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#15/夢追いオヤジの娘が思うこと

60代から両親はパン屋になった。
「夢追いオヤジ」の夢は一定に叶ったと言えるだろう。

私は「夢追いオヤジの娘」となり、2つのことを実感している。

夢は相談しなくていい

小さい頃から、両親に「将来は●●になりなさい」と言われた記憶はない。

唯一覚えているのは中学2年生の頃、母から「職業はなんでもいいけど、ジリツした女性になってほしい」と言われたことだ。
当時は自立か自律かもわからず、とりあえず「将来の夢はお嫁さん💛」などの女子特有のパワーワードで思考停止するな!と言われたんだろうと受け止めた。
(余談:じゃあ、どうするの?という具体的なロールモデルを示してくれたのは乃南アサさんの『凍える牙』という小説だった。以来、人生の分岐点には必ず乃南さんの作品を読むほどにファンとなる。)

「職業はなんでもいい」を文字通りに捉えた私は、進路やキャリアを好きに選ばせてもらった。

親が「相談でなく報告です」とパン屋宣言をした際、後に続いた言葉がある。
「今まで私たち(両親)もあなたたち(娘二人)が決めた選択を否定してこなかったでしょ?」
確かに。もともとパン屋を否定する気はなかったが、仮にしても意味がないとストンと腹落ちできた。

夢を持つことは、それだけでものすごくパワーがいる。わずかに灯ったロウソクの火は、誰かのたった一息で簡単に消えてしまう。
夢を持てない時間は、それだけで焦燥感に駆られる。自分でなくてもいっか、今日でなくてもいっか、とメンタルブラックホールに簡単に吸い込まれてしまう。

やりたいことを始めるのに相談は必要ない。
報告という名の宣言をするくらいが、ちょうどいいのだろう。

夢追いオヤジの底力

意外(?)にも「隠れ夢追いオヤジ」や「夢追いオヤジ予備軍」は多いと感じている。あなたの身近にも、ひっそりウズウズしてる方いませんか?

定年後にあえて異業種に挑戦する方はもちろん、「会社を引退したら図書館に通いつめたい」とか「一年間に年齢以上はゴルフに行きたい」など、職業と直結しない夢だって立派な夢だ。

これは決して人生100年時代だからではないだろう。

徳川家康が200年続く江戸幕府を開いたのは61歳だし、セルバンテスが聖書に次いで読まれる名著『ドン・キホーテ』の前編を出版したのは57歳だという(後編を出版したのは10年後なので67歳だ)。

夢追いオヤジ(もちろん夢追いおばちゃんも)の底力は偉大だ。
高齢化社会が進む中、かっこいい背中を見せてくれる人生の先輩が多いことはなんとも心強い。誰かの充実は、それを見る周囲の人に憧れをくれる。

パン屋に励む両親のそばで、この世界は明るいわぁ~と娘は呑気に思っている。

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