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子どもがいてもシェアハウス、という選択肢

これまで何度か、noteに書きましたが、僕は、拡大家族や拡張家族、また人によっては子育てシェアハウスと呼ぶような生活をしてきました。

今は葉山で、その前は神楽坂で、そして来年1月からは、東京の駒沢公園付近で、同じような生活を始めます。

この生活を実際に3年半ほどやってみて、自分に子供も生まれ、改めて、子育てシェアハウス生活の魅力を感じています。一方で、難しさというか、試行錯誤もたくさんありました。

「私もやってみたい!」という人は周りにたくさんいるのですが、実際にこういった生活をしている人はまだまだ少ないようなので、僕たちのリアルな体験を伝えられたらな、と思って、この記事を書いています。

特に、昔の僕たちのような、「将来自分たちに子育てなんてできるのかな?」と悩んでいたり、「自分たちらしい暮らしをつくっていきたいな」と思っている、子どもがまだいないカップルや夫婦に、この記事が届いて、こんなライフスタイルもあるんだ、と選択肢の一つとして認識してくれたら嬉しいです。

働きながら子育てって大変そう・・・

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僕は20歳の頃から子どもがほしいと思っていたのですが、妻は、「子育て大変そう、仕事と両立しんどそう、周りのワーキングママつらそう」だと、結婚をしても、なかなか子どもを作ろうという話にはなりませんでした。

妻いわく、僕のように、自由で普通じゃない生き方をしていると、経済的にも不安定だし、超ワーカホリックで出張ばかりしていて子育てしなくて、大変そう…とも思っていたそうです。大変な思いで産むのも、仕事を休まなきゃいけないのも女性なのに、そんな簡単に言わないでよ、と言われたこともあります。

そんな妻の本音を聞いた僕は、だったら、僕よりももっと自由に働きながら、幸せそうに暮らしている夫婦の家に訪問しよう!と思い立ち、そんな友人の家庭を5つほど訪問しました。

僕たちは、子育てのリアリティーを知らない。

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家庭訪問で一番衝撃だったのは、5人も子どもを育てている友人のお宅に伺ったときのこと(ほぼ、ママのワンオペのお宅)。ひとりの子は踊っていて、もうひとりの子は一人遊び。更に他の3人もまた…、それぞれが自由に遊んでいて、同時に何人もの子どもがお母さんに話しかけていました。

聖徳太子じゃありませんから、同時に複数人の声や要望に答えるなんてことはできず、お母さんは適当に流していました。この景色が妻には衝撃的だったようで、「子育てって完璧じゃなくてもいいんだ!」と気付いたというのです。

というのも、子育てしながら働くとは、朝早起きして子供のお世話をし、掃除、洗濯、料理の家事もこなしつつ、仕事も生産性高くテキパキ片付け・・・と、育児も、家事も、仕事も、完璧にこなせなきゃいけない、という思い込みがあったらしく、実際はそうじゃなくても大丈夫なんだ、と感じたそうです。

僕は、この妻の感想を聞き、(年の離れた兄弟がいない限り)20代~30代のプレ子育て世代にとって、リアルな「子育て」なるものとの距離は、とても遠いんだな、ということを思い知らされました。

地方出身の共働き夫婦に、都心で育児は無理ゲーでは?

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もうひとつ、子育て家庭訪問で感じたことは、都心での子育ては大変すぎる、ということでした。

都心で子育てを頑張っている人たちがいます。話を聞くと、どちらかの両親が近くに住んでいて、助けてくれるとしても、とても大変だということが分かりました。だとしたら、お互いの実家が宮城と岐阜という僕たち夫婦は、親に助けてもらうことが絶望的な中でどう子育てできるんだろう?

そして出てきたのは、

実家が遠い夫婦が、都市で、共働きで子育てをするのは無理ゲーじゃない?

