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宋の皇帝 徽宗(きそう)の書


~美術を愛した宋時代のラストエンペラー~

徽宗皇帝が生み出した書体、痩金体(そうきんたい)と呼ばれるオリジナルフォントをご存じでしょうか?
名前の通り、針金のような細くキレのある線が特徴で、好みも分かれるかも知れませんが、高貴で強く美しい書体です。

(痩金体の胡蝶臨書)


模写してみて気が付いたことは、皇帝らしく縦に伸びている形だということと、収筆(斜めに大きく抑える)など規則性がはっきりあり、他に類のない特徴を持っている書体だと思いました。
でも、思ったより難しくはなく、癖を覚えると、突いて一気に抜く線はとても爽快で気持ち良いと感じました。ストレス解消にもおすすめです。

( 徽宗皇帝草書体 )


( 徽宗皇帝草書体の模写 / 出口胡蝶臨書 )

そして草書の方も、筆の運動が大きく、ダイナミックで即興で書かれた文字は「氣」やオーラが全開になり、自信を持っているからこそできる自由さを感じました。
こんな風に書けたら、政治の事など忘れてしまうのも無理は無いかも?と想像してしまいました。

徽宗皇帝は、芸術家として才能を持ち、画業に没頭し過ぎ、民衆から反乱が起きているうちに他の国に侵略され滅ぼされてしまった悪名高い皇帝です。具体的には、宮廷の中に、芸術家の養成所を作ったり、美術品の保護や、研究などの活動に力を入れました。
そして、御妃など大勢の女性を置き名前が分かっているだけでも166人、子供も35人くらいいたそうです。徳川幕府の大奥は、徽宗皇帝を参考にしたのでは?と思ってしまいますね。

とにかく自分の私利私欲のために民衆から高い税を取り立て芸術へお金を投資していました。
その時代に生まれ、民衆として生きていたら、自分も反乱に参加していたかも知れませんが、長い歴史を俯瞰して見ると、中国美術史上、かなり重要な美術品の黄金期を築き上げ 芸術面で魅力的な中国を作り上げた人であり、平和を好んだ人だったのでは?と思いを馳せ、お会いして書や絵の話しを聞いてみたかったなと思いました。