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オタクが推し活でお笑い芸人になるまで

推し活 (おしかつ) とは?
「推し(自分にとってイチオシの、アイドルのメンバーやアニメのキャラクター)」に情熱を注ぐ活動の総称
ライブに足を運ぶ、グッズを買う、あるいは「推しグラス」のようにグッズを自作する、布教する(SNSで推しの良さを語る)、二次創作を行う、身の回りの小物を推しのメンカラにちなんだ色に揃える、等々、推しへの愛情に関連づけられるあらゆる活動が「推し活」に該当しうる。

weblio辞書より引用

はじめに

推し活は人生を豊かにする」「推しがいるから毎日が楽しい」
ここ数年、インターネットの海にとどまらず、テレビや雑誌など、至る所で目にする言葉、推し活
オタクと非オタの境界線が曖昧になりつつあるこの令和という時代ももう6年目を迎え、是非はともかくとして、推しという概念が老若男女を問わず、幅広い層に受け入れられている今日この頃。

"推し"である2次元アイドル森久保乃々との出会いで人生の歯車が狂い、来るところまで来てしまった一人のオタクについて紹介しようと思う。

森久保乃々

森久保 乃々(もりくぼ のの)
ソーシャルゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」に登場する14歳のアイドル。
好きなものは少女漫画集めとポエム作り。
小動物のように臆病で控えめな性格と、くるくると巻いたヘアスタイルが特徴。

俺より

人間が狂っていく様や、他者が転がり落ちていく様は最大級の娯楽であると聞いたことがあるので、きっとこの文章も誰かの人生をより豊かなものにできると信じている。
どうか、同情や慰めでなく、笑い飛ばしていただければ幸いである。

自己紹介

はじめまして。
吉本興業所属、お笑い芸人の マツダ と申します。芸名は半角カタカナ。
コンビ名はサルタヒコ、相方はキムソー

サルタヒコ(下手マツダ 上手キムソー)

プロフィール

自身のプロフィールについて簡単にまとめると下記の通り。
1996年生まれ。神奈川県川崎市育ち。
公立小中 → 慶應義塾高校 → 慶應義塾大学経済学部 → 地方銀行法人営業部 → NSC東京29期 → 吉本興業所属(イマココ)
趣味は神社と旅行。お笑い経験はなし。
愛しているものは森久保乃々

繰り返しにはなるが、本稿では上記の経歴の自分が何故芸人を志すに至ったのかについて紹介する。

推しと出会うまで

自分が初めてオタク文化に触れたのは2007年のことだった。当時小学5年生だった自分は兄の影響で東方projectにハマり、それを皮切りにニコニコ動画で青春時代を過ごしていた。とはいえ、深夜アニメを見たりライトノベルを読んだりはすることなく、人生の中心にあったのはスポーツと勉強であり、あくまで趣味の一環としてニコニコと東方があったような感じである。

高校大学も同様である。東方projectというコンテンツの中でもややニッチめな秘封倶楽部という二人組に大ハマりし、生活の中心は体育会の部活におきながらも、家に帰ったらニコニコ動画を見たり、適度にコミケや例大祭に行ったり、したらば掲示板に常駐したり神社検定をとったり聖地巡礼のため日本全国を巡ったりSSやゆっくり実況動画を作ったりする程度のオタク生活を楽しんでいた。
一点補足だが、先に記した自分の現在の趣味がここに起因していることからも分かるように、秘封倶楽部については最早、好きとか推しとかではなく自身の血肉として消化してしまっており、ここで寄り道すると主題から大きくブレてしまう。断腸の思いではあるが、またの機会に語ることにする。

