見出し画像

狙いと課題の両面 - 2022 J1 第3節 浦和レッズ vs 湘南ベルマーレ

この記事でわかること

  • ビルドアップの最初の狙い

  • 次の一手が打てなかったその先

  • 今季の作りは左サイド

  • 対3バックプレッシング

  • まずはひとつ

浦和レッズサポーター間での議論活性化を目標に戦術を解説するマッチレビュー。今回はJ1第3節、湘南ベルマーレ戦です。

再び後半に失速した川崎戦から中3日、依然として厳しい日程ですが、この後に1週間のブレイクが訪れる、連戦最後の試合になりました。

結果は2-0の勝利。内容自体はこれまでの試合よりは悪かった印象ですが、先制点など、狙った展開の表現もありました。

浦和が湘南の特徴を利用したこと、対3バックに対するプレッシングの試行錯誤などを中心に解説します。

この記事は下記で掲載済みのものをです!

パーフェクトではなかった前進

ボランチに平野と岩尾が同時起用され、ボールを握り倒す意思表示かな?と皆さんも楽しみにしていたと思います。

結果的に平野は30分にアクシデントで交代しますが、想定ほどうまくはいかなかったという印象です。

湘南の守備組織・守り方は昨年や一昨年とさほど変わっていません。

2トップが中央を閉め、その脇はIHが飛び出して埋め、大外はWBが前にズレて埋めようとします。

リカルドの試合後のコメント通り、人への意識が強いチームですので、浦和としては2トップ脇にSBを配置することで時間やスペースを確保しつつ、IHを引き出した裏を狙いたい意図はあったと思います。

今回の相手である湘南は、人に対して前からハメていくディフェンスに特徴のあるチームですので、その意味では難しい相手によくやれたと思っています

SBが前を向いたところでで江坂を中心にボールを受け、湘南の前向きな中盤をひっくり返し、ハイラインの裏を取っていくことが最終的な目標になるでしょうか。

SBで時間やスペースの確保には成功したものの、そこから先の展開では狙い通りは進まなかった印象です。

おそらくボランチ経由で前に前進したかったとは思いますが、右サイドなんかは、酒井→松崎の外・外のパスが多くなり松崎がWBに捕まって詰まる場面が複数回ありました。

これには平野が横でボールを受けられる立ち位置に入れているかどうかや、江坂があまり右サイドに降りてこなかった側面もあるかもしれません。

今季は左から

昨季は右から作って左で、という形が多かった浦和ですが、今季は左からの作りが多くなっています。

大畑の加入や、内外でボールを引き出せる関根、そして江坂が得意としているサイドであることが寄与している印象ですが、この試合でもここから得点が生まれました。

15:40の先制点は押し込んだ状態からの得点で、これは狙い通りでしょう。

ショルツがボールを持つと、湘南IHは中盤のスペースを埋めるよりは目の前の岩尾へ意識が向いています。

岩尾が立っている場所によってコースが空きやすいので、アンカー横で江坂が受けて反転すると、大外で相手の最終ライン裏を取った大畑がサイドを抉ってマイナスのクロス。

ボックス内に最初に入っていくのは明本で、それに引っ張られてできたスペースに江坂が遅れて飛び込んでくる形は理想的な展開。

この最初にアクションを起こすという明本の存在はやはり現チームでは貴重ですので、FWとして前線にいることの価値が改めて感じられるシーンでした。


https://twitter.com/REDSOFFICIAL/status/1500402156620644361


湘南のIHの意識

先制点の少し前、13:20にもショルツ→アンカー横の江坂というパスが通っており、この時も湘南のIHがサイドに開いたショルツにプレスへ行こうかどうか、という動きを見せていて内側が空いていました。

相手の2トップ脇で時間とスペースを確保し、湘南のIHがどう動くかを見ることができれば、空きやすいアンカー横を突くことはできました。

課題の対3バックプレス

昨季苦戦した印象を持っている方も多いであろう対3バックの守備ですが、今回も良かったかどうか?と問われると微妙なところでした。

今節の湘南は3バック+アンカーシステムで、浦和は2トップで3バックを追い込みつつ、SHが3人目として前に出て行きたいような構え。

しかし、前からの守備は狙い通りにはできていない場面もあり、26:30や27:30など、2トップ脇から運ばれてWBの幅を使われるような場面も目立ちました。

2トップの方向付けを持ってSHが前に出て行きたいのでしょうが、局面を切り取ってみると浦和2トップvs3バック+アンカーの構造になりやすい印象です。

1人分の数的不利なら、プレッシングのコース取りによって背中で相手を消して不利を解消できますが、そこにアンカーが加わると少し難しいのでは?という印象を個人的には持っています。

