【映画】駒田蒸留所へようこそ
アニメ界のことはごく一部をのぞきあまり詳しくない。
P.A.WORKSさんというアニメ制作会社の「お仕事シリーズ」というものも知らなかった。
が、この映画は、Xのフォロイ様でお酒の趣味があう人ふたりが「いい」とすすめてくれたうえに、クラウドファンディングでこの映画がコラボしているウイスキーを購入した、ときいて、映画館でみようと心にきめていた。
そして観たあと、私もクラファンしてしまった。
ここに出てくるお酒を飲みたくさせる描写力、すばらしかった。
ひとつの物語で、欲しくなる商品を描き、そのイメージとともに応援という形で販売する。
販売者と購入者の距離の近い今らしいモデル、やはり物語がいいと非常に魅力的だ。
物語は、映画の公式サイトによると、こうだ。
こう書くと、主人公がこの琉生で、琉生の奮闘の話にみえるが、主人公はもうひとりいる。
それが、自分のやりたい仕事に出会えず20代なかばで5つ目の会社に勤務してライターをやっている高橋光太郎。
物語は、この光太郎目線ですすむ。
詳しく書いてしまうとネタばらしになるので省くが、私が感じたことはふたつある。
ひとつめは、「愛は動詞である」ということ。
これは『7つの習慣』の言葉である。
フランクリン・R・コヴィー博士は、『7つの習慣』で、奥さんを愛する気持ちがなくなった、「愛を感じないのに、どうやって愛するんです?」と不安を訴える夫に対してこう述べている。
愛とは、愛するという行為によって実現される価値である、と博士は言う。
この映画では、光太郎が、そして琉生が、目の前の仕事――仕事というと狭い意味になってしまうかもだが、ミッションというべきもの――と出会い、その目の前のものを愛すると決め、行動することからあらゆることが動き出す。
まず琉生がそうしている姿に、光太郎も影響を受け、その次の世代にも広がっていく輪が、この物語では描かれる。
そのキャラクターの姿に、こちらも心を動かされるのだ。
ふたつめは、自分がしてもらった恩を送る、「恩送り」ということ。
主人公の琉生は、ウイスキーについての知識のない人にとことん優しい。
「はじめてなのだから」「詳しい人ばかりじゃないから」と。
物語では描かれないが、物語を知ると、それは、かつて琉生が言ってもらった言葉なのでは、と思い至る。
自分が言ってもらって助かった言葉を、かつての自分と同じような立場のひとに伝える。
人は、自分が大変だった経験をすると、ほかの人が同じような立場になった時に、同じように大変でないとフェアでないような気になることもある。
だが、フェアでなくてもいいのだ。
そこで自分がやって欲しかったこと、やってもらって嬉しかったことをするだけで、同じところの堂々めぐりから、ちょっとだけでも、世の中が底上げされて良くなる。
そうしてちょっとずつでも底上げしていくうちに、いつかまた自分が初めて何かをするとき、「助けることが当たり前だから」というかたちで戻ってくるかもしれない。
そんな気持ちで恩送りしたくなる映画でもあった。