という素朴な疑問でした。

頑張っている人はたくさんいるけれど、そもそもそんなに子育てって大変で、無理して頑張らなきゃいけないことなんだっけ?もっと自然体で子どもを育てられないの?そんな疑問がわいてきたのです。

子どもがいてもシェアハウス生活、という選択肢

そんな疑問を解決できないかと、最初に考えたアイディアは3つでした。

1つ目は、近所に友人知人がたくさんいる場所に住むこと。2つ目は、友人知人たちと同じマンションで、部屋を借りてしまうこと。3つ目は、子どもがいても暮らせるシェアハウスを作ること、でした。

それぞれ解決策になると思うのですが、一旦は3つ目のアイディアを試すことにしました。結果的に、それがなかなか自分たちに合っているようで、神楽坂と葉山で、3年半ほどそんな生活を続けてきました。そしてこれから、駒沢公園でスタートします。

都心型拡大家族シェアハウス in 神楽坂

最初に始めたシェアハウスは、神楽坂の西端にあるマンションでした。友人夫妻(当時は妊娠中)と僕たち夫婦で、最上階に部屋を借りました。住み始めて半年で友人夫婦が出産し、途中から赤ちゃんもおうちにいるという環境でした。

このとき、僕たち夫婦が得た視点は、「実際に子育てをするとはどういうことか」というものでした。そして、とても大事な経験をした一方で、色々しんどい思いもして、2年ちょうどで神楽坂を出る意思決定をすることになります(詳しく聞きたい人は直接聞いてくださいませ)。

郊外型子育てシェアハウス in 葉山

次に作ったのが、葉山での子育てシェアハウスでした。海から徒歩5分、175平米5LDKというマンモス物件を借りてスタートしました。

神楽坂での反省を活かして、大前提として、「すべてシェアが前提」「住人の快適さが一番大事」「ゆるい空気」を大事にしていました。当初は固定住人が出てくると思ったのですが、東京に通うのは難しいようで、結果的には、複数拠点を持っているような個人・家族が「半住人」として住み、その上でゲスト的に遊びに来る人たちがいる、という形になりました。

子育てシェアハウス生活、良かったところ

ここからは、実際に暮らしてみて良かったことを共有したいと思います。基本的に良かったこと9割、めちゃ大変だったこと1割という感じです。

1. 夫婦の喧嘩が減る
予期していませんでしたが、一番良かったことでした。妻が話していて印象的だったのが、「こうすけはインテリアに興味ないし、料理にも興味ないし、話したいことがあっても共有できないのがさみしかった。でもシェアハウス暮らしを始めて、他の同居人と趣味や料理の話ができるし、悩みもこうすけにぶつける前に相談できて、イライラすることが減った。笑」と語っていたことです。

人には色々な欲求がありますが、二人暮らしだと、つい、パートナーにすべての欲求を満たしてもらおうとしてしまいます。でも、お互いに、趣味関心も違うし、そんなことできませんよね。

ところが、家に他の住人がいると、趣味が合う人、仕事や家庭の不安を共有できる人、僕がいないときに息子の面倒を見てくれる人、と、妻の欲求の一部が、多様な関係性の中で、自然と満たされれしまうようなのです。結果、夫婦喧嘩も減ります。

2. 気分を変えられる
僕は物件を探すときに、「100㎡以上、20万円〜30万円」の物件しか探しません。なぜなら、60平米を超えると面積に比して家賃が安くなるからです。金額だけを見ると高いのですが、これを5人で割れれば、一人あたり4万円〜6万円で、普通の都心での暮らしよりも圧倒的に安く、しかも使える面積は広くなります。

リビングもお風呂も広くなる結果、「個人の空間」「子供との空間」「夫婦との空間」など、家の中で複数の空間を作ることができ、部屋を変えるだけで気分を変えることができます。

夫婦喧嘩したり、子どものギャン泣きで疲れて、一人になりたいときもありますよね。そういうときに部屋が複数あるのは本当にいいなと思います。

3. 家庭に第三者の目が入るから、変に感情的になりにくい
関係が近い人には、どうしても、感情的になりやすいですよね。特に、家庭という限られた空間では、子どもの話を聞く前に怒鳴ってしまったり、パートナーに嫌味な言葉をぶつけてしまったりすることも。

でも、職場などの社会性のある場所だったら、そんな事を言わないし、友人知人相手なら、もっと言い方を考えるはず。

それと同じで、シェアハウスという仕組み上、常に家庭に第三者の目線があることで、子どもやパートナーに、「一人の人間として」接する、という前提を持ち続けることができます。

4. 子どもがたくさんの愛情をもらいながら、育つことができる
結局、これが一番ですよね。例えば、僕が出張でいないときは、お風呂入れるのを手伝ってくれたり。ご飯あげるのを手伝ってくれたり。むしろ、ご飯作ってくれたり。泣きじゃくっているときに一緒にあやしてくれたり。

