かわいい猫

かわいいのね あなたは
真っ黒の毛並みがつやりとひかる
小さいのね あなたは
ふかふかした足と湿った鼻
結構喋るのね あなたは
撫でられたくって身体を寄せる

あなたと暮らす為に
あなたの自由を奪わねばならない
あなたが持つ権利と引き換えに
わたしはあなたを
人の考えうる限りではあるが
あなたがなるべく幸せに過ごせるように
尽力するよ

賢いのね あなたは
おもちゃの紐を咥えて投げる
馬鹿なのね あなたは
すぐ私を見失う
寂しいのね あなたは
愛を貪欲に求めて叫ぶ
カーテンの裏から覗けば
怒ったように擦り寄って
喉からぐるぐる 音を奏でる

あの大きな国道の真ん中で
随分痩せた猫を拾い上げた時
私の孤独の一部は埋まり
猫の孤独の一部が埋まった
互いの孤独の全ては永遠に埋まらず
埋まった一部も必ず干上がる

いつかまでは埋め合おう猫よ
いつかまでは埋め合おう人よ

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