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オランダと英語とITと

新年最初の書き込みです。今年が良い年になりますように。

さて、前回、オランダでは英語の慣用句がぽんぽんでてくるようなCMをオランダでは皆わかるのかと疑問を持ちました。
調べてみました。


[オランダの教育]
まずはNufficという教育の国際化を目指すオランダの非営利団体のWebサイトからご紹介します。

オランダでは5歳から義務教育で、12歳までが初等教育です。4歳から通える学校があります。
バイリンガルの小学校も試験的に17校あって、そこでは4歳から1日のうち30%から40%で英語を使っています。

中等教育としては、職業訓練に重点を置くVMBO4年、上等中等教育HAVO5年、大学進学を目指すVMO6年に分かれます。
中等教育でもバイリンガルで教育する学校が増えているようで、そんな学校では科目の50%は英語を話し、生徒も授業中に英語で会話します。
卒業試験がオランダ語と制度として決められているので、カリキュラムの半分はオランダ語による教育です。バイリンガル校では、単に英語が喋れることではなく、国際的な視点が持てることが重視されるようです。

ここからはWikiPedeiaからご紹介すると、中等教育の年数に応じて16歳までが義務教育、18歳までが部分的義務教育で、卒業または年齢到達で終了になるようです。

高等教育では、職業志向の具体的に職業を想定して実践的な教育を受ける大学と、研究指向の大学に分かれます。上等中等教育の卒業証書があれば、職業系の大学に行けます。研究系のほうは大学進学を目指すVMOの卒業証書が必要です。中等教育で進路が完全に分かれてしまうのではなく、別のコースに通いなおすこともできるようです。
なお、オランダの2014年教育予算は 420億ドルだそうです。

このような数字の国際比較ができるものとして、Googleが世界銀行のデータをもとに、グラフ(GDP教育分野区公的支出総額同GDP比 等)が表示できるページを作っており、対比が良く分かります。
数字を書くと、2014年のオランダのGDPは8,796億ドルなのでGDP比なら4.7%. 同年の日本は、日本経済新聞経の記事によるとOECD統計ではGDP比3.2%でGDPが4.85兆ドルだそうなので、逆算すると1,552億ドルが教育予算ということになります。


[オランダでの英語]
Wikipediaの記事によると、英語は小学校高学年から教えられていて、高校は英語と国語で一定の点数がとれないと卒業できない模様です。
また、オランダ語で検索するよりはるかに多種多量の情報が得られるという理由で、学校でネット検索は英語するよう指導されるそうです。
国民の90%が自分は英語が喋れると思っていたり、アムステルダムなどは標識や広告が英語だけのところもある、さらにTVではBBC One、BBC Two、BBC World News、CNN、アルジャジーラの英語版など、英語の放送がされているなど、英語が非常に浸透しているようです。

なるほど、蘭英混在で、英語の意味・慣用句が分からないと味わえないCMが流せるはずです。

ちなみにこの記事によると、インターネット上のページの半分は英語のようです。英語がある程度できるのなら英語で検索するよう指導するのは自然といえます。


【雑感ー英語とIT】
プログラム言語は、英語がベースであり、命令、関数・API・クラス・型、構文そのものや概念の名づけなど、英語、英単語とその略・組み合わせの塊です。

委譲」と書いてあると、漢字圏では意味が分からないとしても何かを委ねることと察せられるように、英語話者はdeligation と書いているとどんなものか察せられる、ということになるのでしょうか。

有名なプログラミング言語Cの最初に出てくる例で例えます。
空想ですが、もしプログラム言語が日本語をベースとしていたら…

#使う機能は、標準入出力

主処理
 「やあ、世界\改行」を、形式指定文字出力。

もしこんなふうに書ければ、日本人ならだれでも雰囲気が分かります。
Cは英語ベースなのでこうです。

#include <stdio.h>

main( )
{
 printf("hello, world\n");
}

これくらい簡単な単語ならよいのですが、tupleやpowとなどなってくると、厳しくなる人は増えてきます。
暗記した知識ではない単語、感覚でわかる語かどうかの違いはじわじわ影響するのではないかと思います。実際、辞書を引かないと意味が分からないので、命令と機能を丸暗記したり、命令=どういう動作をする、というように本来の語の意味とは切り離して覚えることもしばしばあります。

また、規格や仕様やマニュアルの原典のほとんどが英語なので、英語ができるとそれが直接読めるのも利点です。


ところで日本にいる日本語話者としては、個人的に気になっていることの一つに、製品の新バージョンリリースと書籍出版のサイクルの乖離があります。

アジャイル、DevOpsが英米で浸透していっている現在、例えばWindows10は2年で4リリースすると謳われています。少し昔はメジャーリリースは4年ごと、リリースアップ(R2)は2年ごと、というようなペースだったので、関連の技術書を日本語に訳して出版して一定期間売れるだけの時間がありました。

自動翻訳は進化しているので、Webや電子書籍で読むだけなら不自由なくなるのでしょうが、紙書籍はたとえばこのGIGAZINEの記事にあるような、視覚以外の五感からのフィードバックによる優位性や、他の価値なりを保って存在できるのか、情報の古さによるデメリットが価値を上回るほどに開発とリリースが加速するのか。もしかしたら、Windows10のリリース計画の度重なる変更と現実にサポートしている多数のリリースに見られるように、ユーザがついていけるのか、メーカーがついてこさせられるのか、にかかっているのかもしれません。


【小ネタ】

この記事によると、英語話者が日本語を習熟するのは難しく、オランダ語は簡単なようです。具体的には、日本語の習熟に86週2200時間、一方オランダ語は24週600時間だそうです。
逆もしかりと考えると、オランダと同じことをしても、同じように英語を習熟できるとは安易には考えられなさそうです。

・ITの分野で、デザインパターンという、プログラムの設計をパターン化することでパターンの形で再利用しやすくする手法があります。
その発想の源流として有名な本に、1977年初版の「パターン・ランゲージ」があります。町・建物を構成する様々な要素がパターン化され、理論化されていますが、教育に関するものも18番目に"Network Of Learning" 「学習のネットワーク」として記述されています。
教育ではなく「学習」なのがポイントです。引用すると、

「教えることを前提にする社会では、(中略)大人でさえ(中略)自分で考えたり行動できなくなる。学ぶことを重視する社会になってはじめて、創造的で活動的な個人が育つ」

また、閉じた学校ではなく、町の中の様々な職業・年齢の人が教え教えられる、そのネットワークこそが新しい教育機関だとしています。

国家レベルでの英語の習熟には、教育制度を通じた底上げが寄与する部分は大いにあると思っていますが、上記引用からすると、創造性やダイバーシティが重要とされる昨今のDXやイノベーションも、教育から始めるべしということにもなるのかもしれません。


今回はここまで。
(2020/1/16)

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