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【司法書士のなぜ】なぜ司法書士は株主のことを聞いてくるのか


会社、特に取締役を交代させたり、あるいは新しく選ぶ際にあなたはどなたにお願いしますか。おそらくは、普段からお世話になっている税理士にまず声をかけるでしょう。

そして、その税理士と役員報酬や保険のことで相談した後に、このようにおっしゃるはずです。

「では、登記の変更もしないといけませんね」

この後に司法書士を紹介するか、あるいはその税理士が司法書士に連絡するかは会社によりますが、この後司法書士が関与するのは間違いないことです。その時に、司法書士は必ず聞くことがあります。

「御社の株主構成はどうなっていますか」

これは少し堅苦しいですね。おおむね司法書士とはこんな感じです。会社からすれば「え?株主?」と思われるかもしれません。特にご家族で経営している会社の場合、株主というのは形式的なあることが多く、株主総会も同様です。もちろん、きちんと把握し、次の承継や相続対策を行なっている会社も多いですが、現実に紛争性がない場合、会社自身が主体的に株主構成を気にすることは少ないです。

ひとつは登記手続き上の理由

現在、法務局に株主総会議事録を提出する際には株主の構成が分かる資料が必要となります。厳密にいえば、全部の株主を記載する必要はないのですが、株主構成は確認する必要があるので、司法書士は会社の株主名簿または決算申告の際に添付する別表2を確認することになります。その時に、役員にもいない、関係性が親族でもない名前があるとおや?と思うわけです。

想定される最悪の流れ

「株主の中の○○さんってどういったご関係の方ですか?」

「従業員です。もう辞めましたよ

司法書士からするとぎょっとする流れですが、よくあることでもあります。従業員への報酬として、あるいはやる気を出させる目的、あるいは株主の人数が必要なので名前だけ、理由は色々ですが、株主としての権利を与えてはいるものの、その終わりのことを考慮されていないがために株主名簿には懐かしい名前が残っていることがあるのです。

その株主が保有してしている議決権の割合は1%あるいはそれ以下であっても、その人は株主であることに変わりありません。株主である以上、たとえ1株でも「株主としての権利」を行使することができるのです。

本来株主総会とは、株主全員に通知を送って開催するものですが、親族で運営している、いわば株主と毎日顔を合わせており株主総会で決議すべき内容について話せている状態であれば、形式的な招集通知はそこまで厳格でなくても問題になる可能性は低いです。

ただ、もし、上記にある昔の株主が、もし突然株主としての権利を主張したり、過去の株主総会の決議の取り消しを求めるかもしれません。その可能性はゼロではないのです。そしてその可能性が顕在化するのは、会社が上向きな時。売り上げがあがって何か利益にのっかろうとする人が登場するのはそんな会社にとって最悪のタイミングとなります。

株主総会で決定すべきことは多岐に渡ります。

●取締役や監査役の選任

●取締役や監査役の報酬決定

●定款の変更

今からでもできることはあります。

株主を見直す、整理を行うというのは、いざ紛争が起こらない限り潜在的な問題と捉えてしまうため、どうしても緊急度・優先度の低い問題として捉えがちです。ただ、株主の問題が発生した時に急ぎで解決したことが起こり得ます。

最も大きなリスクが想定されるのが、M &Aです。

会社を閉じることになり、その時に良い値段で買ってくれる先が見つかりました。事業だけではなく、当然に会社の決定の中枢にもなる株式を購入することになります。その時に、連絡の取れない株主がいる・・・進んでいるM&Aはどうなるでしようか。株主の問題が解決するまで待ってもらいますか?あるいはその株主を無視してしてM&Aを進めますか?

株主の問題の解決をいつ行えばいいのですか?と聞かれますが、これは早ければ早いほどいいです。不安があるのであればすぐにでも着手すべきです。1か月かからず解決できるかもしれないし、数年単位の話になるかはわかりません。だからこそ、早めに着手し、現在の経営のためだけではなく、未来の、後継者へ引き継ぐためにも株主の相談は早めに行いましょう。

※現在の株主名簿を見て想定されるリスクをお伝えしてすることもしております。誰が取締役であるかを気にするのと同様に株主も意識していきましょう。


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