葉山のおうちでは、どれだけ同居人や、遊びに来てくれた人たちに、子育てを助けてもらったか、言い尽くせないくらいです。うちの息子は、延べ数百人に抱っこされ、100人以上にミルクをもらっています。

先日、僕の母が遊びに来たのですが、「晴くん(息子)を見ていると、みんなからもらっている愛情が、溢れている感じがするね」と言われて、とっても嬉しかったです。

子育てシェアハウス生活、大変だったこと

でも当然、大変だったこともたくさんあります。

1. 「家族」だからやって当たり前、というコミュニケーションをされることがある
何度も出くわしたシチュエーションは、「家族なんだから◯◯して当たり前でしょ」「家族なのにどうして◯◯してくれないの」というものでした。最初はなぜこのやり取りが起こってしまうのか理解できていませんでしたが、今となっては何が起きていたのかがよく分かります。

人によっては、「家族」とは、「他の人には伝えられないしお願いできないようなことも言ってよい」、特別な関係、として捉えているようなのです。「家族なんだから」という名目で、普通だったらそんなこという?と思うことを、強制されるのは、本当にしんどかったです。

僕はそれ以来、「拡大家族」みたいな、「家族」という言葉をあえて使わないようになりました。「家族」とは、単なる言葉に過ぎない、と考えるようになったからです。

2. フリーライダー問題:自然と貢献意識がある人とそうじゃない人
シェアハウス生活経験が長い人とそうではない人では、家にいるときの過ごし方が全然違います。シェアハウス経験が長い人は、「勝手にリラックスして」「自然体で無理せず」、でも「手伝えるところは手伝う」のです。

一方で、この空気感が伝わっていないと、「ただひたすらリラックスする、ホテル気分で滞在する人」が生まれてしまいます。このフリーライダー的な関わり方に無意識になってしまう人への対応は、とっても悩みました。

やってみてわかった、松島家流・子供のいるシェアハウス生活のポイント

1. ママは大変なんだから助けて、という一方通行コミュニケーションはNG:お互い自立した人間であるという前提を持つ
子供もいてシェアハウス生活をしているというと、色んな人に子育て助けてもらえていいね!と言われるのですが、半分正しくて半分間違っています。

正しいのは、実際にたくさん助けてもらっているところ。間違っているのは、こちらも相手に give しているから、子育てを助けてもらえるということです。大変な子育て世帯が、それ以外の世帯から助けてもらうための、ママ最優先ハウスではないのです。

わざわざ義務が増える家に住みたいと思う物好きな人はあまりいませんよね。みんな、自分の時間も大切です。

2. 分担もしないしルールも決めない:自然と give しあえる関係を目指す
松島家の方針なのですが、極力物事を分担しないようにしています。家事育児でお互いの負担を可視化、重み付けし、負担を公平にしようとしている家庭もありますが、現状、我が家には合わないと判断しています。

なぜならこれは、頑張っている人が、頑張っていない(ように見える)人に「もっとやって!」と強いる方向になりがちですし、負担なんて主観指標なので、それが公平になるわけがない、と考えています。

我が家では、「公平さ」という幻想を抱かず、分担をしないけれど、お互いに得意なことで助け合う、という関係を目指しています。

3. 来るものは拒まず、去る者は追わず
合う人は合う、合わない人は合わない。無理に合わせようとする必要もない。義務でもないのですから、お互いに心地よい人たちと心地よい関係を持っていられるコミュニティでいたいなと思っています。

拡大家族生活、みんなやりたいけどできない理由

僕の周りには、拡大家族生活をやりたい!とは言うものの、なかなかその生活を実現している人はおらず、その理由として、拡大家族生活には、そもそも向き・不向きがあるのではないかと思っています。

1. 完璧なママ像は諦める。ダメな自分を人に見せられるのか。
ママには、「自分のダメなところを人に見せられない」と思っている人が多いようです。常に部屋がキレイに片付いていて、常に子供には笑顔で接して、常に身だしなみも整っていないといけない・・・そんなプレッシャーです。

でもシェアハウスでは、イライラしているところも、子供に優しく接してあげられないところも、育児をさぼっているところも、寝起きのすっぴんも、他人に見られます。それが耐えられない・・・という方が多いのではないでしょうか。

