見出し画像

イギリスの宇宙ベンチャーで1年半働いたふりかえり

こんにちは。イギリスの宇宙ベンチャーで働くエンジニア、こおるかもと申します。

2022年の春に日本の会社から転職して、1年半、もうすぐクリスマスホリデーということで、少し自分の仕事のことを振り返っておこうと思います。

宇宙業界のことを知りたい方、海外で働くことに興味がある方、少しでも参考になれば幸いです。

仕事内容

ざっくりした意味では、日本時代とあまり変わっていません。肩書はシステムズエンジニアといって、ここでは詳しく説明しませんが、要するにシステム全体を見て技術的なマネージをするポジションで、NASAのアポロ計画時代に確立された、宇宙開発において由緒あるポジションです。(IT業界で言うシステムエンジニアとは異なります)

日本時代と変わったのは、日本時代はどちらかというと研究職で、今はとにかく製品開発の現場にいるので、現物に近いところで、実験をしたりデータを解析することが非常に多いところです。日本時代は、データをメーカさんからもらうので一苦労していましたが、今はデータがありすぎて処理が追いつかないくらいです。

また、日本時代はどちらかというと下っ端ポジションでしたが、こちらではチーフエンジニアチームという部署に所属しており、技術のトップ3くらいの立場にいます。なので、各プロジェクトの定例会に偉そうな顔をして(しないけど)参加して、プロジェクト内のエンジニアでは解決が難しい課題を拾い上げてやっつけたりしています。その意味ではかなり立場も求められている役割も日本時代とは変わったかなと思います。

日本にいたら、やはり年功序列的な感じがあったと思うので、海外で転職して良かったなと思っています。

ひとつ例を挙げると、最近、あるプロジェクトで本当は必要になるはずの力学モデルを誰も作れないということが判明し、僕の出番となりました。普通は、商用ソフトで解析できるものであればチームで対応してもらうのですが、通常の解析ソフトでは再現できない振る舞いをする製品なので自分で力学モデルをコーディングをする必要がありました。

自分でもこれまでやったことないモデルでしたが、まぁなんとなくできるだろうくらいの感じで引き受けて、教科書を買ってフルスクラッチで実装しました。

業務の合間にほそぼそとやって、結局3ヶ月くらいかかりましたが、なんとかモノになったので、今はそのモデルを使って今後の製品の改善や、軌道上(宇宙)での動作検証をある程度シミュレーションでできるようになりました。

1年半経って、最初は不安でしたが、自分の技術力でもある程度期待に応えられるなという手応えは持てるようになりました。でももちろん日々勉強です。これからもがんばります。

会社について

会社は急成長中です。ぼくが入社したときが40人くらい、今は80人を超えています。それでも人が足らなくて、プロジェクトが回らなくなりつつあります。嬉しいことではありますが、本当の勝負はこれからという感じです。

マネージメント層も、毎週の定例会で、あとどれくらい人員を増やせるか、かなり慎重に検討しているようです。日本時代は、1000人を超える組織にいたので、そういった人員ひとりの増減に神経質になる感じは、かなり新鮮です。

また、スタートアップにはよくあることかもしれませんが、会社が伸びてきてステージが変わるこのタイミングで、草創期のメンバーが一斉に辞めていきました。ぼくはちょうどその過渡期に入社したので、すでにちょっと古株扱いです。

この人が辞めたら終わりだな~と思っていた人が辞めていくことも何回かありましたが、まぁなんとかなるもんですね笑。

これからも成長していけるように頑張りたいと思います。

働く環境

最高です。
残業はないし、無理にタスクを詰め込まれることもありません。

毎週マネージャーとのキャッチアップセッションが設けられており、そこでタスクの棚卸しがあります。

つい先日も、僕がプロジェクトから依頼されて引き受けようとしていたタスクについて、「それはお前じゃなくてもできるから、手放せ」と言われました。ただ、僕はそのプロジェクトがかなり逼迫していて、どうしても他に頼める人がいなくて僕に頼んできたという事情も知っていたので、どうしたものかと悩んでいたら、マネージャーが社長も含めていろいろと掛け合ってくれて、別のプロジェクトのメンバーを一時的に借りてやらせるという調整までしてくれました。

