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【本】千葉雅也『現代思想入門』~魚の情報ではなく魚を釣るためのテクニックの本

荒木博行氏のVoicyで惹かれ、読んでみました。

惹かれた理由はふたつあります。
ひとつは、現代思想については、いろいろなところで知の巨人の切れ端には出会っていても、それぞれにこういうすごい考えを持っていた人という知識はなかなか血肉になっておらず、気になっていたこと。

ふたつは、この本では難解そうな現代思想のエッセンスが「脱構築」というひとつの切り口でとりあげられているということで、広くはなくても深い理解につながりそうだったからです。

ジャック・デリダは概念の脱構築
ジル・ドゥルーズは存在の脱構築
ミシェル・フーコーは社会の脱構築

そしてその三大巨人以外の現代思想の思想家たちも、その三人をつなぐ道に沿って紹介されているため、どう思考が変遷してきたのかがわかりやすく、その道の先を見やれば、これから先の現代思想がどう進んでいくかまでが予測できるようになっています。

1.読み終わって

読了して、当初の「広く浅くではなく狭く深く理解できる」という予感が予想以上に満たされました。

そして一部を深く知ったことにより、その面白さがじわじわしみて、実際に関連図書を読んでみたくなります。

私は次は、本書で紹介されていたこの本を読む予定です。

2.この本のすごさ

この本のすごさは、タイトルにも書きましたが、魚(哲学家・哲学書)の情報ではなく、魚の釣り方(哲学書の読み方・哲学の考え方)を教えてくれるところ。

難解な哲学書を最終的に消化するための読書方法から、実際の難解な文章を材料に、枝葉をとっぱらって骨組みを理解する初級の読み方までを具体的に紹介してくれています。

しかも何よりすごいのは、それぞれの哲学家が、どのような手段で新しい考え方を生み出しているかの、哲学家の秘伝まで抽象化して知らせてくれているところです。

①他者性の原則
②超越論性の原則
③極端化の原則
④反常識の原則

どれかの哲学の概念を材料にして、①から④を適用していけば、自分でも新しい哲学概念を生み出せるのではないか…そう思えるほどのリアルさがあります。

現に、著者の千葉先生は「おわりに」で

本書では「現代思想のつくり方」の形式化も試みましたが、今の思想状況にはマンネリ感があるし、誰かが打破してくれないかという思いもあってのことです

と言われています。

これから生まれる新しい哲学まで目配りされている入門書、なかなかないと思います。
おすすめです。

このアイキャッチは、AIイラストくんで作成しました。
プロンプト:ジャック・デリダ

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