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読了:原田マハ「#9(ナンバーナイン)」

久しぶりの読書で、ページを捲る手が止まらなくなる幸せな読書体験をしました。

東京でインテリア・アートの販売員をするOL、真紅。仕事に挫折し、母親の待つ故郷に帰るべきではないかと悩んでいたある日。ふと立ち寄った宝石店で出会った見知らぬ中国人紳士に運命的な恋をする。真紅は「また会いたい」という一心で、紳士に渡された電話番号を頼りに上海に渡る。まるで見えない糸に導かれるように再会する二人。未来は、幸せなものかと思われたがーー。上海を舞台に繰り広げられる大人の恋愛物語。

裏表紙のあらすじより

原田マハさんの作品はどれも大好きで、これまで何冊か読んできました。文章に癖のない、言葉が自然に頭の中に入ってくる読みやすい文章なのもあって、次々と読み進められます。
特徴的なのは、原田さんの作品のほとんどで登場してくる数々のアートが作中で存在感を出していること。「#9(ナンバーナイン)」の作中では中国を中心に、作者の的確な表現力で生き生きと描かれていて、アートこそが影の主人公ともいえる存在です。これは、キュレーターとしてのキャリアを歩んでこられた原田さんだからこそ描ける、アートたちへの敬意と愛の表れだとも感じます。

真紅が運命的な出会いをする中国人紳士の導きから、アートと共に女性としても洗練されていくシンデレラストーリーの展開は王道の恋愛小説のようで読んでいてとても心地よいものです。そこに絡めて、高みへ昇っていくキャリアとともに忍び寄る不穏な空気、そしてすべてを手放していく急展開にページを捲る手が止められませんでした。

本を読む習慣を再開しようと思ったキッカケは、仕事の休憩時間が手持ち無沙汰になってしまうことからでした。1時間の休憩時間は、意外と長い(と思ってしまう私は社畜なのだろうか)。ご飯を食べた後の15〜20分の休憩時間に、眠ること以外で脳を休ませる何かはないだろうかと考え、読書習慣という答えに辿り着きました。どうやら読書はストレスの解消に大いに役立つようなので(たまたま見つけたサイトにそう書いてあった)、うってつけの時間の過ごし方でした。

女性が主人公ということと恋愛小説ということもあり、向き不向きでいえば女性向きの一作かもしれません。作品の大部分で一人称は真紅の「私」で進みます。
私自身も真紅と近い年代の女性ということもあり、生き方に憧れながら久しぶりの読書時間に没頭することができました。原田マハさんの作品が好きという方には、特にお薦めしたい一作です(他にもオススメはたくさんあります!)。

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