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特撮ヴィラン語り ~その221 アナザーアギト/木野薫~

昔からの特撮あるあるなんですが、「悪の仮面ライダー」と「ニセ仮面ライダー」って結構一般の人から見るとごっちゃになりやすいところなんですよね。
まあ仮面ライダーに限らず他のシリーズでもこういうのはあるんだけど、結構そこの線引きって特ヲタはこだわるんですよ。特に昨今は当たり前のように悪役仮面ライダーが毎年出るようになったのもあったし、またその悪役たちも人気になったりしますから。

その線引きの一番グレーなところを攻めてきたのが、平成仮面ライダー第2作に登場したアナザーアギト/木野薫。「仮面ライダー」という名前を冠してはいないし、作中でも「仮面ライダー」の単語自体が登場しないんですが、分類上はこいつ「仮面ライダー」なんですよ

もうすでにややこしいよねわかる

「アギト」劇中には、境遇も出自も違う3人の仮面ライダーが登場します。
既に人間を超える力に目覚めていた主人公:仮面ライダーアギト/津上翔一。
警察組織が開発した強化服システムを使って変身する刑事:仮面ライダーG3/氷川誠。
偶然にも力に目覚めてしまい、それ故に周りから迫害を受ける孤独な青年:仮面ライダーギルス/葦原涼。
木野はまた別のバックグラウンドを持ち、「アギトは俺一人でいい」と主張して他の仮面ライダーたちに戦いを挑みます。

彼の持つ力は、過去に巨大な嵐に巻き込まれ転覆した客船「あかつき号」の事件をきっかけに目覚めたものでした。
その真相は超能力に目覚める素質を持つ人間たちを事前に殺そうとするある神の思惑によるものだったのですが、木野は生き残った乗客たちを秘密裏にまとめるコミュニティのリーダーである元外科医。
彼は弟と一緒に雪山で遭難事故に遭った過去も持っており、その際に凍傷により動かなくなった右腕を失ってしまいます。そこに死亡した弟の右腕が移植されたことで一命をとりとめたものの、事故がきっかけで医師免許も失うこととなり、現在は無免許医としてブラックジャックよろしく高額な治療費と引き換えに難しい手術を引き受けることを生業としていました。

海でも山でも事故に遭うとか絶対アウトドアしちゃいかんやんアンタ

そんな暗い背景から歪んでしまった正義感により、他の仮面ライダーや自分を慕う仲間たちをも裏切り、騙しながら一人孤独な戦いを続ける木野。
しかし度を越した行為に出ると何故か移植された右腕が疼き、まるで弟の意志が兄を止めようとしているかのように制御出来なくなってしまいます。そう、さながら厨二病のように。「静まれ、俺の右腕…!」ってあれですね(おい)
そんな悪役っぷりも強烈でしたが、当時としては新鮮だった40代のおっさんライダーという部分も渋みがあってマニアには非常に人気となりました。

しかしここでややこしいのが後年の作品での扱い。
2017年の「仮面ライダーエグゼイド」のスピンオフ作品で木野が再登場することとなった際に初めて「仮面ライダーアナザーアギト」という名前が設定され、正式に仮面ライダーの扱いを受けるようになったんですが、
さらにその後の作品、2019年の「仮面ライダージオウ」で登場する怪人:アナザーライダーとして出ちゃったんです。アナザーアギトが。ほぼそのまんまのデザインで。
つまり仮面ライダーのアナザーアギトと、仮面ライダーじゃないアナザーアギトがシリーズに登場しちゃったってわけなんです。

はいもうめっちゃややこしい

元々「ジオウ」の制作発表でこのアナザーライダーの設定が出た時にね、勘のいい特ヲタは心配してたんですよここを。「アナザーアギトってもういたけどどうするんだ」って。そしてスタッフもちゃんと「アナザーアギトってもういるからどうしようかってのは考えてます」とは事前にインタビューで答えてはいて。
さあどうするんだろうと思ったんですが、まさかデザインそのまんま持ってくるとは。いやあ…ホントややこしいキャラになっちゃったもんです。

matthew

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