人類文明発祥の地ー古代オリエントに想いを馳せる
古代オリエント博物館に行ってきました。サンシャインシティ文化会館ビル7階のエレベーターをおりるとすぐ、博物館の入り口です。池袋は人で溢れていましたが、こちらの博物館の人口密度はそれほど高くなく、じっくりと鑑賞することができました。
今春、山梨県立博物館で開催された企画展「印章」に、古代オリエント博物館の収蔵品が展示してあり、面白そうな博物館だなあ、そのうち行ってみたいなあ、と気になっていたのでした。
オリエントとはラテン語で、「日の出」「東方の地」という意味
博物館のリーフレットには、次のように書かれています。
何となく東方…くらいに考えていたのですが、ローマからの見方だったのですね。
農耕や牧畜の始まった地域といわれ、古代文明発祥の地であるオリエントへの興味が、ムクムクと湧き上がってきました。
ハンコは、オリエント生まれ
私が、この博物館に興味を持ったキッカケは、前述の通り山梨県立博物館の企画展「印章」で、ハンコの起源が紀元前6000年頃のオリエントにあると知ったことです。
ハンコというと、どうしても、紙に朱肉で押した行政文書という先入観があったので、中国文明が発祥地かなと漠然と思っていたのですが、ハンコの始まりが交易にあり、粘土に押されていたものだったと知りびっくりしました。
上記の写真には、次のような解説がついていました。
柔らかい粘土の状態で印が押され、乾くと封泥を壊さなければ開封できないという仕組みですね。
世界で初めて、農耕・牧畜が開始され、余剰生産物ができたと考えられている古代オリエントが印章誕生の地であるということが、よくわかりました。
また、印章の中には、写真のような円筒状のものもあるそうです。
やっぱりみんなビールが好き⁈
さらに文字も粘土に書かれるようになり、ビールの支払いに関する粘土板文書も展示してありました。
ビールが税金ってことかな。よくビールやワインは、生水よりも安全だったと聞くけど、こういう出土品をみると、遠く離れたオリエントの人々が身近に感じられます。
粘土に書く楔形文字からアルファベット系の文字に移行し、パピルス紙や羊皮紙に書かれるようになると、文書に紐をかけ封泥をするようになったそう。
こうなってくると、西洋のシーリングスタンプの起源がどこにあるのかも容易に想像がつくのではないでしょうか。
交易に必要なものはーカエル?
もう一点、興味を惹かれたのはこちら。何だと思いますか。
カエルです。かわいい。大きさは1センチちょっとかな。こういう置物、ありますよね。お守りかな?と思わせておいて…
はい。何と分銅なのです。鳥形のものもあり、古代に生きた人々のユーモアを感じます。商業取引の発展により、度量衡制度が必要になっていったそうです。なるほど。
最古の貨幣はどこで
今回、楽しみにしていたことの一つが、研究員の方の見どころトーク「リュディア王国の黄金と世界最古の貨幣」でした。
世界最古といわれている貨幣は、トルコ西部に栄えたリュディア王国だったと考えられています。写真ではわかりにくいですが、ライオンの横顔が刻印されています。大きさは1センチもないくらいです。
驚いたのは、今までみてきた封泥や分銅、文字の発明と比べて、貨幣の誕生が新しいことです。
もちろん、貨幣の誕生以前から、金、銀、銅などの金属が、延べ棒や粒の形にされ、その重さで支払いが行われていましたが、コインにすることで、純度や重量を保証することができるようになったのではと考えられているそうです。
見どころトークでは「どこでとれた金が使われたのか」や「どうやって精錬されたのか」「どのくらいの価値があったのか」など、わかりやすく解説され、中国でリュディア王国と同時期か、それよりも前に貨幣が作られていた遺跡が発掘されているということも教えていただきました。勉強になりました。ありがとうございました。
終わりに
今回は、主に商業取引に関することを中心にnoteを書きましたが、他にも様々な視点から古代オリエントについて知ることができます。有名なハンムラビ法典碑やロゼッタストーンは、複製とはいえ実物大のものを見るだけでも圧倒されますし、ギリシャ神話の神々が他の地域に伝わると「あれっ?どうして?」というのも、おもしろいです。
今、このブログを書きながら、ふと、貨幣って交換価値としての金属と、その内容を証明する封泥の機能がくっついたようなものなのかなあと、考えてみたりしています。
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