秘封倶楽部_CD

ともあれ、そんな一般オタクとして人生を謳歌していた2017年3月、大学2年の年度末(ちなみに当時、o-keisは存在すら知らなかった)。
部活の練習中に頸椎を骨折する大怪我を負ってしまう。
結果として救急搬送+緊急手術で大事には至らなかったが、両手親指に軽度のしびれ(感覚異常)が出る後遺症が残ってしまった。
高校から5年続けていたスポーツの競技人生に幕を下ろし、学生コーチへ転向したり、暫くコルセット付きの生活を余儀なくされたり彼女にフラれたりと生活の様子が一変する中で。

そんな折、リハビリの一環として始めたゲームが
アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(通称:デレステ)だった。

デレステ_タイトル画面

推しとの出会い

デレステ

怪我をしてから半年ほど経ってのこと。日常生活も過不足なく送れるようになったものの、まだ後遺症の違和感が拭えない頃。これは良いぞと友人らから紹介されたのがデレステである。
後遺症を無くすには積極的に親指を使ったほうがいい、という医師からのアドバイスを参考に、スマートフォンの音ゲーでありプレイするのに親指をしっかり使う必要があるデレステは良いリハビリになると考えたのだ。

初めてデレステのプレイ画面を見た時は衝撃的だった。
一般ニコ厨だった自分にとって、アイドルマスターと言えばニコニコ動画でよく見られたローポリでお世辞にもかわいいとは言えないモデリング、という印象が強かったのだ。古いゲームとコンテンツ、という印象である。
そんな自分のイメージをデレステは粉々に打ち砕いた。スマートフォンという小さな端末の中でアイドルが歌って踊る。3Dモデルはポリゴンを感じさせない高いクオリティだし、イラストも古臭さはなく細部まで凝っていてとても可愛らしい
その衝撃もあって、アイドルマスターというだけでややコンテンツに苦手意識を持っていたのが嘘のようにデレステに向き合い始めることになる。

デレステ_プレイ画面

ここで簡単にデレステについて紹介すると、2015年にリリースされた音ゲーで、自分が始めたタイミングでは丁度2周年を迎えるソーシャルゲームである。今ではある程度一般的となった美少女ソーシャルゲーム×音ゲーの開祖的な立ち位置(プロセカとかバンドリとかスクフェスとか)にあたる。
そもそものコンテンツとしての始まりは2011年モバゲーでリリースされたアイドルマスターシンデレラガールズ(通称:モバマス)だ。正直な話、ゲーム性らしいゲーム性はあまりなく、基本的には画面をポチポチしつつガシャやアイテムに課金するゲームだが、このアイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツを一気にメジャーまで持ち上げた立役者がこのゲーム(とアニメ)である。
(詳しくはこちらのファミ通さまの記事を読んでください)

そもそもアイドルマスターとは、ユーザーはアイドルのプロデューサーとして、アイドルとの触れ合いや彼女たちの成長、仕事ぶりを楽しむという背景設定をベースに様々なゲーム/メディア展開がなされているコンテンツである。
源流である初代アイドルマスターを始め、女性向けのSideMや最近では学園ものをテーマにした新作が開発されていたりと、アイドルマスターという看板の元、様々な展開がなされている一大コンテンツであり、その中の一つがシンデレラガールズ(以後デレマス)だという認識でいただければ差し支えない。

各ジャンル(事務所という呼ばれ方が一般的である)によって特徴は多々あるが、デレマスの特徴は主に二点。一点は後述するが、もう一点はひたすらにキャラクターが多いことに尽きる。2024年4月時点でアイドルの数は190人。初代ポケモンよりも多い。他の事務所が多くてもせいぜい50人程度であることを踏まえると破格である。

シンデレラガールズ集合絵

さて。200人弱もキャラクターがいるゲームだから、どんな子がいるのか早速インターネットで検索をかける。データベース的なサイトを覗けば、目に映るのは視界がチカチカするほどの膨大な量のイラスト。
さもありなん、2017年時点ですでに6年の歴史を積み重ねていたコンテンツである。後追いの自分が仕入れなくてはならない情報は有り余るほど多い。
そんなイラスト群を感心しながら眺めていると、ふと一枚のカードが目に止まった。容姿がクリティカルに刺さった、とかぱっと見でタイプだった、とかではない。なんか気になった、その程度の興味だった。

