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人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける

やまと歌は  人の心を種として  よろづの言の葉とぞなれりける

     紀貫之 『古今和歌集』仮名序より


古今和歌集に興味を持ったものの…

「言葉」ということばは、不思議な言葉だな。
どうして「言」に「葉」がついているんだろうか。
調べていくうちに冒頭の紀貫之の文に出会いました。仮名序とは、今風にいうと前書きと言ったところでしょうか。日本語の柔らかさ、心象を表す豊かさを言い表しているように感じられ、『古今和歌集』への興味がにわかに湧いてきました。

とは言っても『古今和歌集』と聞き連想するのは、平安時代に編さんされたということぐらい。百人一首にも『古今和歌集』から選ばれている和歌がありますが、お恥ずかしながら「それ、聞いたことのある!」といった程度です。


『古今和歌集の想像力』(鈴木宏子著 )を読んでみた

そこで、いきなり『古今和歌集』を読むではなく、導きの書として『古今和歌集の想像力』(鈴木宏子著)を手にとってみたのでした。偶然図書館で借りたこの本は『古今和歌集』や和歌のことだけでなく、成立の背景や平安時代を知る上でもとても勉強になる良著でした。

初の勅撰和歌集として編さんされた『古今和歌集』ですが、『万葉集』の時代は遠く去り、唐風、漢詩が中心の時代を経て、当時、和歌の位置付けはそれほど高くなかったようです。

しかし「古今」の名が示す通り、万葉集に入らなかった歌から、編さん者たちの生きた時代の新しい和歌まで、千歌二十巻にまとめるという大事業。唐の文化に学びそれを吸収しながらも、自分たちの心情に合う言葉や表現、節や詩歌のかたちを作り上げていったのが『古今和歌集』なのだと、この本を読み知りました。

そして、一字一音の「かな」がなければ、これらのことが成し遂げられなかったとはなんて興味深いことでしょうか。さらに、移り変わる四季や人の心、人生に感じ入る日本的美意識に大きな影響を与えたとは!

著者は「時代やジャンルを超えて、新しい『何か』が生まれるときに最も大切な鍵となるものは、ひたむきな個人の自由な想像力の中に存在するー私は、そう信じている。」と結んでいます。

歴史や言語など、自分の興味関心に引っ張られた感想になってしまいました。きっかけが、思考の枠組みを獲得する上で言語はどんな役割があるのか、日本語という言語を母国語とする集団はどんな思考の枠組みを持っているのかという興味から、言葉について調べてみたという経緯があるので、偏りはどうぞお許しください。

最後になりますが、『古今和歌集』のなかで興味深く感じた在原業平をご紹介したいと思います。


紀貫之の在原業平評が興味深い

在原業平は『古今和歌集』の編さん者たちより一世代前の六歌仙の一人で、『古今和歌集』には30首が取り上げられています。政治的には不遇でしたが、『伊勢物語』のモデルであり『源氏物語』光源氏の原型になったとも言われている人物です。

ちはやふる  神代も聞かず  龍田川  唐紅に  水くくるとは


誰しも耳にしたことがある有名なこの歌は、在原業平が詠んだもの。
『古今和歌集』仮名序にある紀貫之の業平評が興味深い。

そのこころ余りて、ことば足らず

灰原薬の「応天の門」をもう一回ちゃんと読もう!と思ったのでした。

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