2. 子供を持つと、夫と子との生活のために住環境が最適化される。
これまで、お子さんがいて「一緒に住めたら」、という人がおうちを訪問してくださったのですが、ちょっと事情の違う一家庭を除いて誰もそれが形にはなりませんでした。それには、1.以外にも理由があると思います。

すでに子育てしている家庭では、子供のものがたくさん(本当にたくさん!)部屋にあり、その状態で生活できるよう、モノの置く場所、子供のハイハイ空間、遊び道具の収納など、家具や導線が最適化されています。

シェアハウスをするには、自分の作った最適環境を一度白紙にして、他人と相談しながらやり直さなくてはいけないのですが、そこまでする必要があるのか・・・となるようです。

3. パートナー二人ともがやりたいケースが少ない。
この場合も多いです。どちらか一方は新しいライフスタイルに挑戦したいと思っても、パートナーもそれを求めるとは限らない。住む場所、住む環境など、志向するライフスタイルが一致しなかったり、タイミングが合わなかったりすることもあります。

4. 同じタイミングで、お金を出してやろうとする人が少ない。
現実的な問題として、同じタイミングで初期費用を払えるシェアメイトを見つけられるかどうか、というのもあります。(これは、子育てシェアハウスに限らず、シェアハウス一般に当てはまる話です。)家賃が高いということは、初期投資も高くなり、家賃25万円の場合、敷金・礼金・仲介手数料等で、100万円程は初期投資にかかります。誰かを待っていると、なかなか始められないようです。

では、どうすればいいのか。

難しさばかりを書いてしまいましたが、僕は本当に、「両親が近くにいないけれども、状況的に都心に住まなければならない、子育て夫婦」には、今以外のライフスタイルもありえるかもよ、と伝えたいし、興味があれば、一度こういったライフスタイルにトライしては、と思っています。

皆にこのライフスタイルが合うなんてことはあり得ないですが、「やりたいけれどもできない」「そもそも選択肢にあがってこない」という状況が変わり、選択肢の一つになったらいいな、と思います。

そのためには、

1. 自分でそういう家を作ってみる。
ポイントとなるのは、家を見つけることと、同居人を見つけること、の2つです。予算的な問題、タイミング的な問題、たくさんの問題がありますが、僕たちは物件はネットで探し、同居人は友人のつながりで見つけてきました。やるかどうかなので、もっと試してみる人が増えたらなと思います。

2. そういう家を訪問してみる。
すでに、Ciftなどのコミュニティーが存在しており、そういったところに打診してみるのも良いでしょう。今後、シェアハウス的生活を家族でもやってみよう、という場所は増えてくるので、そこにひたすら連絡することです。

【リンクリスト】
・CIFT:http://cift.co/
・ひつじ不動産:https://www.hituji.jp/comret-family

子どもを作るか悩んでいる、カップルや夫婦の皆さんへ

昔の松島家のように悩んでいる人が居るんじゃないかと思います。そういう方に、ぜひ、お伝えしたいことがあります。

子育てシェアハウス、めちゃいいから選択肢に持って!!

です。そのために、オススメしたいことがあります。

1. 数カ月間限定でもいいので、子育てしている家庭で過ごしてみる。
2. いくつかの家族訪問をしてリアリティーに触れる。

です。まずは「2」からでもいいです。妻は、神楽坂での生活があって、どこか遠い世界の子育てではなくて、自分でも子育てできるかな、と思って、子どもを作ることを決めました。

これからさらに核家族化が進み、年齢の離れた人たちとの接点が失われてしまう中で、もっとたくさんの人が、子どもと接する機会を持つことができたらな、と思っています。

子育ては当然大変なこともたくさんあると思いますが、いいことだってたくさんあるんです。子育てをして初めて知った、社会の優しさや人の善意がありました。不安ばかりが大きくなる世の中ですが、僕は子育てを通して、そうじゃない側面も感じられました。

「子育てって、大変だけど、楽しいよね!」と、笑って話せる夫婦が、もっと増えることを、願っています。この記事が一人でも多くの方に、役に立ったら嬉しいです。

※ そして!そんな僕らと一緒に住んでみたい!という方も、絶賛募集中です。駒沢公園付近で、1月初旬から住み始めます。

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