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耳かきリフレでお姉さんに骨抜きにされた話➀~予約編~


整体に行きたい。
そして、あわよくば、包容力のあるお姉さんから施術を受けたい。

私が思春期真っ盛りの男子中学生のような欲望に燃えたのは、7月下旬のことだ。今思えば、暑さで頭がどうかしていたとしか思えない。だけど私は真剣だった。なんだか人生が変わるような気すらしていた。

…よし、行こう。包容力のあるお姉さんから施術を受けられる店を探そう。


そう決めてからの私の行動力は我ながら凄まじいものだった。


自分が通学する沿線上にそうした店がないか片っ端からグーグルマップで検索し、「耳かきリフレ」なる店を発見する。なにッ、浴衣に膝枕。メイド服で足ふみマッサージ。けしからん素晴らしいサービスの単語ばかりが踊るホームページに、思わずくぎ付けになる。

22歳にして未知との遭遇だ。何ら悪いことはないのに、甘い背徳感が漂う。

お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう、そしてごめんなさい。貴方たちの娘は微妙にけしからん店で耳かきサービスを受けようとしています。

そして見つけたとある店舗。「女性10%OFF」という文字が決め手となった。最初に見ていた、膝枕に浴衣で耳かきが受けられる店である。キミに決めた!「初めて耳かきリフレを利用する人にもおすすめです(^▽^)/」というレビューを信じ、意を決して電話を掛ける。

プルルルル…プルルルル…

「…はい、こちらotspgijsddlkh…」

ん、なんて?
電話に出たのは、しゃがれ声の高齢男性だった。店名もよく聞き取れない。
大丈夫か、私は間違えて雀荘か酒屋にでも電話をかけたんじゃなかろうか。
弱々しい翁の声に不安を感じつつも、つっかえつっかえ予約を入れる。40分のコースにするつもりが、ビビッて30分のコースにしてしまったこと以外は完璧な段取りだ。

予約は1週間後。それまでは何としてでも生きなければならない。
もしも今私が不慮の事故で死んだら、耳かきリフレ取り消しの電話を入れるのは間違いなく親族である。

「もしもし、娘がそちらの店に予約を入れていたのですが…えぇ。実は亡くなりまして…はい…」

あの世で赤くなったり青くなったりする私の顔が目に浮かぶようだ。

30分でどんな甘やかなサービスが行われるのか。初回なのでお姉さんの指定はしていないが、一体どんな方が施術をして下さるのか。あんまりに汚耳だと嫌がられるだろうし、耳は清潔にしていくべきだろうか。服は何を着て行こう?

こんなに楽しみな予定が入ったのは久々のことだ。




ふう…。なんか興奮してきたな。





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