ワールドカップアジア最終予選 第6節オマーンvs日本 レビュー

みなさんこんにちは、今回はワールドカップアジア最終予選オマーンvs日本の分析をします。

この試合は81分に何とか先制点を取り0-1で勝つことができました。そして、他会場の結果によってオーストラリアを勝ち点で上回りワールドカップに出場できるグループ2位に浮上しました。

アウェイで勝ち点3を取れたこと、ホームでの敗戦のリベンジができたことを考えると充分な結果と思われる方がいるかもしれません。しかし私はもっと優位に試合を運べたと思います。

今回は前半決定機がなかった原因となるビルドアップの問題点と後半日本の攻撃を牽引した三笘について取り上げて書いていきたいと思います。

スタメン

画像2

まずは今節の両チームのスタメンです。オマーンは日本でのホーム戦と同じ4312で臨んできました。

日本もオーストラリア戦から採用している4123で、出場停止の守田の代わりに柴崎が入りました。あとは前節からの変更はありません。

オマーン守備の特徴

それでは前半のビルドアップの問題点について説明します。

日本のビルドアップとそれに対するオマーンの守備は下図の通りです。

画像2

日本はオーストラリア戦以降からの5レーンを取れる配置をとります。

オマーンは日本の逆三角形の中盤3枚に2枚のIHとトップ下でマンツーマンでマークして対応。そして2トップが日本2CBの前に立ちタテパスを通させないようにしていました。このようにオマーンは日本の5レーン攻撃を潰しに来ました。

このようなオマーンの守備に対して日本のビルドアップはどうしてもCBからサイドしかパスコースがありません。なのでCBからSBへパスがでることが多くかったです。

CBからSBへパスが出るとオマーンはIHを出して対応していました。そしてIHがマークしていたライン間の選手にはアンカーのアルサーディが対応することになっていました。それが下図です。

画像3

オマーンはこの守備を左右同じように行うことで日本の前進を止めていました。

ビルドアップのスタートはタテを消され外へ展開することを余儀なくされ、外へ出しても守備ブロックがスライドして中へのパスコースと人を捕まえられ結局バックパスをするということになり、日本は前半オマーン守備ブロックの外側をボール回ししている時間が増えました。

しかしこの守備には弱点となり得る構造があります。それはアンカーとボールと逆サイドのIHの間にスペース(上図の堕円)ができるということです。時間が経てばIHが絞ってきたり、トップ下が少し下がりスペースを消すようにすることがありますが、スライドした直後にはスペースがありました。

日本の選手としては、このような敵がスライドしてできたスペースにサイドからライン間へナナメのパスなどを入れたいところですが、諸条件によってそれを狙えませんでした。

諸条件の1つ目は敵の布陣です。オマーンは守備時にも2トップとトップ下を前線に残します。これはカウンター時の破壊力を高めるためだと思いますが、それを気にした日本の選手たちがボールを失うリスクがあるライン間へパスを出すことを躊躇していたと思います。

2つ目は日本のIHの立ち位置です。アンカーがスライドしたときにIHが敵IHよりも内側に居れば、ライン間へパスを通せたと思います。とくに右IHの柴崎はボールが逆サイドにあるときにライン間から出て、敵IHの外側や視野の中に居ました。もし敵の内側に居れば下図のような展開が作れたかもしれません。

画像4

敵IHに対して2対1を作る感じです。

この逆サイドIHの動きに敵IHが対応して中に絞ってきたとしてもライン間は使えませんが、外の伊東へ一気に展開すれば伊東とアルブサイディの完全に1対1になります。そこに山根が上がれば2対1ができより突破の可能性も高まります。

守備ブロックに穴をあける

このオマーンの中央を固める守備に日本はどう対応すべきだったのか。

それは敵の中盤(IH)を引き出すことをすべきでした。

これを行うにはまず、敵2トップの脇をドライブできる構造を作ることが必要になります。つまりビルドアップのスタートで3対2をつくるということです。

この試合では田中が下がって3対2ができていましたが長友がファジーな位置に入らず低い位置でボールを受け、敵IHに対応されていました。そして右サイドは吉田が2トップの脇でボールを受けれておらず、山根が伊東とレーンが被っていることが多かったです。