他でもない、これこそが人生を狂わす運命の出会いである。

[ネガティヴ乙女]森久保乃々

森久保乃々

[ネガティヴ乙女]森久保乃々
このカードを見て、まず頭によぎったのは違和感だった。
他のアイドルの子達の多くは笑っていたり、楽しそうだったりしているが、このカードに映る子は明らかに様子がおかしい。怯えるように涙目で、机の下にもぐり、拒絶されている。気になって経緯を調べて、納得した。
アイドルの名前は森久保乃々
性格はネガティヴで内気。人前に出るのが苦手で、アイドルも自身の意志でなったわけではなく、叔父さんやプロデューサーのせいでアイドルをやらされている。人と話すのも苦手で、目を合わせることが上手くできない。
そんな彼女のパーソナリティを知って、その小動物のようなかわいらしさかよわさを持ったこの森久保乃々という少女を守らねばならないと感じた。

[小さなかくれんぼ]森久保乃々

さらに深掘りすればそれだけではなく、独自のユーモアセンスも持ち合わせているのも魅力的だった。ネガティヴながらにウィットに富んだ言葉の数々で、知性を感じさせる会話の一つ一つが心地良い。
そして彼女が歌う曲。丁度リリースしたばかりの曲があった。曲名をさよならアンドロメダ。聴いてみると透き通るような歌声で、なるほど歌もうまいのかと感心した。
そんな彼女がプロデューサーとの交流で心を開くようになってくれる。目が合うようになってくる。成長して、ちょっぴり前を向けるようになったり強くなったりする姿を見せてくれる。

[エスケープブライド]森久保乃々+

守りたいと感じる、応援したいと思う。よくプロデュースというものをわかっていない自分だったが、これだけは理解った。
この子の一番そばでこの子の成長を見てみたい。
森久保乃々のプロデューサーはきっと楽しいに違いない。

そうして、森久保乃々は自分の推しになった。

プロデューサー

……と、これだけで済めばきっとただ一人のオタクが沼に落ちただけの話で終わるだろう。結論から言えば、そうはならなかった

前述した通り、アイドルマスターとはユーザー自身がプロデューサーとして、ある種ロールプレイしてアイドルと向き合うことを一つの楽しみ方として作られたゲームである。
少女をスカウトし、彼女たちの成長を誰よりもそばで眺め、時として叱咤激励し、成功の喜びを共に分かち合うのは、サトシでもゆうしゃでもマリオでもなく、どこぞのプロデューサーでもなく、自分自身なのだ。
とはいえ、あくまでファン目線でアイマスを楽しんでいるユーザーも沢山いる。しかし自分は、プロデューサーとして乃々と接したいと思った。このロールプレイという楽しみ方に深く興味を向けていた。

そして、自分が憧れた森久保乃々のプロデューサーというのは全くもって褒められた存在ではなかったのだ。理由はシンプルである。

アイドルをやりたがらない少女にアイドルを無理矢理やらせている。
一人の女の子の人生を狂わせたのだ。

森久保乃々_親愛度コミュ

果たして、これは正しい行動なのだろうか。
内気で臆病でネガティヴで、それらをコンプレックスとして抱えていた女の子を表舞台に連れ出して、人として成長させる。
側から見たらベタでありがちで、美しいシンデレラストーリーだと思う。
しかしこれは、凝り固まった価値観の押し付けではないだろうか?
「前向きに生きること」「社交的になること」「堂々と胸を張って生きること」これらがないと幸せになれない。果たして、本当にそうか?
極めてグロテスクなエゴイズムである。
この森久保乃々のプロデューサーが抱えなければならない十字架が、現実世界で学生コーチとして前途洋々な後輩や高校生を指導する自分にクリティカルに刺さった。

