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パートナーが妊娠したばかりのプレパパへ(1):愛情曲線と産褥期とパパ育休の理解

先日、友人の新婚女性から、「妊娠して夫が育休をとるか検討しているんだけども、周りに男性育休をとった人がいないし、育休をどんな風にとったらいいか、相談に乗って欲しい」と声をかけてもらいました。

そこで、僕自身の育休経験と、育休を経験したパパ仲間たちと議論を重ねながら15名ほどの経験者にインタビューをした結果見えてきたことを、プレパパに向けてまとめて書いてみようと思います。

妻の妊娠期間中、妻からよく、出産・育児関連のリンクが無言で送られてきていました。その度に、その情報量の多さと、その裏に隠れている、「もっと育児のこと一緒に考えなさいよ」というメッセージが怖くて、どう反応していいか分からずにビビっていました。

そこで、この記事は、男性目線で、男性が受け取りやすい形で、プレパパが、妻が妊娠がわかった直後のタイミングで知っておいたほうがいいこと、にフォーカスして情報をまとめています。

なぜ、世の中の女性はこんなに夫に怒っているのか

僕は、10代の頃からずっと子どもが欲しいと思っていました。

だから、いろんなママたちに、出産のこと、育児のことを聞いていたのですが、驚くような話をたくさん聞きました。例えば、こんな話です。

旦那には、身体を一切触られたくない。子供のために一緒に暮らしているけど、生理的に本当に嫌。ママ友達とあうと、いつも夫への不満の話になるけれど、夫は妻がそう思ってるなんてこと一切知らないと思います。」

夫のことは許せない。出産までは良い夫だと思っていたけど、その後の大変な時期にぜんぜん助けてくれなかったから、正直、まったく信頼していない。」
30代後半、1児のママ

これが、特別な意見かと思いきや、同じように夫への不平不満を語るママ達によく出くわします。

また、周りの当時40代前後の男性に話を聞いても、うーん…と思うような声をたくさん聞きました。

結婚は、終わりの始まり。そこからは自由がなくなる。縛られなきゃいけない。

結婚とは、妥協。結婚・出産をすると女性は変わってしまう。それはしょうがない。男性は女性に頭をヘコヘコしているのがいい。尻叩かれている位がいい夫婦の証拠。

僕は、ずっと疑問でした。彼らはこれを真実のように語るけれども、それって本当なの?彼らにとっては真実かもしれませんが、それは、夫婦関係、男女関係において、本当に一切変えられない真実なの?

だとしたら、何のために、結婚・出産・子育てをするんだろう。

そう、ずっと思っていました。そこで知ったのが、「愛情曲線」でした。

男性にとって恐ろしい現実:愛情曲線

妊娠中の妻と一緒に、かかりつけの整体師さんのところにいった時のことでした。妊娠したことを報告したら、その整体師さんが教えて下さったのが、愛情曲線です。

愛情曲線て、知ってますか?旦那さんには言いにくいのですが、旦那さんは奥さんにとって一番でありたいと思うのですが、科学的な統計として、もうそうならないことが分かっているんです。だから、心してかかってくださいね。

図として表現されたものがこちらです。

女性の愛情曲線のポイントを僕なりにまとめると、

(1)結婚後は必ず夫への愛情は下がる
(2)出産前後でその後、夫への愛情曲線が上がるか下がるかが決まる
(3)夫への愛情が回復するのは、「夫と子育てを二人でした場合」
(4)夫への愛情が低迷し続けるのは、「夫が子育てを手伝ってくれなかった場合」

これには、恐ろしいことが二つ書いてあります。まず、何をしようと、夫への愛情が下がること…。男性は女性を愛していて、一緒に暮らしたいと思って結婚をすると思うのですが、その妻から夫への愛情は、必ず下がるのです。

2つ目は、妻からの愛情が回復するには、出産前後の男性の子育てへの関わりが重要であること

めっちゃくちゃ怖いな…と思ったと同時に、なぜ、世の中の女性はこんなに夫に怒っているのか、に対する1つの解決策だとも思いました。

しかし、その前に改めて理解すべきは、なぜそんなに「怒らざるをえないのか(時には、恨んでしまうのか)」です。この答えを知るためには、妊娠・出産にまつわる女性の身体についての理解が必要となります。

