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2024年上半期KPOP市場のあれこれ

あっという間に7月も後半に差し掛かってきました。
もう1年も半分以上が過ぎ去り、上半期の振り返りに丁度いい時期となりましたね。

トレンドに敏感で変化が激しいのがまたKPOPの魅力だと私は思うのですが、そういった「流行」や「変化」の観点から、この上半期にKPOP界隈であった出来事を思い返してみたいと思います。
(2024年KPOP界隈の一番のビッグな出来事はもちろん「HYBEとミンヒジン」事件だと思います。言いたいことが無いわけではないですが、すでに色んなところで取り上げられているし、まだ完全解決には至ってないと思うので、ここでは割愛します。)

ガールグループブーム続く

ここ数年続いているガールグループブームですが、この上半期の勢いは特に凄まじいものでした。5月13日に公開されたaespaの「Supernova」は未だにMelonチャートの頂上に君臨しており、その次はNewJeansが占めています。韓国・日本両方を行き来しながら活動したNewJeansですが、日本アルバムのタイトル「Supernatural」は、日本での活動曲としては珍しくチャートの超上位まで昇ったことで話題になってました。

3月にリリースしたILLITの「Magnetic」や、1月にリリースしタイトル曲よりも人気を集めた(G)I-DLEの「Fate(私は辛いのはうんざりだから)」は相変わらずロングラン中。韓国の有名YouTuberキムゲランがプロデュースしたバンドコンセプトのガールグループQWERの「TBH(お悩み中毒)」もストリーミングサイトの新しい強者として名を知らしめています。

韓国の大手ストリーミングサービス「Melon」2024年6月の月間チャート
ドラマ「ソンジェ背負って走れ」で使われた曲「소나기(夕立)」と
4月末に発売されたZICOの新曲以外はすべてガールグループの曲

上半期に活躍したガールグループの特徴を一言で表すとしたら『コンセプチュアル』ではないでしょうか?
韓国の昔ばなしを東洋絵画を用いて表現したIVE、多少コミック・グロデスクなB級ムードをS級のビジュアルで昇華したaespa、どこか懐かしい世界を極限なディテールで再現したNewJeansなど… 個性的なコンセプトとビジュアルワークスが注目を集め、目と耳を楽しませてくれました。
(コンセプトの多様性を追求しているガールグループのトレンドとは逆に、ボーイグループはイージーリスニング寄りの動きが目立ったのも面白い現象だと思いました。)

上半期ではないですが、7月リリースしたKISS OF LIFEの「Sticky」や(G)I-DLEの「Klaxon」なども活躍中で、ガールグループの勢いはまだまだ続きそうです。

グンピル(軍畢:兵役を終えたという意味)グループ続々と登場

6月、BTSのJINが兵役を終え復帰されました。メンバー全員が民間人に戻る来年には久しぶりのグループ活動も予定されています。

BTSだけじゃなく、メンバー全員が兵役を終えアイドルとしてグループ活動を再開させたグループの事例が増えています。DAY6、ONF(オンエンオフ)がその例です。

DAY6はJYP所属のアイドルバンド。
メンバーが作詞作曲する心にダイレクトに沁みるメロディと歌詞、力強いボーカル実力で定評のあったグループでしたが、兵役中「You Were Beautiful(예뻤어:君はきれいだった)」「Time of Our Life(한 페이지가 될 수 있게:1ページになれるように)」などの曲が口コミで徐々に広まりました。メンバー全員が兵役を終え復帰した今年、ついにブームが到来。おそらく今韓国で性別年齢問わず最も幅広い層に人気なアイドルではないでしょうか。(そもそも一部のクラスター以外にはアイドルとして認識されていない可能性も高いですが…w)

ONFはRoad to Kingdomで認知した方が多いかと思います。
6人組で日本人1人を除いた5人が同時に入隊することで話題になっていましたが、昨年全員が無事に復帰しました。(私は兵役による休止期間を最短に縮められる懸命な戦略だったと思います)
ONFもまたプロデューサーのMonotreeファンヒョンの叙情的でどこか幻想的な曲と優れたライブパフォーマンスで知られていて、4月にリリースした「Bye My Monster」もそういったグループの個性を継承しています。

「Bye My Monster」は4月16日の『THE SHOW』で1位を獲得。なんとファンの前で1位を取ったのは7年のキャリアで初だったそうです。(2021年「Beautiful Beautiful」で1位を取った時はコロナ禍真っ最中で無観客)


5世代アイドルが続々と登場しているとメディアが騒いでいるこの頃です。
しかし、男性アイドルにおいては全盛期を迎えるまで以前より時間がかかることでグループ自体の寿命も伸びています。まだまだ3~4世代が建材(というか今がピークのグループも多い)な状況と言えます。
そろそろ4世代ボーイグループも入隊による休止期に入る見込みですが、今後のボーイグループの地形にどのような変化が訪れるか気になるところです。

