仕事との両立支援、テレワークの扱いは育児と介護で違っているべき
今年を通じて議論されてきた、育児・介護と仕事との両立支援対策のための法律改正が、いよいよ形になりそうです。
育児関係は利用できる制度を増やしたり対象年齢をひろげたりする一方で、介護関係はまだまだ制度の認知が足りないということで、いまある制度を周知徹底し、利用してもらうための対策が中心となっています。
そのなかでも、育児と介護に共通してポイントになっているのが、テレワーク。
育児のほうでは、テレワークが選択できる措置のひとつとして義務とされ、介護のほうでは、導入は努力義務となっています。
育児は、以下の資料のように月に10日などの明確な基準まで設けられていますが、介護がそこまでテレワークを推していないのには、理由があります。
介護におけるテレワークは、「通勤時間の削減や、遠隔地に住む家族の家からの業務実施が可能となり、フルタイムで働く日を増やすことも可能になる効果が期待される」とされています。
その一方で、「介護中の労働者がテレワークを行うことにより、労働者本人に負担が生じることも想定される」という理由により、介護においては、「テレワークは選択的措置義務とはせず、努力義務とすることが適当である」という結論です。
結果、介護では「労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務」という書かれ方をされています。
この判断に、私は賛成です。
育児と介護はともに同じ法律で扱われていますが、方向性は真逆だと思うからです。
育児は、成長するにつれて手が離れるめどがつき、保育園や学校とおのずと交友関係もひろがっていきますが、介護は、先が読めず、ケアマネージャーやヘルパーさんなど、手続きをしたうえで意識して関係者を増やしていく必要があります。
だからこそ、介護でテレワークを義務にすることで、労働者がテレワークしながら介護できてしまう選択肢をつくるよりも、介護休業や介護休暇を利用して介護を支えてくれる人との関係をしっかりつくり、テレワークしなくても介護が成り立つようにすべきだと思います。
ですがもちろん、通勤時間が長かったりする人は、その負担がテレワークで減じられるため、すべてのケースでテレワークは副次的なものとすべきというわけではありません。
育児や介護と仕事との両立にテレワーク、というといかにも良い対策のように見えますが、特に介護は、テレワークをすすめることが良いケースばかりではないから気をつけよう、ということです。
今年8月現在で、テレワーク実施率は、正社員で5人にひとりより少し多いくらいまでだいぶ減ってきています。
この数字が全体として高くなればいい、という訳ではなく、個々の事情をきちんと確認したうえでの運用が、いま求められています。
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