産後の女性は全治1ヶ月の傷を負っているのと同じ状態:産褥期

まず男性が理解しておくべきことは、「出産は、超大変」ということです。

特に、産褥期(さんじょくき)と呼ばれる、産後すぐから6〜8週間までの期間についての理解が必要です。この産褥期について、NPO法人マドレボニータ 理事の林理恵さんが、インタビューでその内容を語っています。

「妊娠中とは違って見た目はわかりにくいですが、産後、女性の身体は全治1ヶ月の傷を負っているのと同じ状態です。具体的には、出産直後に胎盤というお好み焼きくらいの大きさの臓器が剥がれ落ちます。胎盤が剥がれた後、子宮内膜から出血や残留物である悪露が6-8週間、出続けます。」

そんな身体の状態で、世話をしなければ生きていけない赤ちゃんを育てるわけなので、その責任と重圧で緊張状態が続きますどうして寝てくれないんだろう、どうして泣いているんだろうと、理由の分からないことの連続、授乳の間隔も短く睡眠不足にもなります。外出せずに家にこもらざるを得ない期間が1ヶ月ぐらいあるので、『自分は社会に復帰できるんだろうか』という孤立の不安にも襲われます。」

超大変やん…、と思ったと思うのですが、そう、超大変なのです。そしてこのタイミングで、一切サポートをしてもらえなかったりした場合には、そりゃ相手を恨んでしまうのも当然なのだと思います。夫でいうと、事故骨折したのに妻がまったくく気にかけてくれなかった、くらいの状況かもしれません。

(※ 更に妊娠期の女性の身体の変化についても書きたいのですが、これは追って記載します)

これまでは、女性の身体についての説明をしてきましたが、ここからは、これを前提とした上での、夫婦の育児負担について考えていきます。

産褥期の育児の状況をイメージする

残念なことに、2017年に流行語大賞をとってしまった「ワンオペ育児」。このキーワードをGoogle で検索すると、離婚・疲れた・意味・共働きうつといった言葉が出てきます。

ママたちの叫びが聞こえてきますね…。

しかし、いろんな方に話を聞いてみると、みな大変ではあるものの、その大変さの中身には違いがあるようです。

子どもが一切横になって寝てくれなくて、生まれて始めの数ヶ月間は、夫婦と親とでシフト制で赤ちゃんを抱っこし続けて、家族全員腰を痛めて、産後ノイローゼ & 育児トラウマ状態だったという家族もいます。一方で、超安産かつ夜も爆睡してくれる赤ちゃんで、男性が育休をとって、育児にも余裕があるし、赤ちゃんが可愛すぎて、夫婦で育児の取り合いをしていた、と語る夫婦もいました。

この産褥期の育児負担の重さは、下記が理解しやすいと思います。

まず、出産後の母子の子育て負担の度合いです。これは、出産後のママの身体の回復具合によるママへのサポート度合い(帝王切開だった/高齢出産だったなど)と、赤ちゃんの育児のしやすさ(夜よく寝てくれるか/健康かなど)、子どもの人数、の要素が入っています。

この子育て負担を、頼ることのできる育児リソースの量で割ります。夫婦の両親や兄弟といった家族のサポートをどの程度得れるのか、友人・知人からのサポートはあるか、そもそも人にお願いすることは得意か、外注サービスはどの程度使えるのか、などです。

この「母子の子育て負担の度合い」を横軸に、「育児リソースの量」を縦軸に表現すると、次の図のようになります。

世の中の、「育児ワンオペ」はこの一番左下の象限に位置しており、右上にいけばいくほど、育児が、楽に、楽しめるようになるのだと思います。

自分たち夫婦が、この図のどこに位置づけられそうかを予想することが大事なのですが、ポイントは、横軸は努力はできるけれども(安産になるように体を整えるなど)、最後は運任せで自分たちでコントロールしきれない。一方で、縦軸は夫の努力で変えやすい部分があるということです。

