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2020年に記念年を迎えるクラシック作曲家 vol. 1 ジュゼッペ・タルティーニ(没後250年)

【記事について】

・2020年に記念年(生没年から50年単位)を迎える作曲家を紹介します。基本的に自分のための備忘録として書いたメモに過ぎないので、あくまで参考程度にお読みください。
・参考音源はNaxos Music Libraryから僕の趣味で選んだものを紹介します。それから、CDを選ぶときには、(1)紹介する作曲家の作品が中心のアルバムになっていること、(2)CD一枚分の長さに収まっていること、という二点を心がけています。

【作曲家について】

ジュゼッペ・タルティーニ(Giuseppe Tartini, 1692-1770)

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18世紀イタリアの作曲家であり、演奏家・理論家・教育者としても活躍したヴァイオリン音楽史上の偉人
・出身はヴェネツィア共和国のピラン。ピランはイストリア半島を代表する由緒ある街で、今はスロベニアの観光地の一つとなっている。
・タルティーニは20代の頃にヴァイオリンを特訓し、ヴァイオリニストとしての地位を確立した。この頃の彼は、ストラディヴァリ(Antonio Stradivari, 1644-1737)の手になるヴァイオリン(リピンスキー・ストラディヴァリウス)を所有していたが、後述のCDでも紹介しているように、他の制作者のヴァイオリンも使用している。
・30代半ばからは同じ共和国領のパドヴァヴァイオリン専門学校を開く。ヨーロッパ中から生徒が集まり、有力なヴァイオリニストたちを輩出したと言われている。タルティーニは教育活動と並行して研究活動も行っており、ヴァイオリンの演奏法(運弓装飾)、和声と音響の規則(差音の発見)などに関する論文や理論書を残している。ちなみに彼はそのままパドヴァで生涯を閉じている。

【参考音源(1)ヴァイオリン・ソナタ集】

タルティーニ:独奏ヴァイオリンのためのソナタとタッソのアリア

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・リリース情報:Alpha(ALPHA353)、2018年。
・演奏者情報:パトリツィア・ボヴィ(ソプラノ)、キアラ・バンキーニ(ヴァイオリン)。
・収録曲情報:「ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 D. 2」「ただひとり、森の中は薄暗い」ほか。
・コメント:タルティーニが親しみ、楽曲に取り入れた民謡(例えばゴンドラの船頭が歌うようなもの)へ注目してヴァイオリン・ソナタの性格に迫ろうという一枚。ソプラノとヴァイオリンが交互に演奏し、最後に共演するという流れも含めて魅力的な構成の企画になっている。演奏も素敵。

ジュゼッペ・タルティーニ:ソナタ Op. 1

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・リリース情報:Ricercar(RIC391)、2018年。
・演奏者情報:エフゲニー・スヴィリードフ(ヴァイオリン)、ダヴィト・メルコニャン(チェロ)
・収録曲情報:「ヴァイオリン・ソナタ ト短調:捨てられたディド Op. 1, No. 10 / g. 10」「ヴァイオリン・ソナタ:パストラーレ イ長調 A. 16」ほか。
・コメント:ヨーロッパの古楽コンテストの登竜門の一つ、ブルッヘ古楽フェスティバルの優勝者エフゲニー・スヴィリードフによる録音。1734年に出版されたソナタ集から6曲のソナタを選び、おまけに「パストラーレ」(牧歌風/田園風)の副題を持つソナタを加えた一枚。美しく濃厚な演奏が聴ける。

タルティーニのヴァイオリン:ヴァイオリン・ソナタ集

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・リリース情報:Dynamic(CDS7744)、2014年。
・演奏者情報:チルトミール・シスコヴィッチ(ヴァイオリン)、ルカ・フェッリーニ(チェンバロ)
・収録曲情報:「ヴァイオリン・ソナタ ト短調:悪魔のトリル」ほか
・コメント:「悪魔のトリル」はタルティーニの代表曲であり、第三楽章に登場するトリル盛り合わせの二重奏法が聴きどころの一曲。タルティーニはこの曲について、夢に出てきた悪魔が演奏したソナタに衝撃を受けて再現した作品だと語っており、「悪魔のトリル」という呼び名も彼自身によるもの。この曲は演奏が多いが、この一枚は特に聴きごたえのある演奏になっている。ちなみに、この録音はタルティーニの使用していたドム・ニコロ・アマティ(Dom Nicolo Amati, 1725-1750)制作のヴァイオリンを用いている(ピランに保管されていたもの)。

【参考音源(2)協奏曲集】

ジュゼッペ・タルティーニ:ヴァイオリン協奏曲集

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・リリース情報:Bongiovanni(GB2177-2)、1993年。
・演奏者:ベアトリーチェ・アントニオーニ(ヴァイオリン)、カウナス室内管弦楽団、シルヴァーノ・フロンタリーニ。
・収録曲情報:「ヴァイオリン協奏曲 D. 78」「ヴァイオリン協奏曲 D. 12」「ヴァイオリン協奏曲 Op. 1, No. 4 / D. 15」
・コメント:名高いベテラン奏者アントニオーニのヴァイオリンはもちろん、合奏全体も美しくて心地よいので、タルティーニの協奏曲に興味のある方におすすめしたい一枚。ちなみにアントニオーニが使用しているのは、ストラディヴァリが1680年制作に制作したヴァイオリン。

タルティーニ:ヴァイオリン協奏曲集

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・リリース情報:Naxos(8.570222)、2007年。
・演奏者情報:アリアドネ・ダスカラキス(ヴァイオリン)、ケルン室内管弦楽団、ヘルムート・ミュラー=ブリュール(指揮)。
・収録曲情報:「ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 D. 50」「ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 D. 125」
・コメント:こちらもタルティーニの協奏曲の魅力が伝わる、爽やかで明快な演奏になっている一枚。先の一枚と曲目が重なっていないので、二枚合わせて聞くのも良いかもしれない。ダスカラキスはなかなか拘りがあるようで、ジョバンニ・バティスタ・ガダニーニ(Giovanni Battista Guadagnini, 1711-1786)が1769年に制作したヴァイオリンを使っているだけではなく、ヴァイオリンの弓の近代化をリードしたジョン・ドッド(John Dodd, 1752-1839)が1800年頃に制作した弓を使っている。これはタルティーニが弓の形状の発展の歴史にも名を残しているという事情を踏まえたもののようである。

ジュゼッペ・タルティーニ:フルート協奏曲集

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・リリース情報:Tactus(TC692002)、第2版、2005年。
・演奏者情報:マッシモ・メルチェッリ(フルート)、イ・ソリスティ・デランサンブル・レスピーギ。
・収録曲情報:「フルート協奏曲 ト長調 Gimo 293」「フルート協奏曲 ト長調」
・コメント:ここまで紹介してきた通り、タルティーニの作品はヴァイオリンのウェイトが圧倒的に大きい。そこで、これとは違ったタルティーニの一面を知りたい人には、素敵な演奏のこの一枚がおすすめ。この録音は手稿として残っている作品も取り上げることでフルート協奏曲のみの構成を貫いており、(たまたまなのか)全曲長調なので聞いていると長閑な気分になってくる。

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