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【本】『リヴィエラを撃て』髙村薫

先日、友人の誘いでブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴きにいった。

彼女がその曲を特別に思っている理由は小説、髙村薫『リヴィエラを撃て』にあるらしい。

昔から髙村薫はずっと読んでみたいと思いながら縁がなかったので、これが縁だ、と読むことにした。

コンサートは2月。
それから少しずつ行きつ戻りつ読み、下巻に入ったところで人間関係があやしくなってもう一度上巻から読み直し、そこからは濁流にのまれるように一気だった。

物語は、1970年代の中国とアメリカと英国の秘められた関係をベースに、各国の情報部や警察が複雑にからむ長い時を描く壮大なドラマ。

奪われる命は主役級から名のあるものから名のないものまで数多く、そのひとつひとつが深い影となり、物語を暗く沈めていく群像劇となっている。

自らの欲望のままに組織を操る者。
組織の歯車のひとつとして個人の顔も感情もなくす者。
そして、組織を国を超え、自分の信じるもの信じる人のために、強大な力にあらがって個人としての生を全うする者。

たとえ最期が悲劇だったとしても、個の生を全うしたものの苦悩に言動ひとつひとつの輝かしさは他を圧倒し、突き抜けている。

読み終わった時の、かけがえのない古くからの友人を何人も喪ったような虚脱感は忘れられない。

どんな状況であれ、組織や国にのみこまれず、襲い来る暴力に屈せずに、自分のもっとも大事だと思うもの、思う人を守り通そうとすることが、自分にできるだろうか。

暴力を目の当たりにしたら必ずと言える自信はないが、そうありたいとは思うし、そんな暴力がまかりとおる世の中は物語のなかだけであってほしい。

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最近週末は力尽きていることも多いので、書きっぱなしの平日の文章を見直すことを中心に、身辺雑記を中心にしようと思う。
1000日チャレンジは継続。

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