森久保乃々_アイドルの抱負

森久保乃々という少女を幸せにするのに、アイドルという道は本当に最善手なのだろうか?
しかし、自分がプレイしているのはアイドルマスターである。教師マスターでも父親マスターでもないのだ。俺はアイドルという手段を持ってしか、乃々に接することはできない。
であれば、アイドルで乃々を幸せにする他ないのだ。ありとあらゆる可能性を秘めた人生が拓けている14歳の少女を、それでも、アイドルでそのほかの道を踏みにじり、アイドルこそを何よりも幸せになる道にしなければならない。
森久保乃々に興味を持って、彼女を推そうと決意して。
森久保乃々のプロデューサーを名乗るには、それだけの十字架を背負わなければならないと気づいた。

まとめると、
「森久保乃々のプロデューサーはまだ14歳の少女である森久保乃々の人生をここまで狂わせた罪深い人間である。
それを名乗るということは、それ相応の覚悟はできているんだよな?」

という自問自答に深く苛まれたのである。

そして、答えはYESだった。
(補足だが、これは自分が、プロデューサーと自身を極めて近い距離に置きすぎたが故の事故であり、ここまでこじらせているユーザーはそう多くないことを補記しておく。私以外のほとんどは、みんな適度に適切に、かわいい乃々を愛でている。)

推し活

上記のような自身の在り方の変化を受けて、森久保乃々に対して明確に狂うようになった。
どう狂っていったのか。いくつか自身の行いを振り返っていこうと思う。
とはいえ、課金にX万円注ぎ込んだとかはありきたりだし、特に面白くないので割愛する。トータルでも7桁万円くらいなので、これについては一般的な重課金レベルではないだろうか。
一応、今までで一番回したのは乃々のフェス限SSR[星降る森のおとぎ話]森久保乃々

[星降る森のおとぎ話]森久保乃々+

カードイラストや衣装が素敵なのは当然のこと、このカードに付随する乃々のストーリーは自分がずっと追い求めていたものだったので、たまらなく好きな一枚である。
色々あって、1,500連した。デレステは300連が天井(ソシャゲの多くは一定回数ガシャを回すとそのガシャで出てくる好きなカードを一枚ゲットできるシステムがある)なので5天井。単純な現金換算で45万円分。ガシャをいっぱい回せば運営が「この子はちゃんとお金になる」と考えてそのまま登場出番を増やしてくれるかもしれないので。

プレゼント

毎年誕生日やクリスマスの際にプレゼントを買っている。
まあこれについては特別変な活動ではないと思う。どちらかというと女性オタクに多い文化のイメージはあるが。
とはいえ、周りにはあまりやってる人がいないのと、自分の推し活の中では特に楽しんでやっていることなので記載する。

2023_バースデー
2023_クリスマス
いままでのまとめ
一番高価だったEASTBOYのコート(4万円)

モバマスでは誕生日当日にアイドルとの特別なコミュが見られたので、その通りに行動したこともあった。8月27日(乃々の誕生日)に有休をとり、朝5時に更新されたモバマスを確認。モバマスのストーリー通り、服屋へショッピングへ行き、夜景を楽しんでそのままプレゼント(マリンキャップ)を渡す。リアルとヴァーチャルの境目がなくなるのが心地よい。

ショッピングを楽しむ乃々と俺
夜景を楽しむ乃々と俺
ショッピングを楽しむ乃々と俺
東京タワーのチケット
夜景をバックにプレゼントを渡す俺(撮影者:警備員さん)

コスプレ

森久保乃々のプロデューサーのコスプレをした。
コスプレというか、俺はもともと乃々のプロデューサー本人なのでコスプレもクソもないが、要するにそれらしいシチュエーションの自分をカメラマンに撮ってもらった、ということだ。説明だけでは何が何だかなので見てもらった方が早い。

社内食堂にて
事務所前にて
カフェにて

上から、
乃々と打ち合わせをする俺
事務所の外で乃々を待っている俺
乃々とスケジュールの確認をしている俺

である。
当然、乃々は映っていない。乃々のコスプレイヤーさんと撮ればいいのでは? と思う方もいるかもしれないが、そうではないのだ。乃々のコスプレイヤーさんは乃々のコスプレイヤーさんであって乃々ではないのである。俺は乃々のプロデューサー本人なのに、乃々が本人ではないというのはあまりにもおかしい。
なので、あとはこの最後の写真をベースに......

