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タピオカ

タピオカってまだあったんだ。

渋谷を歩きながら思う。列を成すうちの何人が東京の人じゃないんだろう。田舎は流行が遅れてくるって言うし、9割くらいは地方や海外の人が観光で来ているのかも。残りの1割は、普通にタピオカが好きな人。

で。足元に目をやると、そこらじゅうの電柱やらの下にゴミが散乱している。タピオカの残骸も。汚いなぁと思いつつ、別に拾ってやろうとは思わない。別に愛着がある街ではないし。

周囲の人気で火がついて、手に入れられて、最後は適当に捨てられて、綺麗な思い出や写真だけが誰かの中に残るタピオカ。

ちょっと見た目が良かったせいで周囲に持ち上げられて、告られて付き合って、最後はあっけなく捨てられた私みたいな気がした。

街を歩くだけでネガティブなことばっかり考えている、こんな性格じゃあ捨てられても仕方ないとは思うけれど。

でもさ、私もタピオカもさ、何か悪いことしたかな。周りが勝手に盛り上がって、最後は勝手に捨ててさ。

今の私も、このタピオカのゴミみたいに惨めに見えるのかな。悔しいよな。まだあったんだとか言ってごめんね。

「……えっと。ミルクティーラテのトールで。タピオカは普通の……甘さも普通で。お願いします。」

今日はタピオカを飲みながら帰ることにした。今はタピオカだけが、私をわかってくれる気がしたから。

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