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凶と指輪と婚姻届

初詣をして、おみくじを引いたら凶が出た。初めてだった。今年は前厄だし、お祓いでもしてもらおうかと思っていたら、夫が熱を出して隔離する羽目になった。なんなのよ、本当に凶じゃん。

「夫が」に、まだ違和感がある。昨年の終わりに結婚した。1年半同棲していたので、生活が変わったという印象はない。それでも名字が変わり、マイナンバーカードに「氏名変更」という文字が印字されている。それまでの私とこれからの私がどちらも書いてあるが、この状態は「旧姓併記」とは異なるらしく、また別の手続きが必要になるとかならないとか。詳しく聞きに行きたいのだけれど、なんせ人口の少ない町に住んでいるので、役所で戸籍の変更などを担当している人が1人しかおらず、完全に顔を覚えられてしまっているので聞きに行きにくい。

婚姻届を出す予定の日が平日で、窓口が開いている時間には行けなそうだったので(出すだけなら別に2人揃っていなくてもいいのだけれど、記念だから2人で行きたかった)、きちんとその日に受理されるように事前に確認した方がいいと思って、何度か役所の窓口に聞きに行っていた。夫の住民票が実家のままになっているとか、婚姻届の証人のサインを派手に書き間違えられてしまったとか、そういう細かなことが気になってしょうがなかったからだ。
行くたびに同世代ぐらいの同じ男性が出てきてくれて、これはこうすれば大丈夫ですよ、間違えたところも訂正印とかなくこのままで大丈夫ですよ、といろいろ教えてくれて安心していた。必要以上に確認しているという自覚はあったけど、あとで問題があるよりはいいや、と思っていた。

ところが、さすが田舎である。役所が夫の勤め先のクライアントであり、窓口になっているのがその男性だというのがあとからわかった。私が覚えられるだけならよかったのに、夫が、「必要以上に役所に質問に来る女の夫」になってしまった。申し訳ないし恥ずかしい。田舎の狭さを久しぶりにダイレクトに味わった。本当に申し訳ないし恥ずかしい。

ちなみに婚姻届は平日の朝早くに役所の管理人さんのところに出しに行ったが、あれだけ確認したにも関わらず、その場で管理人さんから「二重線で消した部分は念のため訂正印を押しておきましょうかね」と言われいくつも訂正印を押すことになった。押さなくていいって言われたんですけど、とは言えなかった。
全部押したあと、管理人さんが引き出しから「死亡届」というシールがでかでかと貼ってある箱を取り出して、その中に入っているクリアファイルに私たちの婚姻届を入れていた。我々、まだ生きているのですが。

発熱した夫は結局、検査キットでインフルエンザもコロナも陰性で、無事に回復した。病み上がりの身体で結婚指輪を作りに行って(金属の棒を曲げたり叩いたりして本当につくる)、今日からお互い薬指につけている。凶は出たときが最悪で、きっとそこから上がるしかないんだと思い込むことにした。いい一年になりますように。


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