ぽんちゃん

セクシャルマイノリ🍵 創作の単発の短編の小説をときどき更新します --- 各サムネイ…

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セクシャルマイノリ🍵 創作の単発の短編の小説をときどき更新します --- 各サムネイルやアイコンはフリー素材、またはpicrewよりお借りしています。

最近の記事

ブルームーン

バーに行って、1人で飲むのが好きだ。1人なら好きなペースで、好きなお酒を、好きなように飲める。それに、新しい友人ができたり、その場限りで誰かと話したりするのも楽しい。 要は、人に気を使わなくて良い、マイペースな時間が私には必要なのだ。 その日も、街を歩きながらふらりと初見のバーに入った。 「1人、空いてますか?」 「カウンター、どうぞ。」 人当たりの良い、40代くらいのマスターがにこりと微笑みながら通してくれた。カウンター10席弱、テーブル2席。店内は焦げ茶を基調とし

    • 自然な恋

      私は体も心も女で、男性が好きだった。 小学生の頃、クラスの男の子のことが好きでラブレターを書いたことがあるし、中学では生活指導の先生の目を盗んで、好きな男子にバレンタインチョコを渡した。 でも、高校の頃にそれは揺らぎ始めた。 他学年との交流が多い高校へ進学したために、部活や委員会以外でも先輩や後輩と関わることが多かった。そんな中で、入学後に委員会か何かで知り合った3年生の先輩がいた。 彼女はショートボブが良く似合う人で、少し声が低めの、仕事ができる反面茶目っ気のある明

      • タピオカ

        タピオカってまだあったんだ。 渋谷を歩きながら思う。列を成すうちの何人が東京の人じゃないんだろう。田舎は流行が遅れてくるって言うし、9割くらいは地方や海外の人が観光で来ているのかも。残りの1割は、普通にタピオカが好きな人。 で。足元に目をやると、そこらじゅうの電柱やらの下にゴミが散乱している。タピオカの残骸も。汚いなぁと思いつつ、別に拾ってやろうとは思わない。別に愛着がある街ではないし。 周囲の人気で火がついて、手に入れられて、最後は適当に捨てられて、綺麗な思い出や写真

        • ヒールの音は遠く

          コツコツと細いヒールを鳴らしながら、私の前をどんどん進んでいくあなた。追いついて隣を歩きたいのに、足が重くて進めない。 本当は、あなたと腕を組んで、この人混みを歩きたいのに、もう腕を伸ばすのも、すっかり怖くなってしまっていた。 大好きなあなたが私の恋人なのだと、すれ違う皆に知らしめたいなんて考えて、浮き足立っていたのはどれくらい前の事だったか。 今はもう、あなたに触れたら、話しかけたら、何かが崩れる気がして、不安だけを抱えている。 いつから、こんなに怖くなったのだろう

          恋を失う

          「またね、元気でね。連絡するね」 さっきまで同じベッドにいた私たち。数年ぶりに会って、お酒を飲んで、終電は無かったことになって、安いホテルに2人で入った。 シャワーを浴びてから、ケラケラと笑いながらキスをして、懐かしいねと言いながら欲と思い出が溶け合った。 変わらない匂いがしたのに、腕の中で眠るあなたはもう、お互いにただ好きだった頃のあなたじゃなかった。私が知っているあなた、私が好きだったあなた、私を好きだったあなたはもういないんだと、現実を見て、少しだけ視界がぼやけた