春だもの

2020年はコロナウイルに世界中が翻弄され、2021年の3月の現在も収束が見通せない毎日です。

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春  新川和江

わたしはもう悲しむまい
あけびも どうだんも
藤も 楓も 八手も 槻の木も
みんな忘れずに芽をふき出した朝
親しいものがいちどきに訪れた
輝かしい恵みの春だもの

それにもまして これはどうであらう
寒い冬の日に伐りたふされて
庭の隅に横になつたままの
銀杏の幹から 枝から
こぼれる様に芽をふいた此の青いものは!

ああ ひとよ
かの樹木らの偉大なる生存力を讃へよう
すべてが息をふきかへした恵みの春に涙を流さう過ぎさつた陰湿な冬の日の苦しみは
もう言ふまい
暗い夜はすでにあけ
今や 地上は明るい 輝きに満ちた春の朝だ

雨上がりの空気のやうに
しつとりと重量のある大気の中で
みどりのかげに胸をたかならせ 心ふるはせ

ひとよ
わたしはめんどりの様な理屈ぬきの情熱で
希望と親愛の卵を抱きしめる

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画像1

一年前に中止になったコンサートで演奏予定だった曲の詩です。

2019年10月に大雨被害に遭ったふるさと長野に想いをはせての選曲でした。

大雨のあった次の日、私はNHKホールでNコンを聴き、故郷の被害が心配で何を聴いても上の空だったのだけど、結果として優勝校が歌ったこの春に励まされ、復興への希望を感じ、涙が止まりませんでした。

暗い夜はすでに明け 今や 地上は明るい 輝きに満ちた春の朝だ

もうすぐ桜も咲きますね!!




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