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【司法書士のなぜ】生きてるうちの相続放棄準備

みなさん、こんにちは。司法書士の植田麻友です。今回は、

親が大きな借金を負っている

結婚のしていない兄弟がいてその兄弟と縁をきっている

家族の生活や性格はこちらがコントロールできるものではありません。でも法律は知らなかったでは通らない。この記事は相続放棄をすぐにしたい人、しようと考えている人に読んでほしい記事です。

そもそも「相続放棄」とは

司法書士の仕事の中で多く仕事のひとつは「相続」です。その中で、相続放棄したいという言葉をよく聞きますが、これは必ずしも法律上、つまり、家庭裁判所が関与する相続放棄とはニュアンスが違うことが多いです。あなたの考える相続放棄はどちらですか?

●相続の財産を全く何も現時点では取得しないし、何かお金やその他の資産をもらっていることもない。ただし、何か関与しないといけないことがあれば関与するし、新しい資産が出たら教えてほしい。

●今後一生、死亡した人の相続に関してかかわりたくはない。たとえ新しい財産が出てきても…絶対にだ!!

前者は、相続放棄というよりも、話し合いによって、「財産を取得しません」という取り決めをすることになります。いわゆる遺産分割協議ですが、この場合、相続人には実印を押していただくことになります。相続税申告がない限り、現時点においていつまでにしなければいけないという期間はありません。

後者は、家庭裁判所に「私は一切相続しません!」という申し立てをして認められた時に可能です。この場合、借金を引き継がないことはもちろん、プラスの財産、つまりはお金や不動産、株その他一切を引き継ぎません。ただし、これは被相続人(つまり自分にとっての家族)が亡くなったことを知った時から3か月以内に行わないといけないので、急いでしないと期間が過ぎてしまうことになります。

「相続放棄」に、本人がどんな意思を持ってその言葉を使っているのかは聞き取りをしないとわかりません。ただ、後者の場合には、家族との確執、関係の断絶、莫大な借金が隠れていることが多いので、より迅速に行わなければ、大嫌いの家族の借金を負ってしまうこともあり得るのです。ちなみに借金は、相続人同士で話し合って、引き継ぎません!と決めても、お金を貸した人は原則それに従う必要がないため、注意が必要です。

相続放棄の準備をはじめます。

相続放棄を行うには、裁判所への申し立てを行う必要があります。裁判所への申し立ては、その裁判所に赴くでも、郵送で送るでも大丈夫ですが、郵送の場合は、到着した時が受付日となるので、3か月の期間には注意しましょう。裁判所はどこでもいいわけではなく、亡くなった家族の住所(住民票)を管轄する(おおよそ近くの)家庭裁判所になります。

例として、父親と縁を切っている子供が相続放棄をしたい場合を考えます。すでに母親は死亡しているので、父親の死亡に伴う相続人はその子供のみです。父親を「被相続人」、その子供を「相続人」として話を進めていきましょう。

相続人が相続放棄をするためには、「裁判所に放棄します!」と言うだけではなく、戸籍等の相続関係(親族関係)が分かる各種書類も必要です。ただ、相続人からしたら「縁を切った親の本籍なんて知らない!」と話です。

父親の本籍を調べて戸籍を調べる方法はあります。①自分の戸籍(現在戸籍)をとる。この時、自分の本籍地もわからない場合には、住民票を「本籍地記載」でとりましょう。そこにあなたの本籍地の記載があります。

②自分の戸籍には「従前の戸籍」の記載があり、そこには本籍地の記載があります。結婚していればおそらくは母親の戸籍、未婚であれば、それが父親の戸籍がある可能性が高いです。その戸籍を順番にたどっていけば、父親の名前が出てくるでしょう。

③父親の本籍地にて戸籍(現在戸籍と戸籍の附票)を請求する。現在戸籍には、「父親の死亡日」が記載されていれば大丈夫です。

また、戸籍の附票は本籍地で同様に取得することができますが、こちらには父親の住所が記載されていますので、この住所がどの裁判所に提出するかの判断材料となります。


④上記の書類がそろったら、裁判所のHPにある相続放棄の申立書に記載の上、裁判所に郵送または持参しましょう。


どうでしょうか。即座にできそうでしょうか。実際、手続き自体は難しいというよりも手間がかかるという印象なので、時間をかければできないことはないでしょう。ただ、この手続きは、亡くなったことを知ったときから3か月以内に行わなければいけません。どうでしょう。即座にできそうでしょうか。

相続放棄は生前にできない

父親は生きているが、こんな即座にできる自信はないので、今すぐに相続放棄をしたい!と思われるかもしれません。

被相続人が生きているうちは相続放棄はできないのです。でも、できる準備はあります。

戸籍を集めておきましょう。

実際、父親が死亡した際に手続きを行うには、一部の戸籍は3か月以内の期限のものが必要なので、その戸籍は使うことができないでしょう。

一方で戸籍を事前に集めておくことで、少なくとも本籍地をたどっていくという手間を省略することができるので、期間は一気に退縮できます。3か月という期間がある以上、相続放棄は迅速性が命です。一刻も早く相続放棄を行うためには、不謹慎かもしれませんが、亡くなったときのために準備を整えておくことが肝要となります。

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