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パンという愛の結晶

パン、お好きですか?

マツザワは何を隠そう生まれてこの方ずっと朝はご飯派でしたが、なんの因果か天変地異か、ここ最近は朝はパンパパン派です。

パンがないとちょっと朝不機嫌になるくらい身体が毎日パンを欲しています。

そんなマツザワは以前仕事でパンを焼いていたことがありました。

大学を卒業して新卒で入った会社が食品スーパーだったのですが、最初に配属された部署が何故かスーパーではなく、系列のイタリアンレストランのベーカリー部門という特殊部隊でした。

それまでパンを焼いたことも焼きたいと思ったこともなく、なんなら朝はご飯派なので、パンなんて普段ほとんど食べませんという人間が、入社2日目にいきなりパン製造の現場に放り込まれたわけです。

しかも、そこはオーブンではなくて薪石窯でパンを焼くという超特殊環境で、パンを焼いたこともないど素人がいきなり薪に火をくべるところから教わりました。

窯の温度を上げている間に、先輩が無言で猛スピードで分割していく大量のパン生地をひたすらまるめ、食パンの型に詰めこみまくる作業。

(パンの丸めかたも知らないので、余った生の生地をもらって、帰宅後一人暮らしの折り畳みテーブルの上でひたすらパンを丸める練習をするというシュールなこともしていました。)

マツザワは生まれてこの方スポーツもろくすっぽやったことのない、筋力もマインドも体育会系度ゼロのもやしっ子でしたのに、何故かパンの焼成係に任命され、窯の準備ができたらそこから4〜5時間くらい窯からパンを出したり入れたりの作業をぶっ続けで行っていました。

窯の温度は1番高いときは300度を超えます。その前で分厚いコックコートをきて作業をするので、灼熱地獄です。

さらにパンってふわふわで軽いイメージがありますが、焼く前のパンは水分を含んでいるので、生の生地の重さは半端ありません。10キロとか余裕で超えます。
生地だけでも半端ない重さですが、鉄板の上に3斤型を6つ並べたものを1つの窯で6枚(合計約108斤)×2窯で焼いて、それを窯から出したり入れたりを何度も繰り返していたので、もやしっ子の身体は限界でした。

身体中経験したことのない痛みで毎日ボロボロ、手の指は鉄板の重みに耐えきれず腱鞘炎になり、通勤は行きも帰りも電車で爆睡でした。

私は主に焼成をしていたので生地の仕込みは他のスタッフの方がやっていたのですが、仕込みも半端なく体力が必要な上に、酵母の具合や温度管理も必要です。

そうして仕込みも焼成も半端なく体力と労力を使って焼きあげたパン、食べるのは一瞬なのです。。

お料理やお菓子って、つくる手間はパンとそこまで変わらなかったとしても、まだ見た目の豪華さや、主菜、デザートというポジションもあいまって、一口一口を大切に食べられている印象ですが、パンって主食なので、他の料理を食べている合間にほいほい口に運ばれて食べ終えられることが多い。。

む、報われねぇよ、。

パン作りは奥が深くて面白いけど、自分は将来絶対パン屋さんにはならない(なれない)と誓った程パン屋さんは過酷でした。。

会社の都合でパン屋にいたのは4ヶ月程で、その後は別の部署に異動になりましたが、それ以上続けていたら多分身体が逝ってしまっていたので、私としては助け舟ともとれるタイミングでの異動でした。

パン屋での経験はたった4ヶ月でしたが、あまりにも濃すぎて、この場では語り尽くせないくらいパン屋さんは大変でした。。

そんな訳でマツザワはパン屋さんに対してリスペクトが半端ありません。
女性のパン屋さんなんて聞いたら最敬礼ものです。
「どんな身体作りしたらパン屋さん続けられるんすか?!」って取材したい程、女性でパン屋さんやってる人ってほんとにすごいと思います。

まぁ男性、女性に関わらずパン屋さんはほんとにすごい。

そして、最近パンが好きでよく食べるようになってから思うことは、パン程味に人柄が出るものはないなということです。

もちろんパンって使ってる粉やイースト、酵母、焼成方法など、作り方によって味の違いは千差万別になるのは当たり前ではあるんですが、そのお店のパンは、そのお店の店主さんの人柄がよく現れていると思うのです。

ふんわり甘くて優しい食パン、ハードで力強い生地だけど、素朴で温かみのあるパン、きめが細かくてぎっしりつまった完璧なロールパン。

作った人によって本当に違う。
そしてその違いが本当に愛しくて、感動するのです。
あぁ、このパンをつくるのにどれだけの労力がかかっているのだろうか。
それだけの労力をかけてでも世に送りだしたいという愛がこのパンには詰まっているのだ。

パン。

気軽に買える食品です。
毎日食卓に並ぶような食べ物です。

でも、その裏側にはものすごい労力と愛が詰まっている、結晶のような食べ物なんです。

毎朝、淹れたてのコーヒーと、日替わりでいろんなお店のパンを食べることがマツザワの最近の幸せです。

パン屋さんありがとう。

今日も一口一口を噛みしめて、大事にいただきます。

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