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「過労死」は今もなおますます大きな問題〜令和5年度過労死等の労災補償状況

厚生労働省から令和5年度「過労死等の労災補償状況」が公表され、脳血管疾患や精神障害を仕事によるものとして労災保険を請求した件数が増加していること、それによる死亡も増えており、過労死がまだまだ深刻な問題であることを明らかにしました。

「過労死」という言葉を、過去のもののように思っている人が、SNSなどをしたみていると増えてきている気がします。

たしかに、よくなっているところもあります。

「過労死」と聞くと、2015年のこの事件を思い出すかたも多いのではないでしょうか。

その後、働き方改革関連法案が2019年に施行されて、はじめて労働時間の上限が決まりました。

電通も、働き方の大改革を行なって大きく変わったことは、この『鬼時短』にも劇的に示されており、もう過去のこと、といった感を受けます。

ですが、昨年の国全体としての状況は、以下のようになっています。

1.労災と認められた軒数と請求件数

労災として認められたことを湿す労災支給決定件数(黒部分)は、脳血管疾患、精神障害とも、実際に労災保険と認定されるハードルはなかなか高いため、若干増えている程度です。

ですが、1番左の請求件数、対象者が、「これは仕事に原因がある」と思っている件数は、ぐっと増えています。

脳血管疾患が、一時期件数が減っているのはコロナ禍の時期で、ステイホームなどで労働時間が押さえられていたせいか、そもそも仕事が少なかった時期だからでしょう。

今年は、コロナ禍前の令和元年より多い件数となっています。

精神障害のほうは右肩上がりで、今年ははじめて3000件を超えています。

「仕事が原因で病気になった」と思っている人がこれだけ増えているということです。

2.過労死件数

では、そのうち、死亡に繋がってしまった件数はどのくらいあるのでしょうか。

令和5年度は、脳血管疾患による労災請求件数は1,023件、うち死亡は247件と、4人に1人となっています。

精神障害での「死亡」は、すなわち「自殺」ということです。

こちらは、5%ほどではありますが、徐々に増えてきています。

また、さらに案じられるのは、精神障害による死亡は、若年層に多く見られることです。

脳血管疾患は、老化もかかわる病のため、20歳代よりも断然40歳以上の人数が多いですが、精神障害は、20歳代もほかの年齢層と大きく変わらなくなっています。

この「仕事が原因」ということには何があるのか、労働時間なのか、パワハラなどのハラスメントなのか、業務量か責任の重い仕事か。

過労死はまだまだ重く、急ぎ解決していくべき課題として、私たちに残されています。

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