2021年に、参加した全員が芸術家として生き始める、が意図のプログラムを運営していました(創造的に生きる、プログラム)。
表現が怖くてできない、表現ができるようになりたい、と参加してくれた栂瀬 雅月(とがせ かづき)さん。あれから3年が経過し、「感情のドローイング」という表現にたどり着き、2023年に個展を開催。応募した企画展で受賞し、ニューヨーク展示のチャンスを勝ち取り、人生初の海外展示に挑戦されています。
この記事は、一見キラキラして見えてしまうストーリーの裏にある、表現への恐怖、また葛藤など、(かなり)生々しい変容の物語を伺った、雅月さんへのインタビュー記事です。
表現をしてみたい、年齢関係なく挑戦してみたい、という方はぜひこの記事を読んでいただきたいですし、興味を持った方は彼女が挑戦しているクラウドファンディングも御覧ください。
アートの本場、ニューヨークでの展示に45歳から挑戦。
——まず、自己紹介をお願います。
——ニューヨークで挑戦する展示について教えてもらえますか。
——具体的にどんな作品を作っているのですか。
ニューヨークに圧倒されて何も出来なかった、学生時代の私。
——ニューヨークでの展示は、アーティストなら一度は憧れる舞台だと思うのですが、実際、いまどんな気持ちなんですか。
——プロセスを聞いていて、成功しているとか、うまくいっている、という意味ではなく、自身の衝動に素直に生きることを選択しているように感じます。
長女が生まれて生活が一変。虐待してしまうのでは、と自分が壊れるほどに追いつめられて。
——カヅキさんと以前お話していた時に、仕事を始め、さらに母になり、自分が何をやりたいのかわからない、何を感じているのかわからない、といったお話も聞いていました。
自分の人生を生きるんだ、という方向性になる道のりは、どのように始まっていったのでしょうか。
あなたから何一つ感情が感じられない、と言われて始まった自分探し。
——その状況に陥り、最初は何から始めたのですか。
なぜ私を見てくれなかったのか。母への不満を伝え続けて受けた、初めての全力ビンタ。
——この自分探しのプロセスで、どんな内的な声や、深いニーズのようなものに気づかれたのですか。
震える母と無言で対峙し続けた20分。そこから大きく変容した、親子関係。
——母親からビンタ … 。そこからどうなったんですか?
人生初の個展開催で気づいた、「私を見て」という心の声。
——カヅキさんがとても深く抱えていた、母親との関係性に向き合われたのですね。
母親が感情をむき出しになるほど向き合えたことにも驚きましたが、それ以上に、その後震える母親と手を握りしめながら、20分その場に居続けたことが …。本当にすごいなって …。
普通だったら母親にそこまで言わないですし、言われてもビンタされて終わるし、ビンタされてもその場にい続けることが出来ないと思うんです。
やりたい、でもやりたくない。見てほしい、でも見てほしくない。恐れと葛藤し続けて。
——本当に、個展をやりたくなかったんですね。
——お母さんとの関係性も、娘さんとの関係性も、最後の最後まで諦めずに、自分の感情に率直になろうとされているんですね。
感情を失う体験をした私がたどり着いた、感情のドローイングで表現できる喜び。
——改めてここまで話を聞いていて、「心が何一つ感じられない」と言われるまで追い詰められていたカヅキさんが、「感情のドローイング」をテーマにしていることは、本当に興味深いと思います。
苦しい現実も全部自分が作っている。でも大丈夫。小さなことからでも始められる。
——ありがとうございます。乗り越えたり、葛藤したりを繰り返し、いまのカヅキさんがあるんですね。
ここで一つ質問なのですが、今のカヅキさんが、一番しんどかったときの当時の自分に声をかけるとしたら、何と声をかけますか。
——過去のカヅキさんと同じように、生きることに悩んでいる人がたくさんいると思います。その方々へのメッセージをお願いできますか。
世界中でアートに触れる場をつくっていきたい。ニューヨーク挑戦はその大事な一歩。
——このニューヨーク展示を経て、次の挑戦や考えていることなど、将来のビジョンなどあったら教えてください。
※ インタビュー編集後記(松島より)
カヅキさんは、高校生の時にアーティストになりたいと願い、イギリスの美大へ留学されます。その後グラフィックデザイナー、また広報職にて、クライアントの要望に答える形で表現をしてきたそうです。
その中で「自分らしい表現をしたい」という欲求を忘れていたことに気づき、「何の要望も要求もない、まっさらな状態で自分が表現したいことは何なのだろう?」と思った時にどうしたらいいのか分からない、と悩んでらしたタイミングでお会いしました。
絵を描けないコンプレックスがあると仰っていたのが3年前。そこから試行錯誤を重ね、感情のドローイングという表現スタイルに出会い、個展を開き、現在はニューヨークでの展示に挑戦しています。
葛藤も悩みも無くなったわけではなく、むしろ大きくなっているかもしれませんが、人生を歩み続ける覚悟を持つ、そんな力強さをカヅキさんから感じます。
カヅキさんの生き方、あり方が一人でも多くの方に伝わればと願い、この記事を執筆しました。
最後に、ちょうど昨日ニューヨークでの展示を終えたそうで、カヅキさんから本記事に対するメッセージをいただきました。こちらも含めてご覧いただければと思います。
「ニューヨークでの展示への挑戦を終えて。(カヅキさんより」
Edited by 渡辺優