マーダーマンショー

 近未来のアメリカのとある州。この地域で放送されているケーブルテレビのある番組が人気を博している。その名は「マーダーマンショー」。未解決事件の関係者を集め、事件の真相について話し合ってもらうこの番組。事件の真相を知りたくて視聴者はテレビに釘付けになるのだが、過去には番組中に出演していた関係者の一人が殺人事件の犯人だったということが判明してしまう。そしてその犯人はその場でなぜ殺害に至ったのかを語りだした。殺害までの経緯は同情を買うには十分すぎるもので、その後に行われた陪審員裁判では無罪の判決が下された。こうした例はそれほど珍しいものではなく、何度か起こっている。犯人が真相を語ったことで被害者遺族と和解したケースもあった。
 この番組を語る上で忘れてはいけないのが、放送開始当時に州警察内部では大規模な汚職事件が発生していた。市民は警察に不信感を募らせ、警察官の人数は大幅に減ってしまった。その結果、州内で発生した事件への対応に人手が足りなくなってしまった。この問題をどうにかしようと政治家がこの番組に目をつけ、新たな州法を作成した。その州法は「マーダーマンショーに犯人が出演し、番組中犯人と指摘されなければ無罪」というとんでもないものだった。こんな州法が市民に受け入れられるわけがないという予想に反して、多くの市民はこの州法に賛同した。それだけこの番組が人々の話題の中心であったことがわかる。出演者が人気タレントとなったり、事件についての手記がベストセラーになったりと社会現象にまでなっていた。

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