夫婦の会話の問題点
ある夫婦の会話。
妻「台湾に旅行に行きたいな。以前行ったことがあって、料理がおいしくてとても楽しかったから。」
夫「俺は海外は行かないよ。友達と行ってきたら?」
妻「なぜ?前に行った時にトラブルでもあったの?」
夫「海外に行ったことはないけど、海外は嫌だ。」
妻「どうして?」
夫「なんとなく嫌だから!」
妻「理由もないのに否定しないでよ!」
夫「別に行くななんて言ってない、友達と言ってくればいいじゃないか!」
この会話の問題点はどこにあるでしょうか。
この例を見ると、一見、妻の「台湾に行って楽しい思いをしたい」という主張と、夫の「海外に行きたくない」という主張が、ぶつかっているように見えますね。
ですが、夫は「友達と台湾に行ってくればいい」という代替案を出しているので、妻の主張が本当に「台湾に行って楽しい想いをしたい」という主張だけなのであれば、喧嘩にはならないはずです。
喧嘩になった原因を探るため、もう少し互いの感情を深堀してみましょう。
妻は「(夫と)台湾に行って楽しい思いをしたい」という主張。
更に深堀すると、「(以前台湾に行って楽しかったということを、夫にもわかってほしい)ので、(夫と)台湾に行って楽しい思いをしたい」という主張です。
これに対し夫は、妻の「台湾に行って楽しい思いをしたい」という部分だけをキャッチし、「友達と行けばいい」という代替案と、「俺は行きたくない」という主張を返しています。
「以前台湾に行って楽しかったことを(一緒に行くことで)夫にもわかってほしい」に対する回答が無く、また「行かない」という結論をいきなり突きつけられてしまった妻は「なぜか?」を問いただします。しかしこれは、夫の主張は「なんとなく海外に行きたくないから」です。妻が「なぜか?」を問いただすのをやめなかったのは、「なんとなく行きたくない」という主張だけでは、自分の思いが受け入れてもらえない理由が、十分に得られなかったからですね。
ここで、夫の方に目線を移しましょう。
夫は「なんとなく海外に行きたくない」と主張しています。
この「なんとなく」の本当の理由は、人によって様々でしょうが、例えば、「一度も海外に行った経験が無いので失敗するかもしれない、トラブルが起きたら妻を守れないかもしれない」という、男のプライドだったりするわけです。そしてそれを伝えるのは恥ずかしいので、「なんとなく」という言葉で伝えています。
男性に多いことですが、この「なんとなく」に込められた意味を、妻に「何も聞かずに、そのまま丸ごと受け入れてほしい」という気持ちがあるようです。そうすれば、海外経験が無い恥ずかしさも、不安で小さくなった自分の心も、見せずに済む。もちろん、台湾に行って、恐れていたことが現実になるリスクも避けられます。いわゆる「男のプライド」というものです。
これら、2つのぶつかる気持ち。
これをどうすれば、喧嘩にならなかったのか。
ここからは私の持論です。
私は、経済的にも世間的にも、「夫婦でいなければならない」時代は、そろそろ終わりを迎えると思っています。男女の仕事内容や給与はほぼ同じになり、男も家事子育てをするのが当たり前になりつつあります。周りを見渡せば離婚だらけ。1人で生きることに、抵抗がない時代になってきました。
そんな時代でも、夫婦は互いに、自分の意図を自分の言葉で相手に伝えず、「察してくれること」を、未だに相手に求めています。
昔の夫婦は、経済的理由や世間的な目を気にして、なるべく離婚を避けてきました。「俺は間違ってない!」とダンマリを決め込む夫と、「全く、いつもいつも…」とブツブツ文句を言う妻。その様子を見て育った子供は、コミュニケーションを取って解決する方法を親から学んでいません。
昔の夫婦のように、「自分の主張は、相手が察してくれるだろう」と決め込んで黙っていれば、どちらかが折れて我慢してくれる時代は終わりつつあるのに、コミュニケーションの方法を知らないから、自分らしさを保つために「離婚」という選択肢に行きつくのだと、私は考えています。
そんな時代でも、2人でいることの温かさを感じることを選んだなら、相手の気持ちを想像し、相手に自分の意思を伝えるコミュニケーションが必要になると思うのです。
それはどういうことか。
妻「台湾に旅行に行きたいな。以前行ったことがあって、料理がおいしくてとても楽しかったから。」
夫「そんなに楽しかったんだね。でも俺は海外に行ったことが無いから、行くならちょっと覚悟が必要かな。もしかしたら、俺はすぐには行けないかもしれないけど、君は友達と行ってきてもいいんだよ?」
妻「そう?だったら今回は友達と行ってこようかしら。家のこと頼んでしまってもいいの?」
夫「もちろんだよ、楽しんでおいで。帰ったら楽しかった話を聞かせて。そしたら俺も、もしかしたら行く勇気が湧くかもしれないからね。」
妻「そうね、いつかいっしょに行けたらいいわね。」
こんな会話ができたらいいですね。
全ての夫婦が、良きパートナーでありますように。
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