画像8

上図は吉田の受ける位置がFWと被っているためドライブできません。

画像9

このように外にズレて受ければドライブできます。

画像10

上図は山根と伊東のレーン被りです。レーンが被ることで山根のボールを前進させる選択肢が、SBに狙われている伊東かほとんどコースがなく難易度が高い柴崎という選択肢しかなくなります。

画像11

上図のように伊東が外、山根が内というようにすれば問題は起きません。

山根が入ることで敵IHが山根に対応するために少し中に入り、吉田から伊東へはよりパスを通しやすくなります。

(伊東・山根それぞれ内と外どちらでもいいが伊東が外でプレーした方が活きると思うのでこの構造が適していると思う)


2トップの脇をドライブすることで下図のような効果があります。

画像5

まずは敵中盤を引き出すことができます。また、そこからSBへパスを出すことで敵のSBも引き出すことができます。

この敵の中盤を引き出すことでファジーゾーンが広がります。守備ブロックがコンパクトであまりファジーゾーンが無くされた場合にも中盤を引き出せばスペースを作れます。

画像6

そしてSBを引き出すことでSBとCB間のスペースを広げ、そこをライン間の選手が流れて使うことができます。

2トップ脇をドライブするだけで敵陣深い位置まで進入できる回数が劇的に増え、副次的にチャンスももっと増えたと思います。

ついに三笘登場

後半開始と同時に柴崎に代わって三笘が投入され、南野が右IH、三笘は左WGに入りました。

そして日本は攻撃時は4123と前半と同じですが、守備時は南野がトップ下のようになり4231の布陣に代えました。

三笘の出場はみなさんにも待ちわびた選手の投入だったのではないでしょうか。

三笘が入った後半からの攻撃時の配置が下図です。

画像7

SBが低い位置、外にWGそしてライン間にはIHが入るようになりました。この配置は前半の30分ころからやり始めていましたが、それほど変化はありませんでした。

しかし後半から南野よりもドリブラーである三笘が外に張ることでサイドから突破口ができました。

そして何よりも注目すべきは三笘の立ち位置です。サイドでボールを受けたときは、ほとんどファジーゾーンで敵SBと1対1ができる状況を作っていました。仮に1対2を作られてもキレのあるドリブルで敵を翻弄していました。

また日本の左SBが下がりめになったことが原因でオマーンがSBとIHでサイドで2対1で守備ができなくなりました。

前述しましたが、日本のSBへ対応するのはオマーンのIHです。低い位置でもボールをSBが受ければIHが出ます。IHが出ることで三笘はSBとの1対1に専念できる状況が多くありました。

画像12

なぜこのような変化が起きたかわかりませんが、効果的な配置の変化でした。

長友か中山か

そして中山が投入されます。このSBが低い位置でビルドアップに関与する場合は長友よりも中山の方が適しています。

なぜなら、選手としての特徴が違うからです。長友は攻守両面に貢献できるSBで両足のクロスの精度が売りで典型的なSBです。

しかし、中山はもともとCBやボランチをやっていたところSBへコンバートされた選手です。したがって長友のようにサイドをアップダウンするよりも、安定した配給力が求められる下がり目の位置でビルドアップに関与していた方が良さが出ます。

つまり「○○がいい!」という単純な比較ではなく、左SBにどのような役割を求めるかで起用する選手も変えればいいということです。したがって、今節の前半のようなSBに幅をとらせる戦術ならば長友、後半のようにWGに幅をとらせてSBは下がった位置でという戦術ならば中山の方が適しているということです。

長友に後半からの役割を担わせることは不可能ではないですが、彼の能力を考えるともったいないと思ってしまいました。

まとめ

今回はオマーンとのアウェイ戦を振り返りました。

今節の勝ち点3以外で一番の収穫はやはり三笘の活躍です。

この活躍により森保監督に三笘をスタメンで使わざる負えない状況を作ることができました。年明けも三笘の状態が良ければ間違いなくスタメンだと思いますし(南野状態も良ければわかりませんが)、久保も負傷から復帰しているはずです。

この2人が右と左にいる試合は想像するだけでもとても楽しみです。そしてチームとしての明確なやり方が無くても日本代表に勝利をもたらしてくれる気がします。


最後までお付き合いいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?