ひとりのエルフが哀惜を知る旅路。『葬送のフリーレン』1巻感想

8月の個人的課題漫画『葬送のフリーレン』読了。『名無しは一体誰でしょう?』の山田先生原作最新作。淡々と進み、シュールなギャグがたまに挿入されるスタイルは健在。

ちなみに山田鐘人先生原作の前作『名無しは一体誰でしょう?』はこちら。本作の淡々とした雰囲気が好きなら買って損なし。但し…打ち切りです…面白かったのに…

あらすじ

勇者一行が魔王を倒したその後の物語。メンバーの一人であるエルフのフリーレンは、ある仲間の老衰死に対して悲しむことができず、その人となりを知ることを軽視していたことを思い知る。そんなフリーレンが人間を知るために旅をする物語が、『葬送のフリーレン』である。

漫画の特徴と感想

世界を俯瞰して旅するような物語は、『キノの旅』(時雨沢恵一著、電撃文庫)に似たところがある。そしてキノに対してエルメスがいる(ある?)ように、本作でも相棒ポジションのキャラクターが登場し、物語に別角度の視点(もしくは読者の視点)を持たせている。これにより主人公のフリーレンを客観的に見ることができ、人物とストーリーに奥行きを持たせている。

アベツカサ先生はコントラスト重視で、PCを活かした細部まで丁寧な作画。青年漫画でよく見る…といえばそうだが、このコントラストの効いた作画は本作にとても合っているように感じる。

フリーレンは人間との触れ合いを重要視してこなかったため、見る景色は主体的な感情よりも客観的な事実を優先すると考えられる。すると自然に、間をとったり効果で演出するようなシーンは減る。

しかし、だからこそ淡々と語られる物語の台詞ひとつひとつに表面的でない重みを感じることができる。冒頭にも書いたように、山田先生の作品の特徴の一つが『淡々と進む』ことなので、今回も相性の良い作画担当と組んだなと思う。

ストーリーの着想に変化球が増えてきた昨今、終わりから始まる物語というのはそこまで珍しい題材ではないかもしれない。しかし、本作は『結末予想はたてられるけど、そんなことより過程を追いたい』魅力に溢れている。上手い言い方が見つからないが…簡単に言えば「次巻も買います」。

そして願わくば打ち切りにならずに完結してくれ…!


※マンガ感想文というコンテスト?的なものを見つけたので参加してみます。趣旨違えてたら申し訳ない。重要なのは、このアクションによって『葬送のフリーレン』が売れること、それだけだ…!

※2021/03/20追記 マンガ大賞おめでとうございます!よし売れる!やった!

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