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世界は経営でできている(読書感想)


書籍の情報

岩尾俊兵
講談社現代新書
2024年1月20日第1刷

目次

はじめに:日常は経営でできている
1 貧乏は経営でできている
2 家庭は経営でできている
3 恋愛は経営でできている
4 勉強は経営でできている
5 虚栄は経営でできている
6 心労は経営でできている
7 就活は経営でできている
8 仕事は経営でできている
9 憤怒は経営でできている
10 健康は経営でできている
11 孤独は経営でできている
12 老後は経営でできている
13 芸術は経営でできている
14 科学は経営でできている
15 歴史は経営でできている
終わりに:人生は経営でできている

読書感想

目次を見てわかるとおり、章立てされておらず読みづらい。
結論としては「はじめに」と「終わりに」だけを読めばいいと思う。

著者の主張は次のとおり。

多くの人が「価値あるものは全て誰かが既に作ったもので、有限にしか存在しない(価値有限思考)」という既成概念に取り憑かれている。
本書における経営とは「価値創造を究極の目的とし、様々な対立を解消すること」である。
そして、経営によって価値を無限に創造し、豊かな共同体を創り上げることを目指すべきだ。
「価値無限思考」に転換できれば、他者は奪い合いの相手ではなく、価値の創り合いの仲間になれる。
こうなることで、人は共同体全体の幸せを実現できる。

印象に残った箇所の引用

9ページ
①本当は誰もが人生を経営しているのにそれに気づく人は少ない。
②誤った経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。
③誰もが本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。

25ページ
貧乏とはお金、時間、知識、信頼といった資源の収入と支出のバランス(均衡と調和)が崩れた状態を指すと考えていいだろう。
しかも、これらの資源のうちのどれかの収支のバランスを崩すことで他の資源の収支も狂う。

27ページ
どんな人でもお金、時間、知識、信頼の収支のバランスを崩すことで貧乏から抜け出せなくなってしまう危険がある。

28ページ
アンバランスの原因は「自分の行動の目的が明確化されていないこと」だ。

30ページ
本当に必要なのは、欲しいものは自分で作ってしまう、日々の生活や仕事の中に楽しさを見出す、ということだろう。

31ページ
ここまで読んで「そんなの無理」とお怒りの方は、まだまだ経営の考え方の理解が不十分だ。
「そんなの無理」なら、どのような手ならば、仕事自体を楽しめるようになるのか考えて、より良い策を生み出し続けるのが経営である。

こうした工夫によって、働かないから退屈→退屈だから浪費といった貧乏へと向かう螺旋階段を軌道修正できるかもしれない。
そして、お金、時間、知識、信頼の収支のアンバランスを是正できれば、さらなる悲劇を避けることもできる。

89ページ
仕事も組織も、人生の目的にはなりえない。
人間の幸せこそが、それらの目的なのだということを忘れてはいけないだろう。
だからこそ、心労を経営するという視点はますます重要になってきている。

117ページ
「短気」な人は「長期」の利益は得られない。

193〜194ページ
本来の経営は「価値創造という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる様々な対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」だったはずだ。

人間は自己の幸福を他者に左右され、他者を不幸にする刹那的で利己的な行動をとった過去は未来において罰せられる。
他者と自己を同時に幸せにする価値創造でしか、個人にも集団にも恒久的な幸せは訪れない。
実際に、これまで人類は価値創造によって幸福を増大させてきた。

我々は誰しも強みと弱み/得意と不得意を持つ。
そして「誰かの強みで別の誰かの弱みを補完する」という価値創造のジグソーパズルを解き続けることで、全体として/システムとして、集団がバラバラな個人として生きるより、高い能力を発揮できる価値ある状態を創り出したのである。
こうして個人では不可能な価値創造も集団なら可能になった。

197ページ
金銭も、時間も、関係性も、勉強法も、問題解決も「人生において、価値あるものは全て誰かが既に作ったもので、有限にしか存在しない」という既成概念に取り付かれると、限りあるものを守るための短期的で局所的な思考/志向に支配されるのである。
こうして「自分にとって本当の目的、究極の目的は何か」を問い直す余裕がなくなる。
「長い目で見れば、遠回りする方が良いかもしれない」という考え方ができなくなり、最善手を探索することも、本質を追求することもできなくなる。
価値あるものは全て有限だと思い込むからこそ、究極の目的を忘れて、目の前の手段を守ることに必死になってしまう。
その結果、幸せになる(=価値を創り出す)という究極の目的を忘れ、ただの手段に振り回される。

199ページ
価値有限思考を、経営によって価値は創造できると考える「価値無限思考」に転換すれば、顧客から他企業まで全てが「価値創造を行う共同体内の仲間」に代わる。
理想論が現実論になる。
そんな世界が実現できるのだ。

200ページ
人類は、地球の資源から何らかの機能を取り出し、別の資源から取り出した機能と組み合わせ、人間の幸せにつながる(=価値ある)新たな機能を創り出してきた。
これこそが人類の発展の歴史だった。

203ページ
本当は、価値は無限に創造できる。
そして、価値が無限に創造できるものならば、他者は奪い合いの相手ではなく、価値の創り合いの仲間になれるのだ。

207ページ
経営を忘れた人間はサルの群れと大差ない。
人間が人間として生きられるのは価値創造ゆえだ。
人間とは、価値創造によって共同体全体の幸せを実現する「経営人」なのである。

世界は経営でできている


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