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洗濯機が使えるまで

アメリカに住んでいた時の話。ある時、洗濯機が壊れた。正確に言うと洗濯乾燥機の乾燥機が壊れた。使えないわけではないけどパワーがない。弱々しく何時間も回り続け、とにかく時間がかかってしまう。

じゃあ干せばよいと思うかもしれないけど、乾燥した室内に干せばタオルもTシャツもゴワゴワ、パッキパキ!外は氷点下だし…というかそもそも天候に関係なく外に干すという文化がない。干すのは乾燥機の買えない低所得者のイメージがあるのだ。

住んでいたのは賃貸で借りていたコンドミニアム(日本で言うマンション)。冷蔵庫や洗濯機は元々備え付けられていた。なのでこういう場合はまずオーナーに連絡だ。離れた街に住むオーナーはすぐに駆けつけてくれ、寿命だから買い替えようと判断。オーナーが自分で購入し、配送の日はまた連絡するということになった。ここまでは順調。

数日後、ホームセンターから直接洗濯機が届けられると連絡を受け、私は外出せず待っていた。ずっと。オーナーの住む街にある店から来るから時間がかかるのだろうと気長に。でも結局、来なかった。

改めて約束した別の日。来た!外に大きなトラックが止まり、2人の男性が洗濯機を降ろす姿が窓から見えた。それなのに…

「車から降ろしていたら洗濯機の前面に凹みを見つけたから今日は取り付けられない。」

と言う。えっ⁉︎そんなことある?店を出る前に確認しないの⁈…もしかして今降ろしている時にどこかにぶつけたとか?…色々私が戸惑っているうちにトラックは去っていった。

別の日。朝来ると急遽言われて、私は他の約束をキャンセルして待っていた。…でも。来なかった。まただよ…。

今日こそ!と思った新たな日。来た!新品の洗濯機がトラックから降ろされたのを確認。にもかかわらず、今度はケーブル(?)が合わないから今日は無理と言う。…前回来た時に確認しとくべきだったのでは⁈想定して数パターン用意してくるとかしないわけ⁈もう不信感しかない。

日本の常識で考えちゃいけないと思っていてもこういうことがある度に落胆が大きい。他の国からアメリカに来た人達からしたら、自国の方がもっとひどいと笑う。こんなことでイライラしてしまう私は心が狭いのか?

新品の洗濯機はガレージに放置状態。一体これはいつ無事に使用できるようになるのかと、目にする度に溜息が出た。

ガレージに置かれたままの洗濯機

さて、もう何度目になるのか…また新たな約束の日。気だるそうな2人組がやって来た。見るからにやる気がない。1回で仕事が完了しないことに申し訳ないとも特に責任を感じるわけでもないらしい。この日も「持参したダクトが短かったから取り付けは別の日に…」と言い出した。…何だそれ?

その日は土曜日で夫も、その時期アメリカに来ていた息子も在宅していた。夫が、ダクトが短くてもできないことはないだろう?自分でやってみるからと、とにかく洗濯機を運ぶよう指示。2人組は古い洗濯機と新品を入れ替えるところまではしてくれた。

夫はダクト部分だけ自分で取り付けるつもりだったらしいが、古い洗濯機をトラックに乗せたら2人組は逃げるように去って行った。チップを渡す暇もなく…いや、渡さなくて正解だけど!

狭い洗濯機の後ろで2時間ほど悪戦苦闘した夫。ようやく取り付け完了し、試してみようとスイッチを入れた。…でも何度やってもエラーになるばかり。原因を探っていると、洗濯機の底面にストッパーのように発泡スチロールが挟まっていることを発見。これは…配送員が最初に取り外しておくべき物…!怒りが湧いてくるやら、呆れるやら…。

こんな物が洗濯機の下に挟まっていた…

ダクトが長ければ外さなくても作業できたのに、結局苦労して取り付けたダクトも外して重たい洗濯機を移動。狭いスペースで洗濯機を傾け、底の発泡スチロールを取り外し、また面倒なダクトの取り付け作業再開。

この時点で疲れ果てていた夫。呑気に起きてきた息子にバトンタッチした。するとスリムな息子はスイスイと作業し、30分かからず取り付け完了。あれ?夫の苦労は何だったのか…。

細身の息子、大活躍

そんな中、廊下に落ちている発泡スチロールのかけらを見つけた私は、それを何気なく拾うと、その先にも点々と落ちていることに気づいた。ここにも…こっちにも…と拾っていくうちに階段へ。古い洗濯機に付着していたと思われる汚れや埃もあちこちに付いている。

ガレージと外には大きなビニール袋とダンボールまで放置されていた。あの2人組の仕事って何だったのかと最後まで考えさせられてしまった。
「立つ鳥跡を濁さず」なんてことわざ、全然わからないだろうなぁ…。

とにかく、こうしてようやく無事に洗濯機が使えるようになって一件落着。1ヶ月近くやきもきさせられた。

改めて日本はすごいと思う。宅配便の時間指定なんてサービス、日本だけかも。アメリカではAmazonの荷物は、天候に関係なく玄関かガレージ前に放置が普通だった。業者に作業を頼めば日本ならそれなりの仕事をしてくれるのが当然だと思うが、海外だとそうでもない。

アメリカ人の友人が、
「引越し?業者になんか頼まない方がいいぞ!なんなら俺達が手伝うよ。報酬はピザでいいよ。」
と言って、引越し作業を引き受けてくれたことや、
「ペンキ塗り?ペンキ屋より私の方が綺麗に塗る自信あるよ。」
と言うのは、お金を節約したいためではなく、実際業者に頼んで仕上がりに満足できなかった経験から自分でやるようになり、どんどんスキルアップしていったからなのだろう。DIYが盛んなのはそういうことなのでは…?

新品とは言え20年くらい売れ残っていた物なのでは?と思わせる旧タイプの洗濯機…。まっ、使えれば良いのです。





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