ここまで、愛情曲線・産褥期・産褥期の育児負担の量について、一般的な解説をしてきました。

次に、具体的に、妊娠が発覚したけど、プレパパとしてまず何をすればいいの?ということについて書きたいと思います。

理解すべきは、妊婦はとにかく不安であるということ

妊娠中の女性は、ホルモンバランスが変化し、感情の起伏が激しくなると説明されることが多いです。けれど、普通に考えて、新しいいのちを急に自分の中に宿して、不安にならないほうがおかしいのだと思います。

男性も、急に幼児を渡されたら抱っこして落としてしまわないか不安になるし、ペットを飼っている人ならわかると思いますが、ご飯を食べてくれないなとか、元気がないなとか不安になりますよね。

それが、「自分の身体の中」で起きてしまっていて、母としての責任が芽生えるからこそ、「自分の食べているご飯は大丈夫かな」とか、「働きすぎて負担になってないかな」とか、とにかく不安が高まるのは当然です。

更に言うと、これは現代のネガティブな側面だと思いますが、女性は不安を抱えると、検索をして情報を調べます。ネット上には、腐るほど体験談が載っているからです。妊婦は「働きすぎちゃ駄目」「食事はなんちゃら」などなど、もう、無限に情報があります。

そして、不安を解消したくて情報を検索したのに、どれが正しい情報かわからないし、自分がちゃんとできているかが分からなくてより不安になる、という不安の悪循環ループにハマってしまいます。

何が言いたいかというと、お腹の中にいのちが芽生えたことで、大切に子どもを育てたいと思う責任感が生まれると同時に、その反動として、とにかく女性は不安になってしまう、ことを理解することが一番重要ということです。

これを理解しているか否かで妊娠期の過ごし方は変わりますし、この不安な時期にどう接してくれるか、それによって、愛情曲線で言うところのその後の回復グループになるのか、停滞グループになるのかも大きく変わってきます。

ここまで書いても男性は、そんなこと分かっているよ、と言うと思います。そして女性は、男性はそんなこと言っても全然分かってくれない、といいます。

この差が生まれてしまうのも、当然のことです。女性は妊娠によって物理的に身体が変わりますし、出産という未知の経験への恐れがあります。文字通り、命がけの作業です。それに対して、男性は身体的には何も変わらず、頭で、子どもができたと理解することしか出来ないからです。

そこで、プレパパには、まず3つのことをこの瞬間にすることをお勧めします。

プレパパがまずすべき3つのこと

1. 漫画「コウノドリ」を読む。

漫画「コウノドリ」は、男性の産婦人科医が関わる出産の物語です。友人の助産師から、「あれは、私たちから見ても、本当にリアル」と言われて、妻が妊娠して数ヶ月目のタイミングで読みました。何回泣いたか分からないくらい、僕は泣きました。

これを見たら、いかに目の前の女性の身体に起きていることが、凄いことで、危険なことなのか、そして男性のサポート(心理的にも、物理的にも)が重要なのか、頭と心と身体の全身で理解できると思います。

しかも、調べてみたら、はじめの4話はWEBで無料公開もされています。プレパパは、まず、これだけでも読んでみて下さい。絶対に、投資した時間、後悔させません。

2. トツキトオカのアプリを入れる

トツキトオカは、妊娠週数に合わせて赤ちゃんの様子や健診予定日を教えてくれるアプリです。このアプリが凄いのは、上の写真みたいに、毎日毎日、赤ちゃんがプレパパ・プレママにたくさんの言葉を話しかけてくれることです。

これを見ていると、男性でも、妻にお腹の中に子どもがいる感覚を持てるようになってきます。更に言うと、我が家では、お腹の中の赤ちゃんにも、「うみちゃん」と名前をつけて、すでに生まれているけど、ただお腹にいるだけ、という前提でいつも話しかけたりしていました。

3. 検診に一緒に行く

検診にいって、エコーを使って、赤ちゃんの鼓動を聞いたり、動いているのを見ましょう。それだけでも、男性の「赤ちゃんが生まれている感」が出てきます。ただ、それだけが検診に行く目的ではありません。

もう一度繰り返しますが、妊娠をしている女性は、とにかく、不安で、不安で、不安でしょうがないんですそこで不安な女性にプレパパがすべきは、「何に困っているの?」と聞いてあげることではありません

