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100%株主だからこそ起こりうる注意点

今回も株主についてお話させてください。

私は多くの会社の手続きに携わっていますが、平成18年以降に設立された会社は株主が代表取締役1名であることも珍しくありません。

私自身、代表の株式の保有割合の最も理想的な数値は100%だと思っていますし、実際設立時にそのように進めることも多いです。先日お話したように、むしろ株式を分散させることは会社の意思決定にとってリスクにもあるので、分散よりも集中、とご説明することがほとんどです。

とはいえ、100%の株主であることがすべてのリスクを排除するものではありませんので、100%株主であることから起こりうるリスクについて今回お話させていただければと思います。

1人ですべて決定できることのメリット・デメリット

100%株主であることの最大のメリットは、やはり「意思決定が早い」ということです。株主総会で決めるべきことも100%株主であれば、1人の意志で決定は可能です。これで役員も自分1人であれば、株主総会で決めるべきことも、役員として決めるべきことも、話し合いを経ず1人で決定することができるため意見対立という状態が起こりません。小規模な組織、または、代表のカラーが強い組織にとっては、代表の決定の早めが組織にとってのスピードとなります。

一方で、意思決定が早い・意思決定が集約しているということは、その人が倒れたら終わり、ということも意味します。

「もしも」の場合を想定しておく。

もし、株主であり代表取締役であるその人が、交通事故で意識不明の重体になるとどうでしょうか。これを例えば認知症とした場合には、ある程度症状は段階的ですし年齢的な問題もありますから、その間に準備することは不可能ではありません。もちろん、症状の進行は個人差がありますし絶対ではありませんが。しかし、交通事故や天災は突然降りかかるものです。その場合、もし死亡したと確定すれば、「相続」が発生し、相続人の話し合いを行うことができるでしょう。しかし、「意識不明」、つまり生きてはいるものの何かを決定することができない状態になる可能性がある。このことの方がはるかに問題となるのです。

この場合、会社は一時的な取締役を選任しなければなりません。しかし、株主総会を開催しようにも株主も決定できるような状態ではないわけですから、一般的な手続きとしては裁判所に選任を求めることになります。申し立ては利害関係人から行うことになります。ただ、あくまでここで選任されるのは「一時役員の職務を行うべき者」ですから、代表取締役として引き継ぎをしている状態ではありません。また、代表取締役が意識不明になったということは、単に取締役や株主だけではなく、本人のあらゆることの意思決定が停止することになります。その場合、家族であっても法律上は別の人格である以上、勝手にお金を使うことはできません。財産の管理を行うために、場合によっては成年後見人の選任を行うことになります。

上記のとおり、法律上は手続きとしては準備できるものとなっています。しかし、今回のケースで、代表取締役である株主の意識が戻らなかった場合、成年後見人が就任するケースもあるでしょう。この場合、株主としての権利は成年後見人が財産管理のひとつとして行うことにはなるでしょうが、多くの中小企業にとって株は単なる財産ではなく、会社の経営に関する方針を決める大切な権限です。成年後見人に経営に関するものまで任せることが実際にできるものでしょうか。

株は財産である以上に、経営方針の要(かなめ)

株にはもちろん財産的な価値はありますが、それ以上に代表取締役にとって経営決定の要です。これを、どなたが就任するか分からない成年後見人にゆだねるのはリスクでしかありません。むしろ、それを望む経営者の方がいらっしゃるでしょうか。もちろん、成年後見人に後継者公候補の方を立てるということも考えられますが、成年後見人が就任した場合、本人の財産管理は大幅に制限されますので、その後継者候補の方が本人の意思を組んだとしても大幅な変更を伴う決定や株式の変更も難しいと言わざるを得ません。自分が倒れた時にそなえて経営についての取り決めをしておく。これがとても大切です。この取り決めには株式(株主)を無視することはできませんので、それをふまえた上での取り決めを、法律的な拘束を伴うものとして行っておくべきです。その一つとして信託がありますので、参考として信託と成年後見の違いを見ていただければと思います。

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未来に対する備えはひとつではありません。まずは、ご自身が相談しやすい方に少しずつでもお話することからはじめてみませんか。

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