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日本の仕事の質は多様より階層化傾向?女性起業が多い理由も見えてくるnote747日目

OECDの「仕事の質」基準をもとに日本の仕事の質をはかると、多様化よりも序列化、階層化傾向にあると指摘する論文が発表されました。

このOECD(経済協力開発機構)の「仕事の質」を測定するフレームワークは、2014年に公表されました。

「仕事の質」に注目する理由は、これまで世界各国の労働政策が主に労働市場の「量」に注目してきたことをかえりみてのことです。

雇用を創出し、人びとの労働参加率を高め、失業率を低く抑える。
そこで目標とされる「雇用量」「労働参加率」「失業率」といった指標は、いずれも雇用の「量」に関わるものです。

ところが2000年代から、どのような仕事かという雇用の「質」にも配慮すべきことが広く認識されるようになった、とOECDは述べます。

「どのような仕事でもあれば良いというものではなく、それが「良い仕事」であることも重要」
「雇用の「質」は、ミクロレベルでは個人や家計のウェルビーイングに影響を与えて労働参加や生産性向上を促進し、ひいてはマクロレベルの経済的なパフォーマンスを改善することにもつながる」
とのこと。

それほど重要となってきた「仕事の質」を測る指標となっているのが、①賃金の質、②雇用の安定性、③仕事の負荷(労働環境の質)の3点です。

また、「③仕事の負荷」は、さらにこのように細分化されています。

「仕事の負荷」という言葉はふんわりとしていますが、このように具体化されると「わかるわかる」と思われる方も多いのではないでしょうか?

ここでは、最初にあげた、「仕事の質」を決める①賃金の質、②雇用の安定性、③仕事の負荷(労働環境の質)の3要素を鍵に、日本の仕事にどれほど多様性があるかが調べられています。

多様である傾向が強ければ、3要素は互い違いになるパターンが多い、というのはイメージできます。

たとえば、賃金は低くても雇用の安定性は高く、仕事の負荷は低い。
または、賃金は高くても雇用の安定性は低く、仕事の負荷は高い、などです。

多様ではなく、序列・階層的傾向にあれば、グラフの波は同じで、高さが違うだけとなる、ということです。

こんなイメージです。

では、日本の仕事の質の3要素を、男女別、年齢別、学歴別、雇用形態別でみた結果はどうだったのでしょうか?

見事に多様化傾向よりも、序列階層的傾向にあります。

そんな中多少違う様子をみせるのは、自営業です。

雇用者だと、男性正社員/非正社員の比較では、非正社員は低賃金、雇用不安定、仕事の負荷は正社員と同レベル、女性正社員/非正社員の比較では、非正社員は低賃金ではあるけれど、雇用不安定と仕事の負荷は正社員と同レベルという結果になっています。

それに比べると、自営業の女性は、雇用者の女性とくらべ、賃金は正社員と非正社員の間、雇用の不安定性もほぼ雇用者と変わらないというグラフになっています。
仕事の負荷については自営業につきデータはなしとなっていますが、自営業のほうが仕事のコントロールが効きやすい傾向にはあるでしょう。

もともと、女性の賃金は男性より低い傾向にあります。

それなら、いっそのこと、雇用よりも自営業を選んだほうが仕事の質は上げられるのではないか。
この調査はそんなことを示唆しています。

それが間違いではないことを示すように、女性の起業者は、じりじりと増え、2022年には新規開業者の4人に1人が女性となっているようです。

「2022年度新規開業実態調査」より
日本政策金融公庫総合研究所、2022年

女性のほうが賃金が低く、雇用の不安定性も高い。
その状況がこの傾向につながっているのであれば、状況の悪さを逆にチャンスにしていっている人たちが多いのかもしれません。

フリーランス新法もこの秋に始まります。
これからますますピンチをチャンスにする活躍の機会が広がりそうな気がしています。

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