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AIの弱点は友達がいないことである。

最近、AIの弱点を思いつきました。そう、AIには友達がいないんです。

※この記事は「本やポスターなどをつくる人」が「生成系AIが生成した画像を使用すること」と、「人間が描いた絵を使用すること」とを比較したときの話を書いています。

AIは「気をつかわなくて済む」

(絵を描く人や写真を撮る人ではなくて)絵を使用・利用する側の人、例えば本や雑誌の編集者であったり、ポスターやパンフレットを作る人から見ると、AIの長所は以下のようなものがあります。

・早い
絵を描いたり写真を撮るよりも早く大量に画像を提供してくれます。しかも同じお題で何枚も頼んでも怒られません。現状では「呪文」をうまく入力しないと期待した画像が出てこない(ので「呪文」を覚える手間がかかる)、という難点もありますが、これも技術の進歩に伴って解消される気がします(だってパソコンも文字で指示を入力していたのがマウス操作になったじゃないですか)

・安い
やり方にもよると思いますが、(自分でイラストを描ける人でなければ)人間に依頼してイラストを描いてもらったり写真を撮ってもらうよりは安く済むんじゃないかと思います

・気をつかわなくて済む
これが一番大きいと思います。人間相手だと急ぎでやってくれって言えなかったり、描き直しとか撮り直しをお願いしにくかったりします。特に発注側のリクエストをミスっていたり、指示が足りなかったりしたのが原因だとなおさらです。でもAI相手だったら気をつかう必要がありません。コマンドを追加してボタンをもう一度押せばいいんですから

・いつでも頼める
これも重要です。人間相手に「こんばんは!明日の朝までに絵を描いてください」なんて言えないですよね。もしくは人間だと「忙しいから新規依頼は受け付けていません」なんてこともあります(もちろんAIもサーバーが混んでいて動かない、とかもあるとは思いますが)

以上を踏まえると、以下のような場面でAIが生成した画像は活用できそうです。

  • 紙面レイアウト案を作りたいので、ダミー画像を大量に確保したい

  • あした出稿する原稿に予期しない空白が出来てしまったので、何とか挿絵で埋めたい

  • とにかくお金が無くてイラストや写真を外注する予算もない

と、ここで気づくのですが、こういうシチュエーションって今でも「いらすとや」さんとか「ぱくたそ」さんとか、そういうサイトを利用するっていう選択肢があるんですよね。もちろん既存の画像よりもAIで新しく生成した画像のほうが、より希望に沿ったテイストだったり構図になっていたりするので、使い勝手は良くなる、という違いはありますが。


AIには友達がいない

さて、ここで「AIではなくて敢えて人間に絵や写真を依頼するメリットは何か」ということを考えてみたいと思います。あくまでも、「本やポスターなどをつくる人」の立場に立った打算的な視点ですが

  • 「○○先生描き下ろしイラスト!」「コスプレイヤー○○撮り下ろし写真!」のように箔付けをしたい

  • 絵師さんに「表紙を描きました!」みたいにSNSで紹介してもらいたい

  • 被写体になってもらったコスプレイヤーさんにリアルイベントにも参加してもらう

  • 個人的にファンである

といったことが考えられます。要するに、本やポスターを完成させるだけならAIでもいいけど、その後の話題作りだったり販促だったりを考えると人間に頼むほうが良いのでは?という発想です。言い換えると、AIは人間的な繋がり、ツテ、もっと平たく言えば友達がいないのがAIの弱点かなと思います。まあAIが「表紙を描きました!」と宣伝してくれれば別ですが、TwitterなどがBotの運用に制限を課してきている流れを考えると、AIが宣伝をする、っていう線は厳しいかな、と思います。

※「じゃあAIに人格を持たせてAItuberがイラストを生成すれば良いのでは?」みたいな発想も出てきそうですが、生成した画像がたくさん使われるようになると「またAItuberが描いたイラストかよ」みたいな飽きに繋がって箔付けにならない気もします。このあたりはAIの長所(大量生産)とのトレードオフかもしれません。

※もしこれが「私が描いた10000枚の絵で鍛えた私オリジナルのAIです!」みたいにAIごとの個性付けが出来ればちょっと話は変わるかもしれない。まあでもそれもAIの「親」の人間関係とか知名度とかに乗っかることになるので、やっぱり人間に依存してますよね。

※「そもそも本の編集者もAIで淘汰されるのでは?」という意見もあるかと思いますが、そこは微妙なところです。「誌面をレイアウトする」とか「録音を文字起こしして規定の文字数に要約する」みたいな個々の作業はAIがやることになるかもですが、AIが作ったものから選ぶ作業、例えば「どのレイアウト案を採用するか」といった決断は、人間の意思、願望、欲求、欲望で行われるんじゃ無いかと思います。

※ただ逆に「絵は描けるけど本にする方法がわからん!」とか「文字は書けるけど絵も編集もさっぱりだ!」という人向けに編集者の代わりをやってくれるAIは登場するかもなと思います。要するに、それぞれのスキルに合わせて自分ができないところを手伝ってくれるAIが出てくるんじゃないかと。


こう考えてみると「表紙絵や挿絵を通して何を実現したいか」「この本やポスターにどのような想いを込めるのか」みたいなドロドロとした生々しい感情こそがAI全盛期を迎える人類には必要なのかも知れないですし、単に絵や文章を完成させるだけじゃない部分での利害一致、みたいなものが人間同士の協業を選ぶ同機になりそうに思います。箔付けだの知名度に便乗だの、なんだかちょっと下世話な話になってしまいましたが、優等生はAIに任せて、人間はアウトローに悪ぶって生きて行くのがいいのかもしれません。

一方で、何かあると炎上してしまうから大人しくするのが至上、みたいな雰囲気が今の世の中にはありますし、もしくは「再生数が稼げる動画のコツはコレ!」みたいなのが出回るとみんな同じ尺の動画ばかりを投稿してしまう、みたいに、目先の利益を求めすぎて人間が機械みたいになってしまっている場面も多い気がします。この世の中の雰囲気からAI全盛期に移行できるのか?みたいな感もあります。やっぱり人間側がAIに対応しきれていないのかもしれませんよね。


※ちなみに私は、同人誌の表紙を誰かに頼もうかなと思った場面が何度かありましたが、「出稿直前までページ割りを弄っている」=「本文全部を書き上げるまでテイストが決まらない」=「表紙の方向性が決まらない」という状況だったので、人に頼むわけにもいかず見送ってきました。こういう人であればAIの出番かなと思います(が、今後使うかは未定)。

※なお、このnoteの表紙は「友達がいない孤独なロボット」というお題でCanvaのAIに描いてもらいました。「それぞれのスキルに合わせて自分ができないところを手伝ってくれるAI」の実践例じゃないかなと思います

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