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おじいちゃんが好きだった歌手は?

遺品整理について思いを馳せながら、YouTubeサーフインをしていて、昭和歌謡を見ていたら、もう何十年も前に亡くなった祖父のこと思い出した。

母方の祖父は、生前は八代亜紀のファンだった、らしい。たぶん、いや、絶対に、そうだったと思う。
しかし、祖父の遺品関係に、八代亜紀のファンだったという証拠を示すものは何もなかった。レコード盤はおろか、なんにもなかった。

だから、その後の法事の時も、お盆の時も、わたしが、「おじいちゃんは八代亜紀が好きだったよね」というと、母やおばは怪訝な顔をし、「そう?演歌なんか聞かない人だったじゃない。歌も歌っているのなんか見たことないし」と反論するのだった。

祖父は真面目を絵にかいたような人で、お酒は全然飲まないし(体質的に受け付けなかったらしい)、祖母が亡くなってから、20年以上も男やもめで、何の遊びもしない人だった。
亡くなった後に、母と叔母が本棚にびっしりあった歴史関係の蔵書を整理するのに根をあげていたようだった。わたしは、手伝っていないが。

では、なぜ、わたしがそう確信したのかというと、祖父は、孫娘と一緒に歌謡番組を観ているといつも、八代亜紀が出てくるとやたら、誉めまくるのだ。

特に紅白歌合戦の時、いつも絶対に紅組が勝つという、なぜなら、八代亜紀がいるから。いつぞやの年は、今年は八代亜紀に加えてテレサ・テンまでいるのだから、紅組が勝つのは間違いないなどど言い放っていた。

大みそかは、母は、お節料理の準備をしていて忙しく、父は、父方の祖母(こちらも祖父が亡くなってひとりだった)のところで元旦を迎えるので留守にしていて、紅白歌合戦は、わたしたち孫娘と祖父だけでみていた。

どうして、八代亜紀がでると紅組が勝つのかと聞くと、男性の審査委員が票を入れるからだという。審査委員は男性の方が多いから、そうなるに決まっていると自論を展開していた。

そのころのわたしたち孫娘は、百恵ちゃん目当てだったから、正直、八代亜紀のどこがそんなにいいのか、ピンとこなくてよくわからなかった。

しかし、YouTubeで、その時代の八代亜紀の歌っている映像を見つけて、合点がいった。なるほどね。男なら、票を入れるわ。これは。

あの堅物の祖父も、孫娘の前で、つい本音を言ってしまったのだと,にやにやした。おじいちゃんの『推し』だったでしょ。




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