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#7/60代パン屋の成長記録~知行合一~

守破離の「守」

日本の芸道には守破離という考え方がある。
私は、この考え方が好きだ。
あまりに多用し、私が作った言葉と後輩が誤解したこともある。そんな高度な表現力、あなたの先輩には備わってないよ(笑)。

守破離の「守」は、師の教え・型・技を忠実に守り、確実に身につける段階とある(引用:デジタル大辞泉)。

習った通りにパンを作る。
「わかる」と「できる」を一致させる、知行合一こそ第一関門だった。

パン作りの基本:あんぱん

「あんぱんって生地にあんを詰めるだけでしょ?」と侮るなかれ。

上手なパン屋さんのあんぱんは、きちんと生地の真ん中にあんが来ていて断面図がきれいだ。単純にきれいであるばかりではなく、それは味を左右する。

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断面図がドキドキ:ゆずあんぱんと桜あんぱん

あんぱんが主人公の国民的アニメを、ちょっと想像いただきたい。
「ぼくの顔をお食べ」と手渡された一口分にあんが入っていなかったら…。あなたは元気100倍になれますか?

私なら言っちゃうな。「もう一口ちょうだい」って。
「美味しいパン」とは「どの一口を切り取っても美味しいパン」なのだ

パン作りの応用:メロンパン

あんぱんで躓いていては、先に進めない。
より難易度が高いのがメロンパンだ。

メロンパンの「スカートめくり」をご存じですか?

メロンパンは2種類の異なる生地で構成される。
上部のクッキー部分と、下部のパン部分だ。
パン部分はイーストを含むので熱で膨らむのに対し、クッキー部分はそこまで膨らまない。

2種類の生地の重心が一直線上にくるように成形しないと、焼きあがった後にクッキー部分(スカート)がめくれあがり、ひょっこりパン生地が見えてしまうのだ。
これぞパンチラ(*ノωノ)

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マリリンモンロー状態のチョコチップメロンパン

理屈は簡単だが、実際にやってみるとまぁ難しい。「わかる」と「できる」の間にそびえたつ、あぁ神聖なる嘆きの壁よ。祈りを捧げながら、ただひたすら練習あるのみ。


「わかる」を「できる」に変えるのに才能は必要ない。続けているから「できる」ようになり、続けなければ「できない」に戻る。


時に私たちは、このシンプルなルールを忘れる。
自分よりできる人に「天才」という言葉を当てはめ、その裏の努力を直視しない。

アインシュタインによれば「天才とは努力する凡才」らしい。

パンをきれいに丸める。パン屋以外では、おそらく役立たない技量だが、まぁなんだっていいのだ!
何か一つできることを増やした自分は、他人に一歩向き合える自分になれる気がする。これこそ真に習得したい技量で、のちに自信や充実感を連れてくる。

守破離の「守」は知行合一を追求し、自信を培う時間だった。

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