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星降る中部高地の縄文世界へ

山梨県立考古博物館の開館40年記念特別展「星降る中部高地の縄文世界ー黒曜石ネットワークによる物流と人流ー」に行ってきました。
渋滞で高速バスが1時間近く遅れたため、まずは博物館のすぐ近くのカフェで腹ごしらえ。
満足したところで…さあ!「星降る中部高地の縄文世界」へ!

ごはんカフェ蔵のビーフハヤシ
おいしくいただきました




この特別展は、八ヶ岳で採掘される黒曜石の物流と人流を背景に、中部高地の精神世界が広く共有されたものであったことを示す、豊富な展示品が見どころです。
今回初めてこちらの博物館を訪れましたが、派手さのない堅実な博物館という印象で、人も多くなかったため、じっくり展示品を見ることができました。

考古博物館の入り口はこんなかんじ


この地域の土器の特徴といえばアーモンドアイにチョンとした鼻、おちょぼ口のお顔でしょうか。
2018年の東京国立博物館の縄文展で、初めて土器に顔がついているものをみたときはびっくりしました。

常設展に複製品がありました


こうした顔面装飾について、次のように解説されています。

土器の文様は、大きく分けると「装飾性文様」と「物語性文様」の2つがあります。前者が土器の美的効果を目的として付けられたのに対して、後者は象徴的な意味などを表すために描かれたと考えられます。この地域の縄文土器には、「顔」が描かれたものがあり、縄文人達の共有した神話や物語などの登場人物を現した「物語性文様」の一部と見られます。つまり、土器には彼らの「伝えたいこと」が描かれていたのです。土器で語られた物語は、その製作や土器を使った煮炊きの局面、土器を利用する儀礼的な行為の中で物語られ、中部高地だけでなく各地へと伝わっていきました。これらは各地で全く違う物語が描かれる訳ではなく、土器造形の共通性から、かなりの類似性を指摘できます。そのため黒曜石の交易に端を発した交流の中で、比較的広い地域に共通する精神的な認識ができあがっていたこともわかります。

展示パネル「顔面装飾の精神性」より


たくさんの土器に囲まれていると、圧倒される思いがします。どんな物語かはわからないけれど、確かにそこに語られるべき神話があったのだと、ストンと胸に落ちたように感じました。

顔面だけでなく、ヘビやカエル、イノシシなどが多く描かれた土器も展示されています。

イノシシ獣面把手 
中野谷松原遺跡 縄文時代前期 群馬県安中市
黒曜石のネットワークを通じて、イノシシモチーフが
群馬県からやってきた⁈
猪蛇装飾付土器 
安道寺遺跡 縄文時代中期 山梨県甲州市
上の写真のイノシシのアップ
鬼滅の伊之助っぽいかな?


なかでも一番気に入ったのがこちらの釣手土器。

人面装飾付釣手土器
寄山遺跡 縄文時代中期 長野県佐久市


何千年後に生きる私も、肩の力が抜けちゃうこの造形。
縄文の夜、この灯りの下でどんな神話が語られたのか…




初めて見るような土器やこんな土器が東京でも出土してたんだという驚きがあり、とても見応えのある特別展でした。
一方で、物足りなく感じたのは、黒曜石ネットワークによる物流と人流についてでしょうか。

中部高地から黒曜石が運ばれていったのは、よくわかります。それでは逆に、何が中部高地に運ばれたのか。また、その交換がどんな意味を持っていたのかということが、私の知りたいところです。

図録の特別寄稿には、黒曜石ネットワークについて多くの記述がありました。
関東から貝輪や塩が運ばれていた可能性や、黒曜石を売り歩く商人のような存在を推定する論考もあると紹介されていましたが…なるほどと思うほどではなく。
ヒスイやコハクが威信材であるのに対し、黒曜石は必要物資の交換だったという点は、なるほどと思いました。

縄文時代の社会の有りようを考えるのは、なかなか難しいことかなとも思いますが、この分野の研究がもっとすすんで、一歴史好きにもわかりやすく示されるようになるといいなと思いました。

特別展は2023年9月3日まで。夏休みのお出かけにいかがでしょうか。

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