズになりました。

 魔境ルールに驚きながらも適応し、主人公を助けるキャラなので

「マカタのやり方に否定的なコメントを連ねるより、面白がるキャラの方がゲーム全体が明るくなるな」

「好奇心旺盛なキャラだと精神的に若々しいイメージ。若い主人公への態度も威張って見下すより友好的な方が自然だ」

「では、ちょっと背伸びしているけど中身は子犬キャラで行こう!」

 と仕切り直し。
 文語と子供っぽい口語が混じった変な口調も自然に決まりました。
「ねぇねぇ、汝、汝ぃ!」
 という台詞ができたあたりでキャラが固まったのを覚えています。

 それにしても作ってみてわかりました。
 ねぇ、皆様。

 マスコットキャラって、すごーく便利でしてよ……。

 マスコットがいるとかけあいを多用することができて、ゲームを陽気なトーンに整えやすい!

 親しいシリーといつも一緒なんだから、主人公が今の状況をあれこれセリフで説明する事やハイテンションで話すのは自然です。

 シリーはスマホなので、主人公が自室にいても駅前にいても一緒にいるのは自然なこと。
 主人公がパッと思いつかない広範な知識やメタ情報を「検索したぞ」と提示できます。
 さらに立ち絵配置作業でシリーはどこに配置してもいいし、いっそ配置しなくてもいい。

 そんなところも製作者としてはラクでした。
 スマホでもヌイグルミでも、主人公以外の目には見えない妖精でも。
 
 いると便利。マスコット。

(『シリーボタン』でゲーム進行に合わせて的確なプレイ指南をする予定だったが、フラグ管理が大変であきらめる
 ↓
 無駄話ボタンにふりきった件も思い出のひとつです。
 多少無念ですが、キャラが立ったからいいじゃないですか…)

ののちゃん

 主人公の幼いころからの親友でクラスメート。
 実家は銭湯を経営していて、両親・祖父母と暮らしている。
 心優しくおっとりしているが、彼女もまたマカタっ娘。

ののちゃん宅にて。主人公宅より広いのね

 女児ゲーや少女小説に欠かせない、女の子の厚い友情要素担当。
 毛量がすごい三つ編みは女児モノの伝統。
 立ち絵はレトロな少女マンガタッチを意識しました。
 主人公よりちょっと控えめ、ちょっとおっとり。
 ふたりの会話はハシャぐ主人公+ウケるののちゃんという型が多い。

 素直に、隣にいてくれたら嬉しい素敵な女の子にしました。

 よくいるヒロインタイプといえばそれまでだけど、この年齢で人の話をよく聞き、世代の異なる人へのリアルな視点があり、人当たりが柔らかい子は「そんなにいないぞ」と思って書きました。

 主人公とは長い付き合いなのでケンカすることもあるでしょうが、
基本的に二人とも穏やかなので、たいていのんびりムードで過ごしているのでしょう。


右 : ののちゃん (かいはつしょきのすがた)

 優しいキャラが崩れる事はありませんが「それはそうと彼女もマカタ娘なのであった」なエピソードを盛り込んでいきたいです。今後!

ハヤト君

 マカタ民のゾンビ化現象を紹介するチュートリアルNPC。
 主人公のクラスメート。
 「仲はとくに良くも悪くもない」(図鑑より)。
 スーパーもんたや勤務の母がいる。

開発中の「開幕即炎上」イベント。
メッセージウィンドウ左のアイコンはちびキャラに挑戦したなごり(ダメだった…)

 彼と担任の先生がゲーム開始五分でマカタワールドを見せてくれるので、シナリオ的に大事なキャラ。
 教室やスーパーでのやりとり等、男子中学生っぽさ担当です。

(中学生男子を「中学男」と言ったのは『永沢君』のさくらももこ先生です。カラッとした毒気がすごい)

 作画コストが低い見た目をしています。
 絵描き作業の負荷を下げるためですが、

「学園風景でイケメンがいると恋愛イベントがあると勘違いされるから、露骨にモブっぽい見た目にした」

 という事情もあります。
 NPCは見た目が10割、世の中なかなか厳しいですね。

ののちゃんのおばあちゃん

 ののちゃんの祖母。
 主人公のことも小さい時から知っていて可愛がっている。

おばあちゃんは夏の初めでも一枚羽織っている。クリニックの冷房対策だ

 今のところ一番ストーリー性のある「祖母飯エンド」シナリオ担当。
 ノスタルジックな優しい老人像をめざして書きました。

 コロコロカート押して買い物するとかバスで通院するとか、モンスターを避けたバス利用をしているとか…
 大人マカタ民のリアリティ担当です。

 ゲームシステムの話。

 ゲーム中の食べ物アイテムのいくつかは、戦闘用パラメータを上げる効果があります。
 (まだパラメータを用いたバトルイベントを完成させてないのですが…)
 中でもおばあちゃんがくれる「祖母ゼリー」はコスト0で相当なステータスアップ効果があります!
 祖母BIG LOVEで強くなってください!

主人公の家族

 バッドエンドでは激怒したママに会うことができます。
 怒ってないパパやママに会うイベント実装中。
 シリーとの世間話で存在がちょっとだけ語られるお兄ちゃんもチョイ役ですが実装します。
 立ち絵…まだです!
 般若面かぶったママしかいない。お待ちください♡

最後に:からまよやさん今後の展望


 2023年度は

・テスオワの完成
・超短編紙芝居ゲーを一本制作、ティラノフェス2023出展予定

を目標にやっていきます!

 フリーシナリオ・マルチエンドのボリューミーなテスオワを完成させる!
 一方で「短期間でサクッと完成」のアワードを獲得しようと思います!

 他の作者様が
「一週間で作った」
といったコメントしているのを拝見するたび

「はー 私には逆さになっても無理」

 と思いがちでした。
 しかし!
 今年は「手中の技術でカッチリ短期間で完成させる経験」を詰もうと思います!待ってろよ心の実績解除~~!!

 というわけで、フェス2023では技術的には何も新しい事をしない!
 紙芝居で参加!
 参加賞席(そんなものないけど)から皆様を応援します。

 あと、ティラノ以外の制作技術をいろいろ試してみる時間にしたいです。

 半歩ずつ上手になる!
 という気持ちでこれからもゲーム制作沼に浸かって暮らします。

 皆さまこれからもどうぞよろしくお願いします。
 ありがとうございましたー!! 猛感謝♡

まだ遊んでいなければ、下のタイトル画像をクリックどうぞどうぞ!
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行こうマカタ! 食べようランチ!


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