Virtual Idolはアイドルのジャンルとして生き残れるか

2023年から徐々に注目を集めてきたヴァーチュアルアイドルですが、順調に成長中です。女性アイドルのイセドル(이세돌:異世界アイドル)、男性アイドルのPLAVE、ソロのAPOKIなどそれぞれの分野で活発な活動をしていて、後輩グループも増えています。

特にまばゆいばかりの成果があったのは5人組男性アイドルのPLAVE。
韓国メージャー放送局MBCが出自していると言われており、Unreal Engineによるリアルなグラフィックや細かい表情やダンスの動きまでキャッチするなめらかなRiggingなど、デビュー時から高い技術力で注目を集めていました。

定期的なライブ配信によるファンとのコミュニケーションで入口を作り、初期はKPOPファン層だけでなく、ストリーマーや2Dオタク層にまでリーチできたと言われていますが、コアなファンダムとして残ったのは歌やダンスの実力に惹かれたファンとのこと。ヴァーチュアルアイドルとは言えアイドル歌手に本質は同じものですね。

PLAVEはWebtoon風のトレンディな絵柄も韓国人の好みにマッチしていました

先日7月17日、PLAVEは韓国の大手ストリーミングサービスMelonで最短期間10億ストリーミングを達成しました。PLAVE以前の記録がNewJeansだったことを考えると、彼らのファンダムの火力(=ロイヤリティ)の凄まじさを推測できるのではないでしょうか。
ヴァーチュアルアイドルというジャンル的なマイナーさを克服し、フィジカル(初動50万枚超え)やストリーミングで良い成績を収め、番組出演やコンサートまで、新しい道を切り開いているという使命感に近いものが、ファンの結束力を高める原動力かもしれません。

成功事例を惹かれて新しく参入する新規会社も増えていますが、女性アイドルはサブカルの枠から抜け出せていないこと、男性アイドルはPLAVEの公式の表面を真似るだけのグループが多い、などなど…
ヴァーチュアルアイドルが一つのジャンルとして定着するには、まだ課題が多いように感じます。

現地化KPOPアイドルの新しい活動戦略の形

今年は海外でデビューした、通称「現地化KPOPアイドル(以下、現地化アイドル)」が目立ちました。上半期だけで、SMのNCT WISH、JYPのNEXZ、VCHA、HYBEのKATSEYEなど大型事務所の現地アイドルがデビューし、下半期にもSMのイギリスボーイグループのリアリティ番組のリリースが予定されています。

NCT WISHは最初から韓国と日本両方を拠点に活動すると発表していて、
韓国では全国ツアーまで実施しました。
最近KPOPアイドルは海外ツアーに注力する場合が多く全国ツアーはとても珍しいケースです。

KPOP事務所のマネージメントシステムで海外出身のメンバーをメインで構成し、現地での活動を念頭に入れたグループは以前からもありました。しかし近年そういった「現地化アイドル」の活動様相が少し変化しているように感じます。

大きい違いとして感じるのは、まず韓国で活動し強いファンダム作るということです。韓国で活動することのメリットは、ほぼ毎日ある音楽番組とそれに付随するネット上のコンテンツ、さらにそこから派生される無数なUGCにあると思います。特に大型事務所は先輩時代からのファンや事務所自体のファミリーシップのようなものもあるため、露出を増やすことでそういった層が自然に流れていくことも期待できます。韓国で活動させることで、現地化アイドルに対するファンの心理的ハードルを下げる作戦です。

『Nizi Project Season 2』で結成されたNEXZ
Nizi Projectの韓国での低い認知度にも関わらず、韓国で先行してデビューしました。
日本デビューは8月予定。

実際、ここ1~2年の間、韓国で活動した海外出身の現地化グループは&TEAM、NCT WISH、NEXZ、NiziUなど多数あります。音楽番組で1位を獲得したり、アイドルファンダムの流行りが可視化されるX(旧Twitter)でもよくトレンド入りするなど、これらのグループに一定以上のファンダムが形成されているのが伺えます。

もちろん、文化の違いや大型事務所の音楽番組の寡占などネガティブな声もあります。特に現地化アイドルの加勢により限定的な音楽番組の枠が大型事務所寄りになってしまうことは懸念が大きいです。中小アイドルが出演できる機会が奪われる可能性もあるからです。

しかし、韓国での活動が有効であることが見えてきた以上、現地化アイドルが韓国での活動をする流れは今後も続くと思われます。
韓国でファンダムの種を蒔くこと。ある意味、2024年はKPOPの新グローバル化元年かもしれないですね。

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