文庫レーベルと雑誌の関係 富士見ファンタジア文庫、角川スニーカー文庫、電撃文庫の場合。/90年代ライトノベル夜話
あくまで90年代の話と前置きした上で、まずは大雑把な概要を。
富士見ファンタジア文庫
:活字メインの大判雑誌『ドラゴンマガジン』が1988年創刊、程なくアイドル路線から誌面変更され現在に続く形に。神坂一はもちろん、新人デビュー作の冒頭を掲載したりと手厚い。小説がメインであり、漫画に関しては『コミックドラゴン』と『ドラゴンジュニア』でも扱っていた。 ※「ファンタジア長編小説大賞」は1988年の創設。
角川スニーカー文庫
:『The Sneaker』創刊が1993年。『ドラマガ』より判型が小さく、そのぶん本棚に置き易かった。「スニーカー大賞」は1995年創設と、三者の中では最後発。『日帰りクエスト』コミカライズなどは『月刊Asuka』で扱っていた。
電撃文庫
:最初は「電撃」を冠するゲーム雑誌と組んでいた。新人賞は1993年当初「電撃ゲーム小説大賞」を冠していた(〜2002年)点にも留意。活字メインの雑誌『電撃hp』(1998年創刊)が主力になるのは90年代終盤のこと。『電撃hp』は単行本サイズ&扱いなので入手は比較的容易。
ここからが個人的な印象です。
富士見ファンタジア文庫:
『ドラゴンマガジン』は人気シリーズのスピンオフ展開を一番最初にやってた印象があります。キャラクターは同じだけど時系列が違う短編って点では『スレイヤーズ!』も『オーフェン』もそう、『封仙娘娘追宝録』や『導師リジィオ』『メルヴィ&カシム』だとほぼ本編そのものでした。常に人気作が載り続けてた雑誌、そりゃ強いなと思います。
角川スニーカー文庫:
『The Sneaker』はよく長編を分割掲載していましたね。書き下ろしではなくなる点で、書く側は助かってたのでしょう。ただ、読み切り短編を掲載していた『ドラゴンマガジン』に比べると、どうしても入りにくさは否めませんでした。短編コンテストをやっていた雑誌でもあり、投稿コーナーには谷山由紀、花田一三六らの名前が。
ごく個人的に一番印象に残っているのはエッセイ。『ゴクドーくん漫遊記』の大ヒット後、中村うさぎの散財エッセイを世に放ったのがこの雑誌なんですね。
電撃文庫:
そもそも最初からコミックが強く、後の小説コミカライズも比較的すんなり行っていた印象があります。どちらかと言えば『コミック電撃大王』の方に親しんでいたので、そこまで『電撃hp』のいい読者ではなかった気もしますね。『あずまんが大王』はもちろん、『ガンドライバー』『イグナクロス零号駅』『宵闇眩燈草紙』とイキの良い連載が揃ってまして……。
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