看護
以上は、フロレンス・ナイチンゲールのいわゆる『看護覚え書』からの引用です。以下、私訳です。
観察と経験を除いては、病理学がネガティブであるところのポジティブなものとしての健康の原理を私たちは何も知らない。そして観察と経験だけが私たちに健康な状態を維持させたり、そこに復帰させる方法を教えるだろう。しばしば内科的治療が治癒の過程であると考えられている。そのようなことはないのだ。
以上のようにナイチンゲールは医学が司るところの内科的治療を病気を癒す直接の過程とは見なしていませんでした。彼女によれば、「観察」と「経験」それらだけがポジティブなものとしての「健康の原理」足りえるものなのです。
内科的治療や外科的治療のようないわゆる「医学」は治癒の過程を妨げているネガティブな「障害」を除去することはできます。しかし、医学が患者を治すわけではありません。では、何が病を癒すのでしょうか? ナイチンゲールは次のように主張しています。
以下、上記の引用文の私訳です。
ただ自然だけが癒す。
以上の文章からナイチンゲールは治癒における「自然」の働きを重要視していたことが分かります。彼女は看護のポイントを、こうした自然による治癒の働きがよく機能するような「環境」を患者に供与することだとしています。そのために使用される健康の原理は先述の通り、観察と経験です。
医学ができるのは治癒の妨げになっているネガティブな障害を取り除くことだけですが、看護には患者のおかれた環境の調整によって自然の作用による治癒の働きを促進するというポジティブな役割があります。そこには医学に対する看護学の優位性が認められます。
医学もそれはそれですごい達成ではありますが、それに対して看護学が劣っているということはまったくありません。
すべての看護師、白衣の天使たちがその職務を無理なく全うできますように。祈ります。