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私的考察①『日本でブレイクした「韓流ドラマ」の特徴~ローカルからグローバルへの転換』

 2004年に「第1次韓流ブーム」がはじまり、「冬ソナ」人気に乗じて、それ以前の韓国ドラマが続けて衛星劇場などで放映されていたのを見たことがある。
 それら古いテレビドラマを見比べてみると、日本で人気があるいわゆる「韓流ドラマ」という様式ができたのは、2000年のころではないかと思われるのだ。それ以前は、テレビドラマも韓国映画と同じようなテイストだった。

 1997年のアジア通貨危機によって韓国がIMF危機を迎えると、経済再建の文化振興を掲げて、1999年文化振興基本法が制定され、2001年には、「韓国文化コンテンツ振興院」が設立された。
 そんな時代の中、1999年には、ペ・ヨンジュン主演の「愛の群像」、「チャングムの誓い」のイ・ビョンフン監督の「ホジュン」など、エポックメイキング的な作品が続々と生まれていった。どれも、秀作・良作であるが、これだと日本でブレイクするのは難しい内容であった。
 もともと、テレビドラマは国内向けで、ローカル色が強くなるのは当たり前なのだが、それが輸出できるかというとまた違う話になる。
 輸出先の事情がそれぞれなので、普遍的なドラマでないと受け入れられないのだ。
 
 そんななか、韓国以外でもヒットするような、やはりいわゆる「韓流ドラマ」というひとつの様式を完成させたのは、2000年に放映された「秋の童話」ではないだろうか。そして、それを、さらに進化させたのが「冬のソナタ」で、このドラマが、日本に韓流ブームが起こるきっかけとなった。
 もともと韓国ドラマは面白かったのだが、その従来のドラマを輸出向けに進化させたものが「韓流ドラマ」なのではないかと思う。

 日本でブレイクした「韓流ドラマ」とはどういうものか。従来の「韓国ドラマ」とはどこが違うのか、あくまで個人的な意見だが、大きく3つの特徴があると思う。ここでは、その第1の特徴である「ローカルからグローバルへの転換」について語りたい。

 「冬のソナタ」は、原題は「冬の恋歌」である。しかし、日本で放映時には、韓国的情緒あふれる「恋歌」を西洋文化的な「ソナタ」と変えたそうである。これを、提案した人は本当に凄いと思う。タイトルをいじることで一気に国籍不明感をだして、グローバル対応にしたのだから。
 さらに、美しい映像に拘って、ロケを多用するが、自然を中心に描いていて、生活の様子はセットでトレンディ路線で描いている。ここも国籍不明感を出すのに一役買っている。
 わたしは、最初に冬ソナを見たとき、最近の韓国人はキムチを食べないのかと思ったくらいである。韓国料理すらほとんど出てこないのだ。
 そのうえ、NHKで放映されたときは、日本語の吹き替えだった。それも、また視聴者に親近感を与え、ドラマの世界にぐっと引き込む要因となったのである。

 あえて韓国らしくしないことで、近代化された韓国をアピールし、それによって、韓国ドラマをグローバル市場に乗せようとしたのが韓流ドラマのはじまりではないだろうか。

 「冬のソナタ」では、ローカルな韓国らしさは、10年前の回想シーンだけにして、あとは徹底して、スキー場や都会的な背景だけを使っている。
 それによって、近代化された韓国をPRしながら、日本のドラマ市場にも、新鮮なドラマとして受け入れらたのである。

 また、主人公のヨン様を、高校生の時のカン・ジュンサンは黒髪で、アメリカ帰りのイ・ミニョンでは、茶髪で登場させている。この茶髪に眼鏡のヨン様が、日本ではあまりにも有名であるが、後にも先にも、ペ・ヨンジュンが茶髪にしたのはこの時だけだったのである。
 さらに、ヒロインのユジンを演じたチェ・ジウが、ショートカットにしたのも冬ソナの時だけというのも驚きだ。

 このあたりは、韓国ローカルからグローバルへの転換を意識して、色彩の魔術師と言われたユン・ソクホ監督が、絵コンテをつくったのではないかと思うのだ。
 しかし、その後、そのビジュアルを、主演の二人はあまり気に入らなかったのか、韓国では受けなかったのか、二人のあのヘアスタイルを見ることは二度となかったのであるが。

                       つづく





 



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