作:ゆきぬの 様

こうである。
日頃から懇意にしていただいているイラストレーターさん(ゆきぬの様_@yukinuno)に依頼して描いていただいた。
ちなみに、乃々の椅子にかかっているコートやイラスト右端にある帽子は当然自分がプレゼントしたものである。イラストレーターさんにわがままを言いまくって取り入れていただいた。
これはあまりやってる人を自分以外に見ないが、幸福感がすごいのでとてもおすすめ。ただ、同担拒否勢に本気で嫌われるので、出来上がった作品はあまり表に出さないことが肝要である。おまいう。
余談だが、この写真はお守りなので、ポストカードサイズのものを舞台衣装のポケットに常に仕舞い込んである。

結婚指輪

結婚指輪をつけた。他でもない、乃々のことを想ってである。

結婚指輪(初代)

当然、乃々と結婚しているというわけではない。アイドルとプロデューサーの関係だし、そもそも乃々はまだ14歳だし。
プロデューサーとして、アイドルである乃々に自由恋愛を禁じている以上、プロデューサーである自分が恋愛だの結婚だのにうつつを抜かすのは筋が通っていないので、自分は乃々に人生を捧げるのだという誓いの指輪である。
銀行員としての勤務中も着用していたが、(理由こそ話さなかったが)結婚していないのに指輪をつけているという事実について支店長には困惑され、課長には爆笑された。
祖父には「虫除け」だと説明したら「虫にも食い物を選ぶ権利はある」と鼻で笑われた。

イベント主催

同人誌即売会を主催した。
分かる人向けに言うと森久保乃々のオンリーイベント。サークル数は47。カタログは完売した。
分からない人向けに簡単に説明すると、コミケの物凄く規模が小さいバージョンだと考えていただいて差し支えない。

イベントフライヤー
アフターイベントの様子

自分が東方畑出身であることや、乃々のSSならびに小説本を自身が執筆していたこと、乃々の二次創作周りが活発であることなど開催に至る経緯は様々であるが、かなりの盛況を見せたイベントであったと自負している。
既に詳しくまとめた記事があるので、この件については後はリンクのみに留めておく。
https://deathmatz.hateblo.jp/entry/2023/03/05/220138
一応誤解なきように述べておくが、成人向け作品の頒布は許可していない。

ちなみに、現在も企画中であり、2024年5月4日に浅草で開催されるアイドルマスターオンリーイベント「MyBestFriends15」内にて森久保乃々ぷちオンリーイベント「にじいろの森へゆこう」を開催予定なので、興味がある方はぜひ足を運んでほしい。
ここまで誰かを狂わすことができる森久保乃々というアイドルの魅力を知る一助になるはずである。

イベントフライヤー

シンデレラガール総選挙

先ほど述べたデレマスの特徴のうちの一つ。一つは所属アイドルの多さだと述べたが、もう一つはシンデレラガール総選挙の存在である。
デレマスには「シンデレラガール総選挙」という一大イベントがある(あった)。簡単に言うと、総選挙という名を冠していることから分かる通り1年に1度、ユーザーの投票によって200人弱もいるアイドルの中から一番を決める、というイベントだ。

