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人的資本経営に重要!プレゼンティーズムって? #0139/1000

今日は、「プレゼンティーズム」という、いまの日本にも、人的資本経営にも重要な考え方についてまとめます。

1.プレゼンティーズムってなに?

プレゼンティーズムとは、

従業員が職場に出勤はしている(present)ものの、何らかの健康問題によって、業務の能率が落ちている状況(つまり企業や組織の側から見れば間接的ではあるが、健康関連のコストが生じている状態)

のことです。
(厚労省保険局「データヘルス・健康経営を維持するためのコラボヘルス・ガイドライン」より)

厚労省も、この資料をはじめ、「健康」経営に力を入れていますが、「経営」側、経済産業省も注目しています。

経済産業省は、プレゼンティーズムを「健康問題による出勤時の生産性低下」「欠勤にはいたっておらず勤怠管理上 は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態」として紹介されています。(健康経営オフィスレポート、平成27年)

また、プレゼンティーズムが進行してしまうと、「アブセンティーズム(健康問題による欠勤)」につながるという見方もあります。

つまり、その人、その職場にとって、欠勤や休職に至ってしまう道の一番はじめの兆候、「炭鉱のカナリア」的な指標が、プレゼンティーズムと考えられるのです。

2.なぜ重要か?

このプレゼンティーズムを重視すべき理由は、大きく2つあります。

(1)従業員の健康増進、未病対策として

(2)従業員に高いパフォーマンスを出してもらうための人的資本経営として

(1)については、現在、「病気になってしまってからそれを治すよりも、病気になりにくい心身をつくることで病気を予防し、健康を維持する」という予防医学の重要性が注目されていますが、それとも関連します。

「なんとなく不調」の理由は人さまざまで、個人的なことであれば会社が踏み込めない範囲はもちろんあります。

ですが、会社の働き方や環境や人間関係が改善されれば、その影響は全体的に及ぶのではないかと思います。

たとえば家族内の不和で悩んでいる、という場合でも、労働時間が長すぎるのが問題である可能性はあります。

心や時間やお金に「ゆとり」ができれば、個人的な問題にも向き合っていくパワーがわいてくる場合もあります。

企業が、企業のできる範囲内で改善していくことで、ごく個人的なことにも好影響をあたえる可能性は決して小さくないと思います。

従業員が欠勤や病気による休職などに追い込まれるのを防ぐために、企業としては、プレゼンティーズムに注目し、対策することは有効だと思います。

(2)の経営的側面としては、厚労省の資料に驚くべきデータが掲載されていました。

2009年の米国商工会議所等によるパンフレットのデータです。
米国のある金融関連企業の事例として、従業員の健康コストのうち、過半数を「プレゼンティーズム」が占めているというのです。

自分の身において考えてみれば、「今日はなんとなく不調で生産性があがらない」、という経験は普通にあります。

誰にでもあてはまることだけに、影響力の大きさにも納得です。

パーソルワークスデザインでは、このプレゼンティーズムによる損失を、以下のように試算しています。

例)1,000名の従業員を抱える企業の場合
・低リスク群……700(人)×50(万円)= 3億5,000万円の損失
・中・高リスク群……300(人)×70(万円)= 2億1,000万円の損失
→合計で約5億6,000万円の損失
この企業で、仮に「中リスク群・高リスク群」の200名が「低リスク群」へと改善された場合、年間の損失は約5億2,000万円となりますので、約4000万円のコスト削減ができるということになるわけです。

約4000万円のコスト削減!

つまり、早め早めに手をうてば、経営状態にも好影響があるということです。

プレゼンティーズム対策は、人的資本経営のためにも重視すべきポイントといえそうです。

3.どうやって測るのか

プレゼンティーズムは実際に欠勤したり、病院で治療費が発生しているわけではないので、測定が困難です。

厚労省の資料には、プレゼンティーズムの測定の試みは、まずは、客観的に従業員の労働の生産性を測定することから始まったとあります。

そこで、生産性の低下を「実測」するわけです。

ですが、そういった測定のもととなる、所定時間内のサービス処理量が測定できない業務も多いのが現状。

欧米でもっぱら採用されてきたのは、自分で記入する質問票で生産性低下を測る試みですが、客観的指標でないところに問題があります。

いまはまだまだ「これ!」という計測方法がなく、模索中という状況ですが、自分で記入する質問票(自記式質問票)については、試行錯誤がかさねられ、統計学的妥当性について一定の検証がされている方法もあります。

そのひとつが、WHOがハーバード大学と共同で開発された質問票で、このようなものです。

ところが、日本人の場合、「この回答値が極めて低くなる傾向」があるようです。

その日が「最高のパフォーマンス!」だったと感じたとしても、自信をもって10をつけられる人はたしかにあまりいないかもしれません。

日本に適した計測方法については、まだ課題がありそうです。

4.おわりに

プレゼンティーズム対策が大事だということはわかった、何をすればいいかも、各企業の事例などがあるので実行できる。

でもそれで何がどう改善され、何が予防できたのかはどうやってわかるのか。

そこは、大きな課題です。

ですが本来、日本式の経営は、従業員に寄り添い、福利厚生サービスなどでその人生もサポートするような手厚いものでした。

プレゼンティーズム対策も、その延長線上と考えれば、けして親和性の低いものではないと思います。

プレゼンティーズム対策は、心理的安全性とも深く関係する要素が多いもの。

職場を好循環させていくためのひとつの動力として、考えていきたい課題です。

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