撤退守備は安定

一方で、ミドルゾーン以降に撤退した際の守備は昨季から引き続き安定感があります。

湘南はWBが幅を取り、両IHが相手中盤背後に潜り込んで2トップに加勢する形が基本でしたがうまく対応できていました。

4−4のブロックですと、WBを配置するチームに対して幅で後手を踏みますが浦和は左右で違う仕組みを採用しながら守れていました。

左サイドの大外は関根にプレスバックするタスクが課されており、右サイドは松崎が下がるのではなく、酒井が縦ズレ。

前からの守備では2トップに加勢し、撤退時は大外カバーと、昨季も3バック相手には同じようなタスクは担っていましたが、連戦で疲労が溜まっているはずの関根になかなかのタスク量を課すなと思いました。

一時的にハイプレスが機能

一方で、浦和のハイプレスが嵌った時間帯があります。後半開始から60分の3枚替え交代までの時間帯です。

これは意図的か結果的にかはわかりませんが、前線のプレスに変化がありました。

この時間帯は主に江坂がアンカー見つつ、明本が中央のCBとGKまで追いかけ、左右のCBに対していSHの関根と松崎が出ていく形。

アンカーを最初から消せているので、SHのスタート位置を高くすることができ、湘南の最終ラインへプレッシャーがかかりやすくなっていたシーンでした。

48:40にはこの形から関根が高い位置でボールを奪い、そのままドリブル突破。決定機を迎えます。


https://twitter.com/REDSOFFICIAL/status/1500404952568832004


続く52:10、53:20でも同様の形でプレッシングを行なっているので、意図的かなとは思っています。

交代後の試行錯誤

60分の選手交代後は再び、江坂と小泉の2トップがプレッシングの起点になってからSHが前に出ていくような方法に戻りました。

しかし65:35では左CB山本へ、江坂と大久保が一緒にプレッシングするような形となり、内側を通されます。

この時、大久保は酒井にWBのケアを依頼しているように見えますが、かといって内側を消せているわけでもないので、チームとしてどこに追い込むのか徹底はできていない印象でした。


記憶ベースなので時間帯は定かではありませんが、この辺りで大久保と酒井が会話をして、大久保自身が外から切るようなジェスチャーをしていました。

その後、大久保が出ていく時は外を切るような追い詰め方をするようになります。

WBから斜めのパスを入れようとする湘南に対し、そもそもWBへのコースを消すような狙いがあったのかもしれません。

76:35にはその追い込み方が見られ、外を切っているので敦樹が中央へのパスを予測して前に出る連動ができています。

解答は見つかるか

この3バック+アンカーな配置、最終ラインが大きく幅を取る配置を取られた場合のプレッシングは昨季からの課題です。

川崎戦の後半もそうですし、今節もうまくやれたか?と問われたらYESとは言い難いかと思います。

しかし、試合の中で様々な形が見られているので、今後どう設計してくるか、その過程に注目すると守備の面でも楽しみが増えると思います。

逃げ切りを図りたい浦和は、中盤ロングボールのこぼれに勝利した明本から馬渡にパスが通って決定的な追加点。

今季リーグ戦初勝利を収めました。

まとめ - まずはひとつ

全体的に湘南の練度の低さ、ミスに助けられたシーンは多かったと思います。

個々のスキルや球際の強度、切り替えの意識や早(速)さは浦和が上回っていたので、良かったです。

本文中では触れませんでしたが、カウンターやロングボールのこぼれからチャンスを迎える場面も多く、中盤での切り替え勝負からゲームが展開される、いわゆるトランジションゲームになった時は特に優位に立てました。

2得点目はまさにその展開ですし、明本が抜け出した場面なんかは、湘南のネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え局面)に備えた予防的な立ち位置の取り方が悪い印象でした。

ですので、馬渡のスピードやドリブルでの運びを期待してSHに配置したのもこういった湘南の弱点を考慮してのことかもしれません。

こぼれた瞬間にあれだけ間と背後が空いていれば抜け出すのは簡単だよなと思いつつ、実際にそこをつけているのはポジティブに捉えて良いと思いますし、中盤のトランジションや球際の強度で勝るという観点は、昨季の反省から突き詰めている局面でもあります。

まずは結果を確保

内容としてはこれまでの試合で一番手応えが少ない印象でしたが、この試合では勝ち点3を獲得。

厳しい日程とスカッド事情の中、勝利をひとつ得られたことは何より大事なことでした。

平野が再離脱してしまったように、選手の負荷や起用リスクが大きかったのも事実でした。そうであっても起用せざるを得ない事情でしたが、やっと1週間のブレイクが訪れます。

徐々に選手も戻ってきていますし、ここからコンディションを上げて反撃といきましょう。

内容は重要な勝ち点3を得た今節。レビューを読んでの感想や意見はぜひ下記Twitterの引用ツイートでシェアしてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?