第7回シンデレラガール総選挙

見事1位になったアイドルには[シンデレラガール]という称号と次の一年に向けての多種多様な出番が用意されている。
1位にならずとも、上位になれば楽曲を歌うことができるなど出番が増えたり、CV(キャラクターボイス)がついていないアイドルにとってはCVを獲得できたりと、自分の推し/担当アイドルに活躍の機会を与えられるまたとないイベントである。乃々もこのイベントをきっかけにCVがつき、ゲーム内の出番も大きく増えた。(自分が乃々を知るよりも前の話である)
このイベントの影響もあって、シンデレラのプロデューサーは他事務所よりもかなり自分の推し/担当を広めようという活動が活発である。

さて。当然自分も、このシンデレラガール総選挙に夢中になる。なにせ、運営や世論を押しのけて自分の愛する担当アイドルに自分の手で活躍の場を与えられるまたとない機会なのだ。
乃々の順位は10位〜30位をふらつくくらいが定位置だった。既にCVのあるアイドルはよほどのことがなければ一桁順位に入るのが難しいのだ。

当時もりくぼP界隈で一番有名だった人に声をかけて、総選挙対策用に同担と話し合えるdiscordサーバーを作った。毎年春に行われる総選挙が近づくと、毎週のように会議を行い、どうすれば乃々の順位が上がるか、どうすれば乃々にみんな投票してもらえるかなどを話し合った。
イラストレーターさんに依頼して応援のイラストを描いてもらったり、ロゴやシンボルマークを作ってみたりSNSマーケティングについて勉強し、乃々を取り巻く総選挙の環境についてSWOT分析なども行った。
上記で述べた同人誌即売会の開催も、元はシンデレラガール総選挙の対策会議で登場したアイデアである。

そして、おそらく最後のシンデレラガール総選挙だったであろう、2022年。ルールも大きく変わったこの年の総選挙Stage for Cinderella
結局、シンデレラガールどころか、乃々を上位に押し上げることは叶わなかった。

総選挙会議
SWOT分析

[シンデレラガール]にはその特別な称号とともに、特別な衣装が与えられる。
ブルーを基調にしたドレスと、白銀のティアラ。そして「シンデレラ」というコンテンツの名に沿ったガラスの靴である。
190人アイドルがいる。それぞれのアイドルにプロデューサーがいる。そしてそのそれぞれのプロデューサーが、自身の担当こそが一番である、シンデレラガールに相応しいと信じている。
そんなことは分かっている。それでも、俺は乃々が一番であると証明したい。誰よりも何よりも愛する乃々に、プロデューサーとして渡せる最大級のプレゼントが[シンデレラガール]である。

そして何よりも、俺がそんな乃々の姿を見たいのだ。
よく似合うブルーのドレスを身に纏う乃々を。
白銀のシンデレラをちょこんと載せる乃々を。
乃々にしか合わない、ぴったりのガラスの靴でまた一歩前に進む乃々を。

だから……




イヌワシ_ヒガシ(左)オニジョニー_たけと攵P(下)


お笑い芸人になった。

決断

そもそも現代はオタクの消費サイクルが極めて早く、コンテンツの大量生産&大量消費がトレンドである。少しでも停滞すれば置いていかれる超新陳代謝の時代。
そんな時代でコンテンツはどうなるのか。推しはどうなるのか。
今年(2024年)の11月には森久保乃々が登場してから12周年になる。時計の針が一周分。現役のコンテンツとはいえ「古い」キャラクターにあたるだろう。
そして、デレマスというコンテンツもいつまで続くか分からない。モバマスは2023年に3月にサービスを終えてしまったし、デレステもサービス縮小傾向にある。新しいアプリが出るなどの情報もまだない。

モバマス_サービス終了

それでは、デレステのサービスが終了したら?
そもそもデレマスというコンテンツが終わったら?
俺の愛する森久保乃々はどうなってしまうのか。

「きみとはもう会えなくなっちゃったからお別れだね」
「きみを推してたあの時間はとても楽しかったよ」
そんなセリフを吐いて簡単にお別れする未来を想像しておいて、それでものうのうと生きて、そんなもんで森久保乃々のプロデューサーを騙れるのか?

