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コミケで出す新刊の本文を書きすぎたせいで、あとがきが収まらなくなったのでnoteに書く。

制作の裏話とかをお話しします。

まずはページ数のこと。

この一年くらい「わざわざ紙で本を作る意味」っていうのを考えていたんですよ。だって、今、Youtuberさんの動画とかVTuberさんの配信をタダで見られる時代ですよ。
一方、同人誌は印刷費が掛かるからタダにはしにくいけど、でも受け手にとってはYoutube見るのも同人誌読むのも同じエンタメじゃん、って。ヒカキン先輩の動画はタダで見れるんだぞ、っていうのを肝に銘じつつ、そのお代に見合うサティスファクションを提供するんだぞ、って思いながら制作しました。(いや、本は印刷費がかかるから払って頂いたお金って私の手元には入らないんですけども)

だから私は、そんな無料のエンタメが充実した世の中にもかかわらず、それでもビッグサイトに行くなり通販で取り寄せるなりしてでも同人誌が欲しい、って思ってくれる人に応えたいって思ったんです。

それで、一つの答えとして、「手にした時の、同人誌の重みを感じられる歓び」があるのかな、と思ったんですよね。

ちょうど、ナショナルの松下幸之助氏が「VHSはベータと違ってデッキを持ち帰ることが出来る重さなんや」って言ってた話(本当かどうか知らんけど)と逆になりますけども。VHSは軽いから持って帰れて嬉しい。同人誌は持って帰る時に重みを感じられるから嬉しい。じゃあ、うちは今回は薄くない本路線を突き詰めてやろう。「横須賀線・総武快速線」は、まさしくそれに耐えうる、重厚なテーマだったと思います。


でも、「横須賀線・総武快速線」というテーマを決めた時点で「2路線分だから2倍かなぁ」という覚悟はあったのですが、一方で闇雲にページ数を増やすのは止めようと思っていました。内容が薄くなっては意味がないから、ページ数を増やそうとして増やすんじゃなくて、必要があってページが増えたっていう状態にしよう、と。それで、「停まらない駅は取り上げない」というのと「他の路線は跨がない」というレギュレーションを適用することにしました。

まあ、京成だけは越えないと船橋駅前とか詰みになるので、これは例外にしました。あと、稲毛海岸は構成上どうしても入れなきゃいけなかったので、ここは海まで行ってます。なんで行ったのかは、本文をお楽しみに。

ウミー!!!

ただ、内容を検討していくと180ページくらいになるという見積もりが立ったので、180ページを基本にして、増えざるを得ない時は惜しみなく増やす、という方針で進めました。結果がご覧のとおりです。

あと、これだけのページ数になると印刷を受け付けてくれるのか、という問題が出てくるのですが、今回に関してはコミケで入場制限が掛かるという情報もあったので印刷部数を減らすことにしたんですね。そうすると、プリントパックさんのオフセットでは対応できなかった180ページというボリュームが、オンデマンドなら印刷できる、という話になりました。
こういった要素が絡んで、今回のボリュームになったという感じです。

あと、部数が減れば搬入も楽になりますからね。今作は、「どうせ人が来ないだろうから分厚くしてもいいや」っていう発想、コミケで入場制限が掛かることを逆手に取った本だともいえます。


ところで、120ページくらいの本はいくつか作ってきた弊サークルではありますが、このままのやり方では180ページは無理だと思っていました。

例えば、構成を考える段階ですが、いつも通り下書きをしていったら「どこのページで何を書いたか分からなくなる」「なぜか同じ内容を二度書く構成になってしまった」みたいなことが起きてきました。そこで今回はマインドマップを作ることにして、マインドマップ上で構成を練ってみました。

次にデザイン面について。従来はテーマごとに誌面のデザインを一つずつ考えていたのですが、今回扱うテーマの数はすごく多い。30超えてますね。
そうすると、デザインのネタ切れを起こしかねないわけです。
ならいっそ、デザインの種類を絞ってしまおう、ということをしてみました。むしろその方が、ページ数の多い今作の場合には文章に集中してもらえるのではないか、と。

ただ、マンネリを避ける必要はあるので、途中に別のデザインのページを挟んで変化を付けるようにしてみました。フラットっぽい感じとか。

ちなみに、この方法を使ったことで1ページ当たりに必要な文字量が統一されましたので、出先でWordで書いて家でデザインに落とし込む、という……、いや、日本の出版業界ではこっちのほうがむしろ主流の方法なんですが、これを採用できました。

それで、浮いた工数は別のところに掛けられるようになったので、今作ではイラストを結構描いてます。鉄道の本っていうと写真ありきで構成されることが多くて、同人誌作ってると「写真が無いから諦めるか…」ってなる場面も多かったのですが、今回は結構色々と幅が広がった気がします。先ほどのフラットぽいデザインみたいに、紙面のテイストも変化をつけることが出来ましたね。

他にも、紙で管理していた資料を全部電子化して、どこでも確認できるようにした、とか、今作ではワークフローの調整に取り組みました。おかげで、北海道で秋鮭を食べながら原稿を書くことが出来て、横須賀を大トリにしようっていうアイデアが浮かんだりしたので、よいワークフローが作れたんだと思います。


あと、今作では校正もデジタルで行うことにしました。テクニカルな話になりますが、InDesignの「レビュー用に共有」という機能を使いまして、これでiPadに原稿を飛ばして、iPadで原稿をチェックしていました。ちょっと使い勝手に工夫が必要だったんですが、そのあたりはまた改めて書きたいと思います。

こうやって送信すると
こういう画面になる


少し話が戻りますが、もう少しデザインのお話しを。今回は「出来る限り既刊から遠いデザインを模索する」ということを考えていました。例えば、2021年時点だと、

をポスターとかで見かけると思うんですが、これって、Instagramとかでの文字の入れ方がWeb広告に伝わって、さらに紙媒体にも広まったのかな、って思うんですけど、Twitterとか動画を見ている人には馴染みのあるデザインかなと思うんです。

それで、いまは鉄道雑誌よりもTwitterとか動画を見るっていう人が多い時代かな、って思うので、やっぱりそこに付いていきたいなと。それに、新しいデザインに挑戦するのって「今しか作れない本を作る」っていうことの一部だと思うので、そこは頑張りました。

コミケがない中でも鉄道の同人誌を作られている作家さんの作品を拝見していると、なかなかデザインが良いのを作られる方も増えてきたなぁ、と思いましたし、それもモチベーションになりましたね。


というわけで、制作の裏側も話題が尽きない今作。ぜひお手に取って頂ければと思います!


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