なぜなら、何に困っているかも分からないからです。

女性にとっては、夫に話を聞いてほしいのはもちろんあるけれども、それよりも、一緒に悩みを共有してくれるか、一緒にこの大変さを乗り越えようとしてくれているか、そこが重要なのだと思います。

だから、一緒に検診に行ってあげて下さい。そして、パートナーが、産婦人科医の人にどんな質問をして、どんな話を聞いて、どんな不安を持っていそうなのか、そこで感じてあげて下さい

そして検診後、「どう思った?」と聞いてあげて、何が不安だったのか、お互いに話し合ってみて下さい。これをしっかりやるだけで、相互理解はぐっと深まるはずです。

プレパパは、初期的に上の3つのアクションを取るだけで、パートナーに対する声のかけかたが変わってくるのではないかと思います。

この記事の最後に、プレパパが妊娠直後に意思決定を求められることについて書きます。

プレパパが妊娠後に意思決定を求められること

どんなパパにとっても、ママにとっても、妊娠すること、出産すること、育児することは、初めてのことです。知らないことばかりです。

ただ、妊娠がわかったから、速やかに意思決定しなければいけないことがあります。妊娠・出産なんて、妻にとっても夫にとってもはじめてのことでどうして良いかわからないと思うのですが、それでも意思決定を求められてしまうことがあるんです。

それは、「ステークホルダー(関係者)」がいる場合です。具体的には、3つあります。

1. 出産の体制:出産をいつ、どこで、するのか(里帰り出産かなど)
2. 保育園とママの育休:どのタイミングで、どこの保育園に入れて、ママの育休はどの程度の期間取得するか。
3. パパの育休:産褥期の育児体制として、パパがどう育児に関わるのか

「1」と「2」についてもどこかでまとめようと思いますが、こちらは様々なところに情報が集まっていますし、女性のほうが主体的に情報を集めやすいので、

ここからは、「男性が意思決定をしなければいけないこと」として、「3」のパパの育休に焦点をあてて書こうと思います。

社会的にも、男性育休義務化の議論が進み始めていたり、企業単位によっては、男性育休を義務化する大和ハウスや日本生命などの企業、また男性の育休取得率が80%を超えるメルカリなどの会社も出てきています。

なぜ、これが重要かと言うと、男性には仕事があり、育休を取るということは、その期間に育休を取った人の仕事をする人がいなくなり、引き継ぎ・新しい組織体制づくりなど、育休を取ることを決めた場合には、本人にとって、チームにとって、組織にとって、やるべきことがたくさんあるからです。

そして、女性の場合には、育休経験者が増えてきていますが、男性の育休経験者は、育休取得率がまだ5% 台と、非常に稀な存在です。男性で育休をとった人に聞いても、周りに誰も男性で育休をとった人がおらず、話を聞いたり、参考にすることができなかった、とおっしゃる方がほとんどです。

育休を取りたいと伝えるのが遅くなればなるほど、取るのは難しくなるし、組織にとっても対応が難しくなり、厳しい反応の可能性も高まります。

長くなりましたが、これまでの内容をまとめます。

【愛情曲線について】
・出産前後に、妻の夫への愛情は必ず下がる。
・妻からの愛情が回復するには、出産前後の夫の子育てへの関わり方が重要。

【産褥期について】
・出産は超大変。
・産後の女性は全治1ヶ月の傷を負っているのと同じ状態。

【産褥期の育児負担について】
・育児負担量 / 人 = 母子の子育て負担の度合い ÷ 育児リソース量
・夫がコントロールしやすいのは、育児リソースをいかに増やせるか。

【妊婦の不安】
・理解すべきは、とにかく、妊婦は不安でしょうがないということ。
・不安になって調べれば調べるほど、より不安になる悪循環。

【プレパパがまずすべき3つのこと】
・漫画「コオノドリ」を読む
・アプリ「トツキトオカ」を入れる
・検診に一緒に行く

【プレパパが意思決定を求められること】
・パパの育休について。

次回の記事では、15名のパパ育休経験者へのインタビューをもとに、「具体的に、男性育休ってどういうものなの?どうデザインしていけばいいの?そもそも本当に取る必要あるの?どう意思決定すればいいの?」について書いていこうと思います。

乞うご期待下さいませ。

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