森久保乃々をアイドルにしたのは俺なのだ。
彼女の人生を狂わせたのは他でもない俺なのだ。
そうであれば、それ相応のけじめをつけるのが大人ってものだろう。
俺の人生も乃々に捧げる。森久保乃々のために生きる。
近い将来乃々のプロデューサーを名乗れなくなるのを危惧しているのではない。
この今現在、森久保乃々のプロデューサーでなくなることだけは避けなければならない

正直、銀行員という仕事は自分によく合っていたと思う。お客さんへの営業回りも、決算書の分析も、融資について上席の承認印をもらうために理屈をこねくり回すのも、先輩らとの飲み会も、課せられたノルマをどうやって達成していこうかと考えるのも、楽しかった。
配属になった支店との相性もあったのだろうが、苦い思い出は殆どない。
斜陽産業と呼ばれる業界だが、まあきっと、少なくとも10年20年そこらでは潰れない企業である。
出世して、結婚して、子供を育てて。恐らく真面目にこの仕事に向き合っていたら、そこそこ充実した安定した暮らしはできていただろうと思う。
だが、その安定した暮らしでは得られないものがあった。

森久保乃々のさらなる活躍。
森久保乃々のプロデューサーとしての責務。
乃々をこの手で幸せにするんだという自負。
自分が森久保乃々のプロデューサーであると名乗るための覚悟である。

お笑い芸人という道

森久保乃々というアイドルの存在を、過去のものにさせない。
一過性の、昔流行ったコンテンツのキャラクターにさせたくない。
具体的に名前を挙げるとすれば、初音ミクくらいこの現実世界で活躍させたい。

そのために自分に足りないものは何か。いくつもあるが、なによりも足りていないのは発言力影響力である。
もっと自分に発言力があれば、乃々の魅力を伝えられる機会が増える。
もっと自分に影響力があれば、自分をきっかけに乃々に興味を持ってもらえる。

そんな発言力と影響力がある存在。
たどり着いたのがお笑い芸人だった。
もちろん、そういった影響力や発言力を持つポジションはいくらでもあるが、自身のパーソナリティを鑑みて、この結論に至った次第である。

これから

さて、改めて。
きっかけこそ歪んでいるが、当然お笑いというものを軽んじているわけではない。
2021年の10月6日、心の底から沈んでいた自分を救ってくれたのもお笑いである。キングオブコントで気が晴れるほど笑えたので。(心が沈んでいた理由は2日間あるライブの二日目しか現地チケットを握れなかったのに、初日で乃々のソロ曲「もりのくにから」が披露されたため、担当ソロを現地で回収できなかったことに起因している)

既にNSCで何度か舞台に立たせてもらえたが、ネタでウケたりウケなかったりするのは楽しい。まだ大した成果も残せていないが、幸いメンタルは強い方なのでしばらくはやっていけそうである。
とりあえず目指すところは、地上波に乃々を映すところからだろうか。

吉本の大師匠が仰っていた芸人としての理念と森久保乃々を幸せにするという彼女のプロデューサーとしての理念。
森久保乃々を幸せにする過程の中で、少しでも世の中を楽しくできれば幸いである。

終わりに

最後に、推し活というものについて私見を述べて本稿を締めようと思う。
元々こんなものは書く気はなかったのだが、良くも悪くも推し活というものが世間を賑わせているので。
推し活とは、所詮ただの自己満足である。
誰のためにもならないし、自分のためになることも少ない。
見返りは当然ないし、全てが終わった後に喪失感しか残らないかもしれない。
そんなもんだと思う。所詮人生というのは自分のためであり、それ以外のなにものでもないのだ。だから、それで良いと開き直る。

反省はすれど、後悔は絶対にしない。
自己暗示と自己陶酔にまみれた、森久保乃々のために生きるという自分のための人生が、それでも、幸せである。

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