僕のマネージャーが人としてすごく尊敬できるというのもありますが、会社全体でリソースをちゃんと有効活用しようという意識が強く、マネージメント層はそれこそが自分たちの仕事という自覚があるので、本当に頼りになります。

もちろん、癖のある人も多いことは事実です。1年半経ってみんなのキャラクターがわかってくると、うまく関われる人、そうでないひと、いろいろいますが、日本ほど、人間関係が近くないから楽だな、という印象はあります。

自分は英語がまだまだ得意じゃないし、家族もいるので会社の人との付き合いは最低限になってしまっていますが、そこはビジネスとして割り切っていけば、ぼくはそんなに苦にならないです。

給与

転職の面接の際に提示した給与からスタートして、すでに2回昇給しています。イギリスはインフレが特にひどかったということもあり、臨時の昇給もありました。

いずれにしても、会社の中でも、イギリス社会のなかでも、そして年齢の割にも、結構もらっている方じゃないかと思います。

イギリスと日本の違いといえば、ボーナスが無く、年俸制なので、契約した年俸をキレイに12で割った額が毎月の額面の給与になります。

そこから税金、NHS料、企業年金の積立などが引かれますが、入社後すぐに企業年金は解約したので、その分は手取りとして受け取れています。手取りでいうと、日本時代の2倍くらいあります。

また、インフレに関係なく、基本的には毎年数%は昇給するという話なので、来年の春も昇給が楽しみです。

ただし、ビザの費用や、一時帰国の費用など、外国人として払わなくてはいけない必要経費がかなりあるので、普段は日本時代以上に節制して慎ましく生きています。

英語

相変わらず、未だに自信はないです。

正直、1年半経ってこんなもんかと、自分を責めたい気持ちになりますが、できないなりに質問したりしながら、なんとかなっているので、まぁよしとしてしまっているところもあります。

今年のはじめにIELTSを受けて、渡英前とスコアが変わらなかったという事件が起きて以来、英語の勉強を諦めてしまったので、最近は好きなイギリスのユーチューバーの動画を見るくらいしかしていません。

ここについてはこの一年半の反省です。もっと英語ができたほうが、仕事もスムーズにいくので、どこかでいいきっかけを見つけて、勉強を再開したいと思います。

まとめ

ざっと振り返ってみましたが、この1年半、いい環境で、スリリングなスタートアップで働けてとても楽しいです。

それでいて、会社からの評価もそれなりに良く、給与も十分もらえて、家族の時間も最大化できて、言うことなしです。

これだとただの自慢話になってしまうので、これまでなんとかうまくやってこれた理由を自分なりに分析してみると、

  • 技術力(特に数学と物理の理解)が十分であること - イギリスのエンジニアは、解析ツールは使えるけど、数学・物理ができないという人が多い

  • 新しいことを学んで柔軟にトライできること - その場できるかわからなくても、「できます!」っていう癖は日本時代に身につけた

  • 求められていることを的確に理解して、100%でなくてもいいからすぐにアウトプットを出すこと

  • ひとつひとつのタスクに期限を設定して、期限を守ること - これができない外国人が多い

  • 人間関係を苦にしないこと - これができない日本人が多い

  • イライラしたり感情的にならなずに、基本的にいつもニコニコしていること - これが一番大事かも!

このあたりなんじゃないかなと思っています。

結構、日本の企業で真面目に働いていれば、だいたい身につくと思うんですけどね。それだけで結構、ヨーロッパ人には勝てるな、という気がします。

転職のことは過去の記事でも触れていますので漁ってもらえればと思いますが、もし海外でのキャリアを模索している方がこれを読んでいましたら、ぜひ参考にしていただければと思います。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

後日談

こんな記事を書いてしばらく下書きに保存していたら、会社から今年特別に貢献した人として選ばれまして、約1ヶ月分の給与に相当するボーナスをもらいました。

日本ではいくら褒められても給与に反映されたことはなかったので、こういうことがあるとさすがに嬉しいし、びっくりしました。

これからももっと頑張っていこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?